
新幹線の道は振動が少ないから、うたた寝に向いている。
ふと目覚めて窓の覆いを上げると、富士山が目に飛び込んできた。
今日も快晴である。
このことろ京都から東京への道筋は曇り空が多く、本当に久しぶりの富嶽であった。
いつも不思議だと思う。
琵琶湖にしろ、富士山にしろ、見えるだけで嬉しくなる。
見えるだけで、その場所の価値が10倍にはなるようだ。
そのことを私たちは、日常的に認識しているのだろうか。
偉大な自然は、人々の心を豊かにし、相対的に自然の価値を高める。
太古の昔から存在したのだから、無料といえば無料だが、自然の価値は得難いものである。
それだけに、大切にしたいものだ。
戦前、満州の開拓者には、屯墾病(とんこんびょう)というヒステリー性の病気があったらしい。
環境的な要因の影響のもとで移民した日本人の多くが精神病になっていった。
人々の暮らしと対峙する自然が持つ意味を、もう少しきちんと考えるべきなのだろう。
そして、誰かがそのことを伝えていくべきだと思う。