現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

井上ひさし「逢初一号館の奇跡」モッキンポット師の後始末所収

2019-10-20 09:54:07 | 作品論
 モッキンポット師シリーズの第4作です。
 ここでも、主人公たち貧乏学生が、調子にのり過ぎて失敗し、モッキンポット師が後始末をするパターンは変わりません。
 しかし、前作からは、主人公の小松(作者の分身で上智大学文学部生)と、学生寮の寮長だった土田(東大医学部)と服寮長だった日野(教育大(筑波大)理学部)にだけになってきて、当時の学生というエリート層(特に土田と日野は超エリートでしょう)の社会への甘えのようなものが鼻についてきました。
 この作品が書かれた1971年は、すでに大学の大衆化が進んで、大学生が特別視される時代は終了していましたが、読者の方ではそうした雰囲気を理解できるころでした。
 しかし、今では、そういった大学生の存在は全く理解できない時代なので、彼らが起こしたトラブルのいくつかは、犯罪と見なされても仕方がないかもしれません。
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