現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

勝手にふるえてろ

2022-11-03 08:41:55 | 映画

 2017年公開の日本映画です。

 綿矢りさの同名の小説(その記事を参照してください)を、松岡茉優を主演にして描いた作品です。

 原作もかなり突飛なストーリーでしたが、映画では原作にない登場人物や場面が創造されていて、かなりシュールな仕上がりになっています。

 憧れの男性(イチ)をあきらめて、一方的に好意を寄せてくれる男性(ニ)の求愛を受け入れるという設定は原作と一緒ですが、主人公の女性(ヨシカ)がかなり露悪的にデフォルメされているので、それでも求愛する霧島(ニの本名)に「そんな情緒不安定な女はやめとけ」と何度も言いたくなってしまいます。

 ヨシカと同じアパートに住むオカリナをふく謎の女性を、片桐はいりが相変わらず存在感たっぷりに演じています。

 

 

 

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綿矢りさ「勝手にふるえてろ」

2022-11-03 08:25:26 | 参考文献

 経理課に務めているヨシカには、中学二年の時から片想いしているイチと、一方的に思いを寄せてくれる同じ会社のニという男がいます。
 ヨシカはイチに接近するためにミクシィを使って、別の女性の名前をかたって同窓会を開きます。
 ねらいどおりにイチと知り合うことができましたが、なかなか好きになってもらえません。
 イチとの関係がうまくいかなくニと付き合うのも嫌になったヨシカは、処女なのに妊娠したと偽って会社も休みニとも別れようと思います。
 しかし、最後にはイチをあきらめてニの愛を受け入れることにします。
 その象徴として、それまで仮名だったニの本名が霧島だということが最後に明かされます。
 女性会社員の現在と中学時代の思い出が交互に描かれていて、一種のヤングアダルトの作品で若い女性が主な読者なのでしょう。
 初恋の男性をあきらめて、現実に手の届く男性を選んで、平凡な幸福をつかもうとする結末は女性読者には納得できるのかもしれませんが、純文学の作品としては常套的すぎて物足りません。
 キャラクターのユニークさや優れた描写力は相変わらず一定のレベルをキープしていますが、文学性という点では一歩後退といった感じです。
 また、主人公は自分の容姿に自信が持てないという設定なのですが、清楚な美人の作者の写真が巻末にこれ見よがしに載せられているので、なんだかしらじらしく思えてしまいます。
 それにしても、この作品では、学校生活も、会社生活も、恋愛のためだけにあるような書き方で、全くリアリティが感じられません。
 作者もいい加減に頭の中だけでお話を作るのではなく、実体験や取材に基づいた作品作りをしないと、時代の実相からずれていってしまうのではないでしょうか。
 作者がエンターテインメント作家を目指すのならそれでもいいですが、純文学の書き手を志すのならそろそろ創作方法を変えないといけないのではないでしょうか。

勝手にふるえてろ
クリエーター情報なし
文藝春秋
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