登山家の山野井泰志、妙子夫妻を、彼らのギャチュンカン登頂(結果的には北壁ルートによるものですが、初めは北東壁をねらっていました)を目指すアタックと、その後日談を中心に描いています。
先鋭的なアルパイン・スタイル(少人数で、ベースキャンプから一気に頂上を目指す登山の手法)の登山家である二人の苦闘(結果的には、泰志だけは登頂できたものの、悪天候に阻まれて過酷なビバーグ(緊急的な野営)を幾晩も余儀なくされて、二人とも激しい凍傷にかかり、手足の多くの指を失いました)を、ニュージャーナリズムの手法により、あたかもそこにいるかのような迫真性をもって描き出しています。
作者の二人に対する尊敬や愛情が十二分に現れていて、ある意味凄惨な内容なのに、非常に読み味のいいドキュメンタリーに仕上がっています。