2023年公開の日本・ドイツ合作の映画です。
役所広司演じる、東京の公衆トイレの掃除人の日常を描いた作品です。
小津安二郎を尊敬するヴィム・ヴェンダース監督らしく、淡々と日常を描く中に、人生の哀歓を浮かび上がらせます。
主人公はスカイツリーの近くの古い木造アパートで暮らし、テレビ、冷蔵庫、洗濯機といった電気製品はありません。
起床、朝のルーチン、車の中でのカセットテープによる古い洋楽、渋谷区の公衆トイレでの丁寧な仕事、神社の境内でのサンドウィッチの昼食、白黒のフィルムカメラでの撮影、仕事終わりの銭湯、浅草の地下街の大衆酒場での一杯、古本屋で買った文庫本による読書、就寝などが毎日繰り返されます。
休日は、部屋の掃除やコインランドリーでの洗濯や居酒屋(どうもここの女将が好きなようです)ですごします。
こうした主人公に、調子のいい後輩の男、後輩が通い詰めているガールズ・バーの女、踊るホームレスの老人、家出してきた姪、その母親(主人公の妹)、居酒屋の女将、女将の元夫(癌に侵されている)などの個性的な人物たちが関わってきます。
これらを、柄本時生、田中泯(当然ですが、踊りがうますぎるのが難です)、石川さゆり(当然ですが、歌がうますぎるのが難です)、三浦友和などの芸達者たちが演じています。
とはいっても、この映画は、役所広司による一人芝居といった趣で、セリフは極端に少ないのですが、表情や身振りで雄弁に主人公の人生を語っていて、カンヌ映画祭主演男優賞を受賞したのも当然といった感じです。