現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

浜田広介「花びらのたび」浜田広介童話集所収

2020-05-15 09:17:33 | 作品論
 浜田広介は、小川未明、坪田譲治と並んで、近代童話において「三種の神器」とまで言われて、高い評価を受けていました。
 しかし、狭義の現代児童文学(定義は他の記事を参照してください)がスタートした1950年代に激しく批判されて、児童文学の表舞台からは姿を消しました。
 現代児童文学が終焉した(一般には2010年と言われていますが、私は1990年代だと思っています)現在では、近代童話は復権していますし、多くの現代児童文学作品が歴史に淘汰された中で、広介の「むく鳥のゆめ」や「泣いた赤おに」などは、今でも広く読まれています。
 この「花びらのたび」という掌編は、次々に起こる出来事に素直に従う花びらの姿に、運命に流される人生を象徴させた作品ですが、現代児童文学出発時に重要な役割りをはたした「子どもと文学」(その記事を参照してください)の中で松井直(後の福音館書店の会長)に、「描写をもちこむことで物語の流れや組み立てを混乱させ、象徴的な気分や人生観をだそうとして、子どもばなれした作品にしてしまいました。」と、こっぴどく批判されています。
 松井の主張は、児童文学に「おもしろく、はっきりわかりやすく」といった外国(主に英米)児童文学の規準を持ち込んだ「子どもと文学」グループとしては、しごく当然のことだったのでしょうが、一方でこの作品の持つ優れた抒情性や東洋的な人生観までも切り捨ててしまっています。
 叙事的な文学に傾斜しすぎた現在の児童文学は、こうした抒情性あるいは文学性(詩性と言ってもいいかもしれません)を大きく失うことになりました。

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