現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

宮内悠介「人間の王」盤上の夜所収

2022-07-19 14:38:01 | 参考文献

 チェッカーの無敵のチャンピオンだったマリオン・ティンズリーに関する作品です。
 チェッカーは10の30乗ほどしか局面がなく、囲碁の10の360乗や将棋の10の220乗はもちろん、チェスの10の120乗と比べても格段にシンプルで、1992年にはコンピューターは人間よりも強くなっていますし(チェスでコンピューターが人間より強くなったのは1997年、最近話題になっていますが将棋や囲碁もコンピューターの強さが人間を上回っています)、コンピューターによる完全解(最善手を続けると必ず引き分けになる)も2007年にだされています。
 マイナーなすでにゲームとしての命も失われてしまったチェッカーについて、ほぼノンフィクションの手法(最後にSF的なフィクションの味付けがされています)で書かれた名人伝なので、私のようなゲームマニア以外は退屈な作品でしょう。
 また、宮内のノンフィクションライターとしての姿勢も物足りません(ほとんどが既存の文献からの孫引きで、実地の調査がほとんどされていません)。
 とってつけたようなSF的な味付けもいかにもありがちで、読者を驚かせてくれません。
 児童文学でも、事実(例えば教育実践など)をもとに書かれた作品はたくさんあるのですが、ほとんどがフィクション化が中途半端になってしまって成功例(例えば、古田足日の「おしいれのぼうけん」など)は少ないと思われます。

盤上の夜 (創元日本SF叢書)
クリエーター情報なし
東京創元社

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