昭和53年に直木賞を受賞した短編です。
フリーライターとその妻の、不思議な結婚及び離婚の様子を描いています。
自由気ままな暮らしをしている主人公と、それに輪をかけてフリーな妻は、六年間の結婚生活を解消して離婚しますが、その後もつかず離れずの関係で、半同棲のような暮らしをしています。
結婚制度というある意味自由を縛り合う関係で暮らしている一般人(現代では生涯未婚の人も多いですが)から見ると、自由で無責任でうらやましいと思う面もあります。
特に、主人公の妻は、傷ついた小動物のようなところとフラッパーな面を兼ね備えていて、なかなか魅力的に描けています。
作者は、ペンネームの阿佐田哲也(「朝だ、徹夜」のシャレ)でたくさんの麻雀小説(代表作は「麻雀放浪記」)を書き、ギャンブラーとしても非常に有名で、当時は若い世代に人気がありました。
この作品に、どこまで作者の実体験が生かされているかは分かりませんが、フリーランスの生活の魅力と危険性がよく表れています。
作者は、ギャンブル小説のような好奇な風俗ものだけではなく、この作品のような一般的な小説の書き手としても一級です。
離婚 (文春文庫) | |
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