カオス状態
スタティックでない系(人間が介在することでホメオスタティックとなる系)の内部で、互いに抑制しあう複数の構成要素のうち一つがその機能を失い、人間がどのような操作をしてももはや制御不能の状態となることである。コンパウンドの劣化、母材の疲労や亀裂などのほか、運動エネルギーがある閾値(システムのキャパシティ)を超えた時も該当する(例:自動車のスピン、航空機のエアポケット、スノーボードのクラッシュなど)。
風切り
その釣り竿がどれだけ風に影響されないかを示す言葉。
蹴り返し
魚の急激な突っ込みの際、竿に予想外の反発力が発生し、釣り人側の緩衝能力を上回ってしまうこと。この時高切れが発生することが多い。
竿鳴り
カーボンロッドが限界近くまで曲った際に、「キュー」という甲高い音がロッド内部から発生すること。特定のカーボンロッドで特定の条件下でのみ発生するが、魚を掛けた時だけでなく、強風によっても発生する場合がある。原因は不明であるが、ラインの振動をロッドが増幅している可能性や、ロッドに累積された過剰なエネルギーが音波として放散されている可能性が考えられる。鮎竿や渓流竿で発生しやすく、へら竿では発生しにくい。ちなみに「糸鳴り」と一緒にされることが多い。
先抜け
穂先の揺れが先端に抜けていくように見えるような揺れ方をする竿、ないし状態。先抜けの良くない竿は、竿先がウチワで煽ぐような振る舞いをする。
底付き
竿がそれ以上曲らない限界まで曲りきってしまうこと。折れるよりはベターであるが、この時ハリス切れとなることが多い。
高切れ
仕掛けの末端(ハリスなど)ではなく手元側が切れること。
垂れ
ロッドがそれ自体の重量(=自重)によって湾曲し、釣り人から見ると“垂れて”見えること。釣り竿の垂れはハゼ釣りのような繊細な釣りではアタリを不明瞭にする一因であるが、ヘラブナ釣りのような鋭い合わせが要求される釣りでは竿の破損リスクを小さくする上で有効に働くようである。
手の内に入れる
ある種の乗り物、楽器、スポーツギアなどにおいて、使い手がアイテムと一体化し、一種のホメオスタシスが成立すること。個々のアイテムの特性・癖を完全に掌握することが必要であり、そこに至るまでには、それなりの代償を支払わされることが多い。
びびり(望まない振動発生)
ある形状記憶性質を持つ粘弾性構造体に対して、一定の持続的エネルギー投入がもたらされると、運動・エネルギー放出→原点復帰→運動・エネルギー放出の自発的周期運動が起こる現象。投入されるエネルギーと放出されるエネルギーの収支がとれている間は自発的周期運動が繰り返され長期持続する(=一種の発振現象)が、投入されるエネルギー量が放出されるエネルギーを上回りエネルギーの累積が起きると、構造体は自己崩壊を起こすか、あるいは「暴れる」(カオス状態)状態となる。電気回路とは異なり、構造体固有の振動数を計算することは困難であるが、投入されるエネルギーに関わらず粘性、弾性、質量などの関数となる。今後樹脂の改質が進めば※1、将来的にびびりを抑え込むのは不可能ではないと予想される。
構造体の運動はエントロピー増加率が最大(または最小)となる経路が選択的に起こる(エントロピー生成率最大/最小原理)ため、一定の条件が揃えば特定の振動数に落ち着くことになる。反対にカオス的振る舞いを見せる場合は自己崩壊ないし内部崩壊、構造材劣化などを引き起こすことがある(特に粘性が足りない場合)。
このような発振現象は通常「望ましくない」ことが多い(例:旋盤のびびり、自動車のハイドロプレーニング現象など)が、反面、この粘弾性構造体の性質を巧みに利用して設計を行うと、特定の音を出す製品を得ることができる(例:音叉など)。また反対に圧電素子を利用した発電セルなども研究されている。個人的には、風の強い日のPEラインのばたつきもこの「びびり」なのではないかと感じている。
へたり
繊維が疲労することで反発力が低下すること。ガラス繊維の方がグラファイトよりも早くヘタるようである。
持ち重り
竿が重いと感じること。スペック上の重量とは異なる。通常は、
- ティップ〜ベリーの質量が大きく、竿を保持するのにより大きな労力を要する
- ベリー〜バットの弾性が低く、竿を操作するのにより多くの労力を要する
このような場合に疲労感、集中力の途切れをもたらす。なお、テンカラのように打ち返しの頻度の高い釣り方では、上記の要素に加え、キャスティングの際のエネルギー効率も併せて考慮する必要がある。ティップ〜ベリーの質量が大きい竿では、尻栓にウェイトを入れることで一定の効果がある。
焼き付き
熱によって潤滑油が相転移を起こし潤滑性を失うこと。摺動部品やギアにダメージを与える。車のエンジンのみならずリールも油量と温度に気を配ることが大切である。
※1 [構造部材編]「ナノアロイ®」の項参照。