渓流釣りというと細糸じゃないと釣れないという人もいますけど、実際には0.3号位の糸でも充分に釣れます。0.3号のハリスで釣るためには、それなりの要領を覚える必要があります。ところが、ここら辺のノウハウを説明した解説本って、ほとんどないんですよね。
ビギナー向けの解説本だけは毎年たくさん発刊されるのに、そこから先の指導書がないわけです。渓流釣り人の技術がいつまで経っても向上しないものだから、本当は植林に費用を回して村おこしをしたい漁協としても成魚放流をせざるを得ないという現状です。釣りというのはやればやるほど新しい発見があり、ますます面白くなっていく種類の娯楽なだけに残念な限りです。
0.3号で釣る秘訣は、いかに水面近くで勝負するか、です。糸が0.3号もあると水の抵抗がかなりあります。ですから沈めれば沈めるほど太糸のデメリットが顕在化してしまい、見破られてしまう、ということになります。
水面近くで勝負するにはまず第一に、エサを工夫することです。イクラやミミズだと魚はいずれ底まで沈んでくるだろうと判断して、やや下の方で待っています。反対に軽いエサだと魚は常に水面を注視するようになり、やがては水面近くまで出てきます。渓流の魚は一度エサが流れてくると、また同じ種類のエサが流れてくるだろうと判断するのか、それに見合ったスタンスを取る(=定位)という習性があります。それでミミズやイクラを使えば使うほど魚が渕尻の方に集まってしまうわけです。
水面近くの表層で釣るのには、やはりオモリが大きくてはうまくいきません。表層の「入り波」に馴染んでくれないことはもとより、魚が注視している水面を「異物」で叩いてしまっては、せっかくの地合いをダメにしてしまうからです。「入り波」に馴染んでくれるガン玉は7号か8号位です。
オモリが軽くなると、当然のことながら振り込み方も変わってきます。ガン玉の2号や4号なら送り込みもできますが、それ以下になると送り込みでは仕掛けが届かなかったり、ピンポイントに入らなかったりします。
それでテンカラに似た振り込み方になるわけですが、ただ単純にテンカラ風に振っただけでは、手首や肩の負担が大きく、キャスト精度がどんどん下がっていくということになりかねません。
そこでヒントになるのが本流釣りのスタイルです。
本流竿は長いですから、ただ単に自分を中心に竿を振り回すと、竿の空気抵抗のためにせっかく竿に加えた力が分散してしまい、仕掛けを飛ばすだけの充分な初速が得られません。
昔の竿はみんな重く太かったですから、竿の空気抵抗に関わらず仕掛けを飛ばせる技術が編み出されてきました。郡上式の振り込み(=郡上振り)というのがそれです。
こうした伝統的な振り込み方ですと、一見腕力を使って振り込んでいるように見えても実際にはそれほど力を入れていないので、長時間キャストが可能です。どうやってそんなことができるのかというと、躯幹(腰)の力を利用しているわけです。
その理屈は、躯幹力を使って瞬間的に竿のバット部分を曲げ、それをティップに向かって解き放っていくわけです。ですからどちらかというと腕の力は「投げる」方ではなく「ブレーキをかける」方に使っています。自分から見て外側へ向かって行く竿の支点の曲がりを、常に同一平面上に来るように、そして初めゆっくり後からだんだん速くなるようにコントロールするわけです。ということは腕にスタビライザーの役割をさせるわけです。最初からブレーキをかけているわけですから、仕掛けがポイントの真上に来た時にピタリと止めるのは簡単にできます。結果的にキャスト精度に関しても他の投げ方に勝るということになります。
バットだけ曲がった状態というのをどうやって作ればいいのかというと、竿には「重さ」がありますから、慣性力でその位置にとどまろうとするモーメントを持っています。ですから瞬間的に元竿を「揺する」ように瞬間的に力を加えてやれば、バットだけが曲がった状態(見て分かるほどではないのですが)になります。あとは竿が元に戻ろうとする力をちょっとずつちょっとずつ引き出してやり、最終的に穂先で仕掛けを引っ張らせるわけです。穂先がソリッドで重ければ重いほどいいというのはこのためです。
「揺する」やり方は、まず腰を投げるのと反対方向にひねり、戻ろうとする時の爆発力を使います。ひねるときは鎖骨を動かさないようにし、戻ってくる時に瞬間的に鎖骨のロックを弛めるわけです。このとき竿尻がなるべく臍下ぐらいに来るように構えます。あんまり上の方で構えますと肩を壊します。腰をひねって爆発力を蓄える時、足と肩は動かず、腰だけが中心軸に沿って回転させるので何だか異様な感じがしそうですが、実際の回転量はほんの僅かですのでそれほど奇異な感じはしません。
竿の曲がりは同一平面上にキープするわけですが、この平面を胴体の回転軸と直交させた方がいいのは当然です。その方が竿の胴震いが少なくなります。必然的に竿は水平に近くなります。そうすると結果的に重いオモリでは振り込みづらいという現象が起きてきます。オモリだけでなく、糸もある程度太くて伸びが少なく、また空気抵抗がいくらかあったほうが振り込みやすくなります。
意外と竿の要素が重要で、試しにやや胴調子の渓流竿「シマノ刀翠ZE硬調」で試したところ、復元スピードが速すぎてこの投げ方にマッチしないということが分かりました。手の力で飛ばすのにはすごくいい竿なのですが、腰の回転力で飛ばすのにはもっと胴調子で、なおかつ反発力が抑えられている竿の方が向いています。また、元上が細い竿の方がバットを曲げやすく、またグリップも細ければ細いほど、コントロールしやすくなります。これは、竿の方向を手の感触ではっきりと知ることができるからです。
ロッドメーカーというのは本来的にビギナーでも扱える竿を作りますから、こういう玄人好みの竿というのはなかなか出てきません。ただしヘラ竿に関しては別です。
やはりヘラ竿の「朱紋峰 凌」は胴の曲がり、抜けの素直さ、適度な重みなど総合的によくできています。
主として渓流で釣りをする人でも、本流釣りの振り込み方をマスターしたほうが、釣果も伸びるし釣りに出掛ける楽しさも倍増すると思います。
ビギナー向けの解説本だけは毎年たくさん発刊されるのに、そこから先の指導書がないわけです。渓流釣り人の技術がいつまで経っても向上しないものだから、本当は植林に費用を回して村おこしをしたい漁協としても成魚放流をせざるを得ないという現状です。釣りというのはやればやるほど新しい発見があり、ますます面白くなっていく種類の娯楽なだけに残念な限りです。
0.3号で釣る秘訣は、いかに水面近くで勝負するか、です。糸が0.3号もあると水の抵抗がかなりあります。ですから沈めれば沈めるほど太糸のデメリットが顕在化してしまい、見破られてしまう、ということになります。
水面近くで勝負するにはまず第一に、エサを工夫することです。イクラやミミズだと魚はいずれ底まで沈んでくるだろうと判断して、やや下の方で待っています。反対に軽いエサだと魚は常に水面を注視するようになり、やがては水面近くまで出てきます。渓流の魚は一度エサが流れてくると、また同じ種類のエサが流れてくるだろうと判断するのか、それに見合ったスタンスを取る(=定位)という習性があります。それでミミズやイクラを使えば使うほど魚が渕尻の方に集まってしまうわけです。
水面近くの表層で釣るのには、やはりオモリが大きくてはうまくいきません。表層の「入り波」に馴染んでくれないことはもとより、魚が注視している水面を「異物」で叩いてしまっては、せっかくの地合いをダメにしてしまうからです。「入り波」に馴染んでくれるガン玉は7号か8号位です。
オモリを軽くする
オモリが軽くなると、当然のことながら振り込み方も変わってきます。ガン玉の2号や4号なら送り込みもできますが、それ以下になると送り込みでは仕掛けが届かなかったり、ピンポイントに入らなかったりします。
それでテンカラに似た振り込み方になるわけですが、ただ単純にテンカラ風に振っただけでは、手首や肩の負担が大きく、キャスト精度がどんどん下がっていくということになりかねません。
そこでヒントになるのが本流釣りのスタイルです。
本流竿は長いですから、ただ単に自分を中心に竿を振り回すと、竿の空気抵抗のためにせっかく竿に加えた力が分散してしまい、仕掛けを飛ばすだけの充分な初速が得られません。
昔の竿はみんな重く太かったですから、竿の空気抵抗に関わらず仕掛けを飛ばせる技術が編み出されてきました。郡上式の振り込み(=郡上振り)というのがそれです。
こうした伝統的な振り込み方ですと、一見腕力を使って振り込んでいるように見えても実際にはそれほど力を入れていないので、長時間キャストが可能です。どうやってそんなことができるのかというと、躯幹(腰)の力を利用しているわけです。
躯幹力を使う
その理屈は、躯幹力を使って瞬間的に竿のバット部分を曲げ、それをティップに向かって解き放っていくわけです。ですからどちらかというと腕の力は「投げる」方ではなく「ブレーキをかける」方に使っています。自分から見て外側へ向かって行く竿の支点の曲がりを、常に同一平面上に来るように、そして初めゆっくり後からだんだん速くなるようにコントロールするわけです。ということは腕にスタビライザーの役割をさせるわけです。最初からブレーキをかけているわけですから、仕掛けがポイントの真上に来た時にピタリと止めるのは簡単にできます。結果的にキャスト精度に関しても他の投げ方に勝るということになります。
バットだけ曲がった状態というのをどうやって作ればいいのかというと、竿には「重さ」がありますから、慣性力でその位置にとどまろうとするモーメントを持っています。ですから瞬間的に元竿を「揺する」ように瞬間的に力を加えてやれば、バットだけが曲がった状態(見て分かるほどではないのですが)になります。あとは竿が元に戻ろうとする力をちょっとずつちょっとずつ引き出してやり、最終的に穂先で仕掛けを引っ張らせるわけです。穂先がソリッドで重ければ重いほどいいというのはこのためです。
「揺する」やり方は、まず腰を投げるのと反対方向にひねり、戻ろうとする時の爆発力を使います。ひねるときは鎖骨を動かさないようにし、戻ってくる時に瞬間的に鎖骨のロックを弛めるわけです。このとき竿尻がなるべく臍下ぐらいに来るように構えます。あんまり上の方で構えますと肩を壊します。腰をひねって爆発力を蓄える時、足と肩は動かず、腰だけが中心軸に沿って回転させるので何だか異様な感じがしそうですが、実際の回転量はほんの僅かですのでそれほど奇異な感じはしません。
竿の曲がりは同一平面上にキープするわけですが、この平面を胴体の回転軸と直交させた方がいいのは当然です。その方が竿の胴震いが少なくなります。必然的に竿は水平に近くなります。そうすると結果的に重いオモリでは振り込みづらいという現象が起きてきます。オモリだけでなく、糸もある程度太くて伸びが少なく、また空気抵抗がいくらかあったほうが振り込みやすくなります。
竿の適性
意外と竿の要素が重要で、試しにやや胴調子の渓流竿「シマノ刀翠ZE硬調」で試したところ、復元スピードが速すぎてこの投げ方にマッチしないということが分かりました。手の力で飛ばすのにはすごくいい竿なのですが、腰の回転力で飛ばすのにはもっと胴調子で、なおかつ反発力が抑えられている竿の方が向いています。また、元上が細い竿の方がバットを曲げやすく、またグリップも細ければ細いほど、コントロールしやすくなります。これは、竿の方向を手の感触ではっきりと知ることができるからです。
ロッドメーカーというのは本来的にビギナーでも扱える竿を作りますから、こういう玄人好みの竿というのはなかなか出てきません。ただしヘラ竿に関しては別です。
やはりヘラ竿の「朱紋峰 凌」は胴の曲がり、抜けの素直さ、適度な重みなど総合的によくできています。
主として渓流で釣りをする人でも、本流釣りの振り込み方をマスターしたほうが、釣果も伸びるし釣りに出掛ける楽しさも倍増すると思います。