「ちいさい庭」 石垣りん
老婆は 長い道をくぐりぬけて
そこへたどりついた。
まっすぐ光に向かって
生きてきたのだろうか。
それともくらやみに追われて
少しでも明るいほうへと
かけてきたのだろうか。
子供たち---
苦労のつるに
苦労の実がなっただけ。
(だけどそんなこと、
人にいえない)
老婆はいまなお貧しい家に背を向けて
朝顔を育てる。
たぶん
間違いなく自分のために
花咲いてくれるのはこれだけ、
青く細い苗。
老婆は少女のように
目を輝かせていう
空色の美しい如露が欲しい、と。
老婆は 長い道をくぐりぬけて
そこへたどりついた。
まっすぐ光に向かって
生きてきたのだろうか。
それともくらやみに追われて
少しでも明るいほうへと
かけてきたのだろうか。
子供たち---
苦労のつるに
苦労の実がなっただけ。
(だけどそんなこと、
人にいえない)
老婆はいまなお貧しい家に背を向けて
朝顔を育てる。
たぶん
間違いなく自分のために
花咲いてくれるのはこれだけ、
青く細い苗。
老婆は少女のように
目を輝かせていう
空色の美しい如露が欲しい、と。