chuo1976

心のたねを言の葉として

「村」   石垣りん

2012-07-04 04:53:30 | 文学
「村」   石垣りん



ほんとうのことをいうのは

いつもはずかしい。



伊豆の海辺に私の母はねむるが。

少女の日

村人の目を盗んで

母の墓を抱いた。



物心ついたとき

母はうごくことなくそこにいたから

母性というものが何であるか

おぼろげに感じとった。



墓地は村の賑わいより

もっとあやしく賑わっていたから

寺の庭の盆踊りに

あやうく背を向けて

ガイコツの踊りを見るところだった。



叔母がきて

すしが出来ている、というから

この世のつきあいに

私はさびしい人数の

さびしい家によばれて行った。



母はどこにもいなかった。
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