小包 信原翠陽
附録のどっさりついた絵本を入れると
中味の貧しい小包は重たくなって
其処から子供達の歓声が聞える様だ
ただ生きていると云うだけの
只、親で有ると云うだけの自分だけれど
断ち切る事の出来ない骨肉の愛情と
打ち消す事の出来ない望郷の想いを
固く結わえた小包に秘めて送る
雪の故郷奥能登よ
別れて生きる親と子が呼び合うには
余りに大きく引離された間隔でも
盲いた事が悲しい闇の連続でも
私にはまだまだ命を支えるものがある
此の世の何処かに生きている親を信じて
成長して行く子供達のために
永らえる事が残された今の希いが
北陸のきびしい風雪に打たれても
やぶれぬ様に出来上った此の小包を
さあ一日も早く送ろうよ━━