What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

「ウトさん、守ってくれてありがとう」  日本のお父さんだよねぇ。

2011年10月14日 20時37分31秒 | 日常
★「俺のマウスは超合金 / ウトさん、守ってくれてありがとう」( http://vstome.blog35.fc2.com/blog-entry-7871.html#blogcomment )より引用

700 可愛い奥様 sage 2011/08/01(月) 01:07:24.06 ID:uL+7PdWU0

落ち着いてきたので書いてみる。

隣家別居のウト(故人)は、いわゆる空気な人だった。
孫には興味を持ってたみたいで子守はたまに引き受けてくれたが、
それ以外は本当に空気で、生前の記憶といったら、年末年始に
ただ黙々と年賀状の山を作り出しては「郵便局」と出かけてくいくか、
私の子にしつこく布団蒸しごっこをしかけては私を切れさせてた事くらい。

でも今回の震災で、その印象ががらっと変わった。
震災の時にあわてて探した防災避難用具一式は、
ウトが頻繁に手を入れて常にベストな状態に保っててくれたもの。
ウトが亡くなるちょっと前に話題になった保温シートとか、
高低差の記された避難専用地図も入ってた。
義実家のタンスや納戸には、不器用ながらウトの手で耐震対策が
施されてたおかげで、トメは昼寝中に寝室のタンスで
押しつぶされることもなく、飛び散って砕けた食器類で
怪我することもなく、無傷で済んだ。
たまたま義実家にいた私と息子も同様。

そして、地震後にすぐ逃げなきゃ逃げなきゃ!と言い出したのは、
実は幼稚園児の息子。
あとで話を聞いたら、ウトの布団蒸しごっこは
津波が襲ってくるごっこ?だったみたい。
息子が夕方とかにうたた寝してると敷物をゆさゆさ揺すって、
津波が来るぞー逃げろーって布団で息子を飲み込む遊びだったらしい。
地震があった後、息子はこれを思い出したらしい。
息子の逃げなきゃ!の声で我に返った私とトメは、
防災用具一式と息子を背負って、高台まで大急ぎで逃げた。

結局家こそ流されはしなかったけど、戻ることはできなくて、
旦那が海外赴任中の私達は本当に不安な数日だった。
そんな私たちに手を差し伸べてくれたのは、生前ウトが年賀状で交流を
続けてた見知らぬ土地のウトの旧友、知人たち。
連絡を取り合って、私たちを県外の仮住まいに落ち着かせてくれて、
旦那にも連絡を取ってくれてた。
海水でだめになったアルバムの代わりにと、年賀状や季節の折々に
ウトが送ってた息子の成長記録ともいえる家族写真入りのハガキも
ごっそり譲ってくれた。

ウトはいい人だった。もっとコミュニケーションをとればよかった。
息子のことで悪態なんかつくんじゃなかった。
海に飲み込まれたしまったんだろうウトの位牌を、取り戻したくてしょうがない。
ウトが出してたハガキの家族写真は、いつもウトがカメラマンで、
どれにもウトが写ってない。
もう一度会いたいと強く思いながら、もうすぐ始めてのお盆だよ。

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 実は、来年の年賀状をどうしようかと悩んでいます。主人は「今年は(仕事が多忙で)無理だ」というのですが、私は年賀状のやりとりしかしていない友人たちが、もし私から年賀状が来なかったら死んだ?と思うかなとか、ぐるぐる考えています。震災の後、電話が使えるようになってから、何人かの友人は電話をくれたんですが、その時に「もしもを考えたら、恐くてこっちからは電話できなかった」と言っていたので、やっぱり年賀状を書いた方がいいかな・・・でも20年以上会っていない人も居るし、メール全盛のいまの時代にもう迷惑じゃないかな?と思う気持ちがあるんです。

年賀状を出す人も随分減ったでしょうけれど、私は一年に一回、友人たちからの「オーロラを観に行った」とか、「出産した」とか、「右利きだったのを左利きにした」とか(40歳過ぎて、突如やってみたくなったそうです)それぞれの便りを愉しみにしていました。友人たちもそうだと好いんだけど、どうかな?とかなんとかぐるぐるしている最中です。

コメント (4)
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トム・フランクリン 『ねじれた文字、ねじれた路』

2011年10月14日 16時16分07秒 | 図書館で借りた本
○ トム・フランクリン 『ねじれた文字、ねじれた路』 (ハヤカワ・ミステリ)

 すごく静か。冒頭で、主人公の一人が突然侵入者に銃で撃たれて意識不明になるような展開で幕を開けるというのに、物語全体がひどく静かで、読んでいるとだんだ手が冷たくなっていく感じ。それぐらい、人が生きていくのに必ず抱えるであろう「孤独の重さ」が、ずっしり物語りを覆っていて、すごく静か。

この二日間、繰り返し読んでいるので、主人公が飼っているニワトリや土の臭いまで感じられそう(苦笑)以前に「物語は終わるから好き」という趣旨のことを書いたけれど、このお話は体験記とかエッセイを読んでいるようで(や、そんなに頻繁に殺人事件に巻き込まれることは無いでしょうけれども)お話が終わった後も、二人の主人公たちが歳を重ねていくのを感じられます。

人間が一人生きているだけで、そこには幾重にも出来事や人とのしがらみが重なって、絡み合って、ねじれて、本人にはまるで予想もつかない有様になっている、それが再確認できるお話でした。



★「翻訳ミステリー大賞シンジケート / 書評七福神の九月度ベスト発表!」( http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/searchdiary?word=%A4%CD%A4%B8%A4%EC%A4%BF%CA%B8%BB%FA%A1%A2%A4%CD%A4%B8%A4%EC%A4%BF%CF%A9&.submit=%B8%A1%BA%F7&type=detail )より引用

・吉野 仁
 今月の、というよりも間違いなく今年のベストに入る作品。少年時代を回想する過去の場面、中年のいまを描く現在のシーン、そのどちらも胸に迫るエピソードで埋め尽くされている。南部に生きる人びととその風土がこれ以上ないほど濃密に描かれた傑作だ。

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<追記>

 やっほう!『ねじれた文字、ねじれた路』が、CWAのゴールド・ダガー賞を受賞ですって

★「ハヤカワ・オンライン / 新着ニュース」( http://www.hayakawa-online.co.jp/news/detail_news.php?news_id=00000479 )より引用

 2011年の英国推理作家協会(CWA)賞が発表となり、ゴールド・ダガー賞(最優秀長篇賞)にトム・フランクリン『ねじれた文字、ねじれた路』(ポケット・ミステリ)が選ばれました。

また、イアン・フレミング・スティール・ダガー賞(最優秀冒険小説/スリラー賞)に、12月に早川書房より刊行予定のスティーヴ・ハミルトン The Lock Artist が選ばれました。同書は既にアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞を受賞しています。

フィルム・ダガー賞(最優秀ミステリ映画賞)はコーエン兄弟監督映画「トゥルー・グリット」が受賞しました。同作はチャールズ・ポーティスによる原作がハヤカワ文庫NVより発売中です。

いずれも読み応え充分の傑作ぞろいです。あわせてお楽しみください。

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