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毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

上橋 菜穂子 『 ー守り人作品集ー 炎路を行く者』

2012年02月09日 08時26分41秒 | 図書館で借りた本
 とっくに読み終わっていたんですが、ちょっと体がしんどくて、アップ遅れました。なんと図書館に入ったその日に借りて読むことができました!あぁ、これで運を使ったのか~と、後から思いましたよ(苦笑)

○ 上橋 菜穂子 『 ー守り人作品集ー 炎路を行く者』 (偕成社)

「炎路の旅人」と「十五の我には」の二つの短編が収められています。「炎路~」はタルシュの鷹アラユタン・ヒュウゴの少年から青年期の激動の日々を、「十五~」はバルサがチャグムの身を案じつつ、自分がチャグムと同じ十五歳だった頃の、育ての父・ジグロとの切ない思い出に胸を痛めるお話しです。

・「炎路の旅人」

 ヒュウゴがチャグムに賭けた一番の理由は、少年の頃の自分が味わった悲しみや苦しみや憎しみが、重なる部分が多かったからなんでしょう。

それにしても、冒頭に老鷹からきた手紙に添えられていた一文ですが、なんというキラーパスなんだ老鷹!と、一度読み終えて、また読み返す時に思いました(笑)

姿形をあれこれ枚数重ねて描写されるよりも、こういう一文を書き添えてくる人だから、さぞや男ぶりのある懐の深い人なんだろうなぁと、キャラの脳内造形(妄想とも言う)が深まります。

助けてくれたおじさんが、病に伏せてからのヒュウゴへの言葉と、それを聞いて黙ってしまったヒュウゴの想い。荒れてはいても、おじさんの清貧の心を尊いとヒュウゴがまだ感じられる人であった事が、ヒュウゴのその後の揺ぎ無い姿勢があるんだなと思いました。

その後、読み返すたびにずっと脳内BGMは村下孝蔵さんの『初恋』でした・・あああ、切ないよぅ~。

・「十五の我には」

 作中にジグロが読んでいる詩として紹介されているのが以下の詩なんですが、四十過ぎたいま、過去の幼くてどあほうの自分に、言えるものなら言いいたい事が山ほどあって、身に染みるというか痛い想いがしました。

こうやって歯噛みしたくなるような後悔や思いを、がっつり抱いて歳を取っていくからこそ、子供たちに何かしてやりたと切に思うんでしょうね。


>ロルアの詩集より

 十五の我には 見えざりし、弓のゆがみと 矢のゆがみ、二十の我の この目には、なんなく見える ふしぎさよ 

歯噛みし、迷い、うちふるえ、暗い夜道を歩きおる、あの日の我に会えたなら、五年の月日のふしぎさを 十五の我に 語りたや

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あ~、どちらも読めて良かったぁ!と思うお話でした。願わくば、上橋先生にはこれからも、こういった「守り人作品集」を書いて頂きたいです。

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2 コメント

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めちゃ共感! (上橋菜穂子さんのファン)
2018-05-19 22:20:41
私も守り人シリーズが大好きで、本当に共感しました!
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上橋菜緒子さんのファン様へ (すず)
2018-05-20 20:49:43
 コメントをありがとうございました。

古い記事にコメントを頂いてびっくりしましたが、今も上橋さんの作品が大好きな気持ちは、すこしも変わらないので、共感して頂いて嬉しく思いました。ありがとうございました。
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