「繰り返しますがこの世に劣った人間などいないし異常の基準などと云うものもない。犯罪者を異常者と決めつけて理解の範疇から外してしまうような社会学者こそ糾弾されるべきです。法を犯せば罰せられるが、法は社会を支える外的な規範であって、個人の内部に立ち入って尊厳を奪い去り、糾弾するものであってはならない!だから―――あなたは殺人と云う許し難い大罪を犯した。それは糾され罰せられるべき行為だが、人間として劣っているなどと云う考えだけは捨てるべきです。あなたは虫でも犬でもない!」
(京極夏彦『絡新婦の理』)
「劣っている」人間など、この世にはいない。
たとえどんな重罪を犯した犯罪者であろうとも。
異常殺人と呼ばれるものに対してでさえ、こんな台詞を京極堂に言わせることができる人だから、私はこの作家が好きなのです。
法律的な立場から「加害者の人権」を主張できる人はいても、そこから離れてこの類の殺人犯に関してこのように言いきることは、被害者の気持ちや世間の目を思うと、簡単なようで難しいことだと思う。
それでも、誰かが言わなければならない言葉だと思うから。