風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

きけ わだつみのこえ (2)

2006-08-07 20:07:10 | 
(福中五郎 1945年2月10日ブーゲンビル島にて戦死 28歳)

昭和十六年二月一日
軍隊、それは予想していた何層倍もテリブルな(恐ろしい)所です。一ケ年の軍隊生活は、遂に全ての人から人間性を奪ってしまっています。ニ年兵はただ、我々初年兵を奴レイのごとくに、否機械のごとくに扱い、苦しめ、いじめるより他何の仕事もないのです。……
いいと思っていた戦友も、いよいよ本性を現わしてきました。兵営内には一人として人間らしい者はいません。自分も人間から遠ざかったような気がします。…先週の日曜、やはり便所の中で母へ手紙を書いた時は涙がとまりませんでした。母には元気で張り切っているとは書きましたが、僕の気持ちは死人同様の悲惨なものです。こんな手紙を書いたのを二年兵にでも見つかればおそらく殺されるでしょう。
(『きけ わだつみのこえ
』より)
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