風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演 Bプロ @東京文化会館(3月10日)

2013-03-10 23:30:25 | バレエ




ライトは、“未来”であり、“光”でもある。

(ジル・ロマン)


今日は春の嵐でしたね。
強風で電車が遅延していたため、公演も15分繰り下げての開演となりました。

さて。
例によって既に観られた方々の反応が賛否両論だったため、期待と不安が入り混じりながら臨んだ『ライト』全幕。

良かった!
この作品、私は大好きです。
とてもとても優しい作品。

特にエリザベット・ロス&ジュリアン・ファヴローの二人が、素晴らしかった。
二人とも決して派手ではないのに、内面の感情が静かに伝わってくる。
ジュリアンは『ライト』について「その役柄になりきることが必要とされている」と言っていたけれど、その点この二人は完璧ではなかろうか。
冒頭で、卵を腕に抱いて少し疲れたように揺り椅子に座る女(エリザベット)に、貧しき者(ジュリアン)が跪き、自分の服でその足を拭ってやり、足の甲に口づけるあたりの二人の表情と仕草が、最高で・・・。
そこからどうしても目を離すことができず、舞台の真ん中で派手に踊ってるオスカー達に全然目がいきませんでした笑。
今回はR側の席で正解。

ジュリアンはこの貧しき者(聖フランチェスコ)の役がぴったり。
暗闇の中で純粋に「光」を追い求めていて、初めてライトに会ったときの“特別な存在”に出会った驚きのような戸惑いのような表現、素晴らしかったです。
そして何よりラストのジュリアン。
なに、なんなの、なんて表情するのよーーーーー
なんて綺麗に踊るのよーーーーーー
クる。。泣く。。
よかったねぇ、光に出会えて、救われたんだね。。
七色の虹に囲まれてくるくるまわる踊り、綺麗だったなぁ。
ボレロにしても、本当に油断禁物だわ。
何気なく観てると、突然ぶわっとくる。

ところで、ジュリアンがごろごろと舞台を転がる振付のときに、茶色の長いボロ服が脚の付け根まで捲れあがって、なんてエロいのかしら・・・と思ったら、これまでの演目では白や黒のタイツだったから、生脚を拝んだのはこれが初めてなのでした。脚キレー。

ヴィヴァルディ役のオスカー・シャコンは今回もイタズラっ子のような笑みを浮かべていて、伯爵(ガブリエル・アレナス・ルイーズ)と一緒の場面はアマデウスのモーツァルトに見えました笑

七色の虹の大貫さん、すっごく楽しそうな笑顔。この人の踊り、目立つなー。いいカラダしてるなー。

少々残念だったのは、ライト役のカテリーナ・シャルキナが私には“光”に見えなかったこと。
インタビューによればカテリーナは「ライトは人間の女性というよりも妖精のような存在であるべき」と言っていて、私もそう思うのですが、彼女のライトは何だかアンドロイドのように見えてしまい、たしかに人間ぽくはないけれど、“光”にも見えないというか。。。
また彼女は、貧しき者への愛情が殆ど伝わってこず。。。
ジュリアン→カテリーナは“光”に縋り、“光”に惹かれている様子がよく出ていたけれど、カテリーナ→ジュリアンは最後までそういう雰囲気が希薄で、ヴィヴァルディとはあんなにラブラブに見えたのに。。

ついでなのでもう一つ不満を言ってしまうと、ライトが産まれる場面の演出が、どうも・・。
女性達や盥といった小道具や、陣痛や赤ん坊の鳴き声をもろに連想させる効果音、そして見たままその意味がわかるストレートな振付は、んー・・・。
生まれ出た直後のライトのたどたどしい歩き方も、こういう直球な振付で状況説明するのはいかがなものか。
「踊り」という制限された手段の中で無限の世界を表現するのが、バレエの良さなのではないだろうか。
(ちなみに同じ理由で、バレエのマイムという手法も私はあまり好きではありません)

でも気になったのはそれくらい。
全体としてとっても好きな作品だし、感動しました。
こんなことなら、もう一日チケットをとるんだったー。
でも今日は千秋楽。

カーテンコール。
3~5階は結構空席があったので、拍手が少なかったら可哀想だな・・・といらぬ心配をしてしまったのですが、皆さんエライ!あの人数であれだけの大きな拍手とブラヴォー、素晴らしい。
ダンサー全員での「おー!」の雄叫びカーテンコールも迫力でした(これ好きなので、もう一度見られて嬉しかった♪)。
で、何度目かのカーテンコールの後、一旦幕が降りて照明がつき、鳴り止まぬ拍手に再びカーテンが上がると、電球で「"SAYONARA" See you again」の文字と、上から降る真っ白な紙吹雪。
客席は拍手喝采。
それから再度幕が上がったときは、紙吹雪の中のダンサー達も一緒に拍手をして、みんなとってもいい笑顔
暖かく幸せな気持ちをいっぱいもらうことができた一日でした。

明日は、3月11日。
あの東日本大震災からちょうど2年目です。
BBLがそれを意識したかどうかはわかりませんが、この時期に“希望の光”と“誕生”を描いた『ライト』を演目に選び、踊ってくれた彼らに心から感謝したいと思います。
そして前回の来日公演を観に行かれて、次回もきっと観に行こうと思いながらそれが叶わなかった方達も、きっといらっしゃっただろうと思います。
今日こうして上野に行き、観たい舞台を観られることがいかに有難いことか、そのことを忘れてはならないと改めて思いました。
チケットの売れ行きがあまり芳しくなかった今回の公演でしたが、ぜひぜひまた日本に来てくださいね、BBLの皆さん!
素敵な舞台をありがとうございました!

カーテンコールが終わり客も帰り始めた頃、幕の向こう側から大きな拍手と喝采が聞こえてきました。

怒涛のBBL週間も終わり、これでしばらくバレエとはお別れ。
次回は7月の英国ロイヤルバレエ団の日本公演で、コジョカル&コボーの白鳥の湖です。
祭りの後の寂しさとでも言いますか、今はとても楽しかった余韻と寂しい気持ちでいっぱいですが・・・。
でも気分を切り替えて、来週から6月までは歌舞伎祭です♪
歌舞伎座の杮葺落という数十年に一度の歴史的イベントを、存分に楽しみたいと思います。
そういえばベジャールは、歌舞伎をテーマにした作品も作っていましたね。
過去も未来も、バレエも歌舞伎も、ヨーロッパも日本も、みんながどこかで繋がっているんだなぁ。

★Aプロ(3月4日)の感想はこちら
★Aプロ(3月5日)の感想はこちら

※『ライト』についてカテリーナ&オスカーのインタビュー

♪モーリス・ベジャール・バレエ団「ライト」PV
なんて美しい旋律。。
今回の日本公演の曲目はすべてプログラムに載っていたので、それを頼りにヴィヴァルディのCDを探そうと思います。

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