面白き事も無き世を面白く
格差、格差の野球界
熱き戦い仕立て上げ
闇の世界の仕立人
今宵も広島を駆ける...
4月...ついにプロ野球も開幕した。 私は広島へやって来た”エリカ様”を広島城での花見に案内する...はずだが、今年は何故か”桜前線”が先に関東の方に行ってしまった様で、広島ではまだ桜が満開になっていなかった。
「あれ? 桜...まだ5部咲きくらいだね。 東京はもう満開になっているのに。」
「そうなんですよ、今年は何故か関東から先に満開になっちゃいましたね。」
「広島城へは前にも来たけど、ここが広島の花見の名所なの?」
「いいえ、広島で花見の名所となっているのは平和公園とか比治山公園とか公園系が多いですね。」
「え...じゃあ何でここに連れて来たわけ?」
「ここは桜の木が多いけど史跡になっている上に狭いので風雅な気分をぶっ壊す大人数での宴会の騒ぎ、バーベキューの匂い、目障りなブルーシートの色が少ない”穴場”なんですよ。」
「あ、なるほどね。 別にあんたと酒を飲んで騒ぎたかったんじゃないし。」
私は”エリカ様”と桜を見ながらあまり詳しくないらしい野球について話をした。 広島城に近い市民球場の照明塔が点いたのが見えた。
「あ、今日もカープの試合やっているんだ。」
「ええ...もう少しで”紅白戦”が始まるところですよ。」
「”紅白戦”?...ああ、”どこかの球団”ってところとね。」
「カープみたいに資金力の無い、いや”親会社に頼らない独立した球団”はどうしても他球団の資金力に負けて主力選手の引き抜きに会いやすい、しかもそんな戦力の不均等をマスコミは是正する様に世間に訴えるどころか偏向報道で一緒になって格差を拡大してますよ。 あいつらみんなグルです。 許せません!」
「気持ちは分かるけど... でも世の中のみんながそれぞれ努力して一生懸命生きている以上、何らかの格差は常にあるものだからね。」
「あんたの好きな”ムフフ系”とやらをやっている子たちも何とかして芸能界でチャンスを掴もうと必死になってやっているんだよ。 その中で努力と運でチャンスを掴んだ子だけが次のチャンスをもらえて表舞台で活躍出来て、それ以外の子は名前が世の中に一度も出る事も無く辞めて行って忘れられる... どこの世界にも格差はあるんだからね、だからこそみんなが努力して元気のある世の中になるの。」
「あんたは自分で自分を”策士”と言っていたよね。 だったらどんなに悔しくても、腹が立っても冷静さだけは忘れない様にしなきゃ。 熱くなっても怒りに自分を忘れたりせず、いつもクールになりましょ!」
”エリカ様”を見送った広島駅で私は一人の町娘と出会った。 彼女もカープファンで今回の”紅白戦”に行ったのだとか。 今回の試合ではカープから”どこかの球団”にFA移籍した新井選手に対して外野席のカープファンから凄まじいブーイングが浴びせられたらしい。 昔から球場での野次はあったけど、このブーイングをすると言う文化は大リーグから入って来たものだろうか? 私も正直言って違和感がある。 新井選手はアメリカのFA選手の様に代理人が法外な給料を要求して球団が呑めずにチームを飛び出したのでは無いのだから。 でもカープファンとしてはいい選手を育てては一人前になった直後に引き抜かれ...の繰り返しでやるせない、怒りの持って行きどころが無い辛さもあるのだ。 私は彼女に貴女も一緒にブーイングやったのとさりげなく聞いてみた。
「まさか、私はそんな事やっていません! それよりもむしろカープファンから新井選手へのブーイングが酷くて怖かったです。」
「あんな殺伐とした異様な雰囲気で投げさせられて(先発の)高橋投手がかわいそうです。 あんなブーイングをやられたらよけいに”新井に打たれてはいけない”と意識してしまいますよ。 それでフォアボール出して挙句に金本選手にスリーラン。 カープファンが、カープのピッチャー達をを追い詰めてどうするんですか!」
「あんな事をしていては逆にカープが勝てなくなりますよ! 異常な雰囲気の中でも紳士的だったタイガースファンを少しは見習って欲しいです。」
「あんな雰囲気の中で新井選手はよく頑張りました。 私が元々新井選手ファンだったとは言えやっぱり格好良かったです。 今はもうカープの敵になっちゃったけど、これからも頑張って欲しいですよ。 もちろんカープとの試合ではあまり打って欲しく無いけど...」
どうも私は思い違いをしていた様だ。 広島カープ出身の新井選手と広島のカープファン、広島人同士で傷付け合ってどうするのだろうか。 銭で揉めて飛び出した訳でも無い新井選手の苦しみの向こうで”本当の悪”は笑っていると思います。 主力選手を育てては引き抜かれて悔しい、怒りのやり場が無いと言うのなら新井選手へのブーイングより、”不買運動”の方が意味があるのでは? 甲子園球場に行く事があるとしてもナントカ電鉄には乗らずにJRとタクシーを乗り継いで行くとか、球場では何も買わず、遠い外の店で買って持ち込むとか、広島では”どこかの球団”を一面に置いている新聞は一切買わないとか... 新井選手の苦悩と涙の向こうにいる”巨悪”を眠らせてはいけないと思います。
「お前達、仕立だよ! ...ってあんたしかいないけどね。 じゃあいつもの場所に来てちょうだい。」
”エリカ様”から指令が入った。 私は早速広島市内の『横川胡子神社』に向かった。 相変わらずこの神社は人が少なくて静かだ。 いつも通り”エリカ様”はチケットとお金を取り出して神社の縁石に置いた。
「これが頼み料です。」
「今回の頼み人はプロ野球界の格差に心を痛め、本当に熱い野球を願う名も無きカープファン。」
「やる相手は横浜ベイスターズ、監督の大矢、四番打者の村田、外野手の金城、吉村、内野手の石井、仁志。」
「じゃあ、頼むよ。」
「はいっ! ”エリカ様”。」
「ところで何で戦う相手が横浜なの? プロ野球界の格差が問題なら”どこかの球団”と戦うんじゃあないの?」
「...まあ、その辺の事は言いっこ無しと言う事で”エリカ様”。」
私は『横川胡子神社』を出て市民球場に向かう。 プロ野球界に熱い戦いを取り戻す為、私はライバル・横浜と戦います。 それからもう新井選手へのブーイングは止めた方が良いと思います。 あんな殺伐とした雰囲気で野球をやっても選手もファンもみんなが楽しくありません。 もうあんな事は止めて新井選手や金本選手とは普通に正々堂々、真正面から戦いましょう。 野球ファンとしてもう選手の苦しむところは見たく無いはずです。 関西の悪党達とは私が戦いますから。 あいつらは一つ、大きなミスをした。
「プロの俺にケンカを売りやがった。」
...異常です。
格差、格差の野球界
熱き戦い仕立て上げ
闇の世界の仕立人
今宵も広島を駆ける...
4月...ついにプロ野球も開幕した。 私は広島へやって来た”エリカ様”を広島城での花見に案内する...はずだが、今年は何故か”桜前線”が先に関東の方に行ってしまった様で、広島ではまだ桜が満開になっていなかった。
「あれ? 桜...まだ5部咲きくらいだね。 東京はもう満開になっているのに。」
「そうなんですよ、今年は何故か関東から先に満開になっちゃいましたね。」
「広島城へは前にも来たけど、ここが広島の花見の名所なの?」
「いいえ、広島で花見の名所となっているのは平和公園とか比治山公園とか公園系が多いですね。」
「え...じゃあ何でここに連れて来たわけ?」
「ここは桜の木が多いけど史跡になっている上に狭いので風雅な気分をぶっ壊す大人数での宴会の騒ぎ、バーベキューの匂い、目障りなブルーシートの色が少ない”穴場”なんですよ。」
「あ、なるほどね。 別にあんたと酒を飲んで騒ぎたかったんじゃないし。」
私は”エリカ様”と桜を見ながらあまり詳しくないらしい野球について話をした。 広島城に近い市民球場の照明塔が点いたのが見えた。
「あ、今日もカープの試合やっているんだ。」
「ええ...もう少しで”紅白戦”が始まるところですよ。」
「”紅白戦”?...ああ、”どこかの球団”ってところとね。」
「カープみたいに資金力の無い、いや”親会社に頼らない独立した球団”はどうしても他球団の資金力に負けて主力選手の引き抜きに会いやすい、しかもそんな戦力の不均等をマスコミは是正する様に世間に訴えるどころか偏向報道で一緒になって格差を拡大してますよ。 あいつらみんなグルです。 許せません!」
「気持ちは分かるけど... でも世の中のみんながそれぞれ努力して一生懸命生きている以上、何らかの格差は常にあるものだからね。」
「あんたの好きな”ムフフ系”とやらをやっている子たちも何とかして芸能界でチャンスを掴もうと必死になってやっているんだよ。 その中で努力と運でチャンスを掴んだ子だけが次のチャンスをもらえて表舞台で活躍出来て、それ以外の子は名前が世の中に一度も出る事も無く辞めて行って忘れられる... どこの世界にも格差はあるんだからね、だからこそみんなが努力して元気のある世の中になるの。」
「あんたは自分で自分を”策士”と言っていたよね。 だったらどんなに悔しくても、腹が立っても冷静さだけは忘れない様にしなきゃ。 熱くなっても怒りに自分を忘れたりせず、いつもクールになりましょ!」
”エリカ様”を見送った広島駅で私は一人の町娘と出会った。 彼女もカープファンで今回の”紅白戦”に行ったのだとか。 今回の試合ではカープから”どこかの球団”にFA移籍した新井選手に対して外野席のカープファンから凄まじいブーイングが浴びせられたらしい。 昔から球場での野次はあったけど、このブーイングをすると言う文化は大リーグから入って来たものだろうか? 私も正直言って違和感がある。 新井選手はアメリカのFA選手の様に代理人が法外な給料を要求して球団が呑めずにチームを飛び出したのでは無いのだから。 でもカープファンとしてはいい選手を育てては一人前になった直後に引き抜かれ...の繰り返しでやるせない、怒りの持って行きどころが無い辛さもあるのだ。 私は彼女に貴女も一緒にブーイングやったのとさりげなく聞いてみた。
「まさか、私はそんな事やっていません! それよりもむしろカープファンから新井選手へのブーイングが酷くて怖かったです。」
「あんな殺伐とした異様な雰囲気で投げさせられて(先発の)高橋投手がかわいそうです。 あんなブーイングをやられたらよけいに”新井に打たれてはいけない”と意識してしまいますよ。 それでフォアボール出して挙句に金本選手にスリーラン。 カープファンが、カープのピッチャー達をを追い詰めてどうするんですか!」
「あんな事をしていては逆にカープが勝てなくなりますよ! 異常な雰囲気の中でも紳士的だったタイガースファンを少しは見習って欲しいです。」
「あんな雰囲気の中で新井選手はよく頑張りました。 私が元々新井選手ファンだったとは言えやっぱり格好良かったです。 今はもうカープの敵になっちゃったけど、これからも頑張って欲しいですよ。 もちろんカープとの試合ではあまり打って欲しく無いけど...」
どうも私は思い違いをしていた様だ。 広島カープ出身の新井選手と広島のカープファン、広島人同士で傷付け合ってどうするのだろうか。 銭で揉めて飛び出した訳でも無い新井選手の苦しみの向こうで”本当の悪”は笑っていると思います。 主力選手を育てては引き抜かれて悔しい、怒りのやり場が無いと言うのなら新井選手へのブーイングより、”不買運動”の方が意味があるのでは? 甲子園球場に行く事があるとしてもナントカ電鉄には乗らずにJRとタクシーを乗り継いで行くとか、球場では何も買わず、遠い外の店で買って持ち込むとか、広島では”どこかの球団”を一面に置いている新聞は一切買わないとか... 新井選手の苦悩と涙の向こうにいる”巨悪”を眠らせてはいけないと思います。
「お前達、仕立だよ! ...ってあんたしかいないけどね。 じゃあいつもの場所に来てちょうだい。」
”エリカ様”から指令が入った。 私は早速広島市内の『横川胡子神社』に向かった。 相変わらずこの神社は人が少なくて静かだ。 いつも通り”エリカ様”はチケットとお金を取り出して神社の縁石に置いた。
「これが頼み料です。」
「今回の頼み人はプロ野球界の格差に心を痛め、本当に熱い野球を願う名も無きカープファン。」
「やる相手は横浜ベイスターズ、監督の大矢、四番打者の村田、外野手の金城、吉村、内野手の石井、仁志。」
「じゃあ、頼むよ。」
「はいっ! ”エリカ様”。」
「ところで何で戦う相手が横浜なの? プロ野球界の格差が問題なら”どこかの球団”と戦うんじゃあないの?」
「...まあ、その辺の事は言いっこ無しと言う事で”エリカ様”。」
私は『横川胡子神社』を出て市民球場に向かう。 プロ野球界に熱い戦いを取り戻す為、私はライバル・横浜と戦います。 それからもう新井選手へのブーイングは止めた方が良いと思います。 あんな殺伐とした雰囲気で野球をやっても選手もファンもみんなが楽しくありません。 もうあんな事は止めて新井選手や金本選手とは普通に正々堂々、真正面から戦いましょう。 野球ファンとしてもう選手の苦しむところは見たく無いはずです。 関西の悪党達とは私が戦いますから。 あいつらは一つ、大きなミスをした。
「プロの俺にケンカを売りやがった。」
...異常です。