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三島由紀夫はじめ、多くの作家に影響を与えた作品。
過去に岩波文庫の実吉捷郎訳を読んだのですが、こちらの平野卿子訳の方が私にとっては遥かに読みやすい翻訳でした。実吉訳を読んだときはハンスとインゲには再会したものだと思ってて、何やら胸につかえるような不自然さを感じていたのですが、平野訳を読んでクリアになりました^^;
内容紹介。「トーニオ・クリーゲル」と「マーリオと魔術師」の2編を収録。
マーリオと魔術師はなにやら不気味な小説と思いつつ読み終わってしまいましたが、解説で、これは反ファシズムの小説ということを読み、ポン!と手を叩きました^^; それまでぜんぜんわからんかった。
トーニオ・クリーゲルについては、十代の頃に読んでおくべき小説でした。もしかしたら、その後の人生への考え方に、少なからず影響を与えていたかも、という気もします。
最近思うのは、若い頃にもっともっと本を読んどけば良かった、という後悔ばかり。
三島が、「(僕は)マンによって初めて、正当な二元論にぶつかったのだと思う」と書いているそうです。本書は、生と芸術の二元論が展開され、この部分は特に作家に影響を与えるであろうことが想像できます。
三島といえば、認識と行動の二元論が印象的ですが、そのルーツとなったのがこの一冊と思うと感慨深いです。
三島とマンの関係については、いろいろな人が書いていますが、平野啓一郎の「日本一の愛読者」という論文がネット上で読めます。こちらも合わせて読むと興味深いところです。
→ 日本一の愛読者 - トーマス・マンと三島由紀夫
トーニオ・クリーゲルもマーリオと魔術師も、時代を感じさせない小説です。特に、マーリオと魔術師は、政治的無関心のなかで全体主義的行動が散見される現代社会への警鐘として読めると思います。
作者プロファイル。
翻訳者プロファイル。
書誌事項。
オリジナルは、トーニオ・クレーガーが1903年、マーリオと魔術師が1930年の発刊。
p.s. 王座戦挑決は歴史に残る一局。藤井聡太は実力のみならず天運を持っている。
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