■ おやつほしさの毎朝の悪行
3日前の朝、ルイのことでぼくと女房が口論となった。
食事をしていると、キッチンのほうから、異音が聞こえる。ルイが入りこんであらしている音である。食べもののにおいがついた包装紙などをあさっているのだ。これらを持ち出し、交換に女房からオヤツをせしめようという魂胆なのである。
同じことを毎朝繰り返している。この朝はぼくが切れた。「毎朝、毎朝、ドアを閉めておかないママがわるい!」と。これで女房も逆ギレした。「そういうあなただって……」と。ここから口論が勃発した。当事者のルイは涼しい顔でぼくたちを見ていた。
このあと、ぼくが別の部屋で出勤のために服を着替えていると、リビングでまたルイが何かわるさをしたらしく、女房が激しく怒る声が聞こえてきた。ぼくとの口論のあとだから、怒り方はいつもより激しい。こんなことでいい子になるようなルイではないというのに。
■ なんとも露骨なゴマすり
寝室のタンスの前でネクタイを選んでいると女房が入ってきてベッドを整えはじめた。すると、ルイが追ってきて、ベッドの上に飛び乗った。ベッドカバーを整えている女房の雷が落ちる……はずだった。
だが、いつものルイではなかった。カバーをくわえて引っ張りっこに持ちこむ気配は見せず、女房に前足をかけて腕や顔を舐めはじめたのである。
まさにゴマすりだ。
「おまえって、イヤなやつだなぁ」とぼくがいいおわらないうちに、すっかり機嫌がなおった女房は、笑顔で15キロのルイを抱きかかえ、そそくさとリビングへといってしまった。
これでまたルイがクッキーをいくつかせしめたであろことは、わざわざたしかめるまでもなくわかりすぎるくらいわかっている。
なんてヤツだ!