ルイのためにまだがんばらないと

　明後日の6日（水）の東京は、この冬二度目の大雪になるとの予報が出ている。しかも、前回（1月14日）の2～3倍くらいの積雪量になるかもしれないと……。ぼくの住む町田あたりではたしか10センチくらい積もったはずだ。ということは、20～30センチを覚悟したほうがいいわけだ。

　雪が大好きなルイには朗報だけど、ぼくは気が重い。成人の日で休日だった14日はともかく、降った翌日の15日の出勤で往生したからだ。11月に痛めてようやく回復しはじめていた左足の膝をこの日、再び悪化させた。その後、いろいろ苦労して、いまやようやく九分どおり回復にこぎつけているのでここでまた水泡に帰したくない。

　11月に発症した膝の痛みも12月はなんとかごまかして過ぎた。年が明けてからもさっぱり好転しないし、むしろ痛みが増してまともに歩けなくなっていたので病院を変えて診てもらった。診断は似たような結果だった。1月末まで様子を見てその結果でMRIを撮るかどうか判断しようということだったが、雪でさらに悪化させたのでこちらからお願いして予定を1週間前倒しして23日にMRIにかけてもらった。

　1週間後、医師から、「大腿部骨壊死」というおどろおどろしい病名を告げられた。骨の一部が「壊死（えし）」しているというのである。でも、ぼくは信じなかったし、いまもまったく信じていない。なぜなら、MRI直後から急速に痛みが引きはじめていたからだ。ちょうど回復期になっていたのだろう。湿布は続けたが、痛み止めの飲み薬はもう飲んでいなかった。

　以前、シェラが足を痛めたことがある。まだ彼女が7歳くらいのころだった。近所のペットクリニックでは埒が明かず、別のクリニックで「腱が切れている」と告げられた。もう二度とまともには歩けないだろうし、もちろん、ちゃんと走ることは無理だろう。
　ぼくも家人もそんなシェラにどれだけ悲しんだかわからない。走ることが大好きなシェラだった。すべての犬がそうであるように、走る姿が実に美しかった。

　しかし、ぼくたちはすぐに悲しみを振り払い、前向きに考えた。まともに歩けないならそれなりにシェラを助けて歩く算段をしよう。そして、これまでどおり楽しく毎日を過ごしていこう、と。
　その日から毎日、クルマで片道30分はたっぷりかかるペット病院通いがはじまった。幸い、病院は24時間対応だった。平日はぼくが会社から戻ってからシェラを乗せて家人とともに病院へ向かった。どうしてもぼくが早く帰れない日はせがれにやりくりしてもらった。
　
　ひと月もしないうちにシェラは普通に走っていた。また痛めるのではないかとぼくたちはヒヤヒヤしながら止めるのだが、シェラはむぎを相手に複雑なステップを刻んで以前のように暴れてみせた。腱が切れたというのはどうだったのだろう？　後日、ぼくはほかの先生に訊いたが、明快な答えはもらえなかった。

　その後もシェラは何度か足を痛めた。たとえば、清里の先でキャンプの最中に痛めて甲斐大泉のペットクリニックまで連れていって注射をしてもらったこともある。もうぼくたちは慌てなかった。最初の診断が誤診なのは明白だが、ま、医者といえども人間だから間違いはある。命にかかわらない程度ならそれもしかたあるまい。

　ぼくの足も、最初は膝の軟骨が磨耗して痛むのだと診断された。レントゲンを撮ってみたら、軟骨はきれいなままだった。きっと軟骨の一部がささくれてそれが引っかかって痛んでいるのだろうというのが最初の診断だった。二度目の先生もレントゲンのレベルでは似たような診たてだったが、膝の歪みが原因かもしれないともいわれた。

　MRIの結果は、軟骨でも歪みでもなく、骨の壊死だという。たしかに骨の一部に影のようなものがある。壊死を進行させないで、痛みをやわらげるためにまわりの筋肉の強化をするようにといわれた。ぼくは逆らわず、ただ、痛み止めの飲み薬と湿布薬の追加は断ってクリニックをあとにした。シェラとおなじだという確信があったからだ。

　土曜日からプールに通いはじめた。とりあえずは水の中を歩くだけだ。2月2日の初回は30分、さまざまなバリエーションで30分たっぷり歩いた。ほとんど痛みもなくなっているので、その日と翌日の昨日の日曜日は陸上の散歩も1時間ばかりやった。いまのところ、痛みはなくなっている。衰えていく筋肉の強化は遅ればせながらおこなわなくてはならない。まだまだこの先10年はルイと歩いてやらなくてはならないからだ。