ルイが生まれたのは茨城県である。
生後2か月で売られ、東京の南にある町のペットショップで商品になっていた。
当時、わが家はそれまで12年間いっしょに暮らしていた、やっぱりコーギーのむぎが突然死んでしまい、家人はペットロスに陥っていた。
ペットロスを和らげるには新しいワンコを迎えるのがいちばんとの理由から、せがれのすすめで家人はインターネットでコーギーのパピーを探しだした。
2日後あたりの土曜日だった。ぼくは家人に急かされ、早朝からそのパピーを見にいくためクルマを走らせた。
店の開店を待って店に入った。そこにかわいいパピーがいた。
ひとめ惚れだった。家人は迷うことなく購入を決めた。
家人は抱いたパピーをはなそうとせず、久しぶりに満面の笑みを見せていた。
縁があったのだと認めざるをえない。
だが、ぼくはまだ死んで3か月ほどしか経っていないむぎへのこだわりを捨てきれずにいた。
だが、反対はしなかった。
あんたが気に入ったなら買えばいい。そういい残してぼくはまだ元気だった16歳のシェラを連れて外へ出た。
入れ違いに店へ入ってきた家族連れの客がいた。
「あ、買われちゃった」
お父さんらしき男性が上げた声が背後で聞こえた。
たぶん、近所に住んでいるこの家族もまた、お父さんがあらかじめ目をつけたパピーを買いにきたのだろう。
いまでも思う。
もし、タッチの差でルイがあの家族の一員になっていたら……と。わが家の子となってルイは幸せだったのだろうか……とも。
どんなことがあっても、わが家の子となってよかったのだとぼくが自信をもっていいきれるようにしたい。
これからも、ぼくはそれだけを願ってルイと暮らしていく。
ルイにぼくはなんの不満もない。生来、ルイが抱えている身体の障害にも責任をもって受け入れる。
この縁をただただ大切にしていきたい。