担当医師から胃瘻を勧められ、拒絶した妻だが、病状が進んできて食べることがかなり大変になってきた。食物を飲み込みにくいと言い、食べられるものも激減し、何を食べさせたら良いかと献立に悩む毎日だ。固いものは食べられなくなってきているし、柔らかくても粘性が強かったりすると喉に引っ掛かるという。元々小食で、好き嫌いが激しい(本人は好き嫌いはないという。)上に、飲み込みにくいかどうかという新たな基準が加わった。これじゃ、本当に食べる物がなくなってしまうのではないかと思う。感覚が敏感過ぎて、普通ならば気づかずに飲み込んでしまうような魚の小骨も、口の中で選り分けて出してくる。そんな小さな骨、ご飯と一緒になっていたら、引っ掛かることもないだろうと思うような骨でも、入っていると、大騒ぎになる。だから、食べさせるときはとても気を遣い、こちらも疲れてしまい、食事が終わると、もうへとへとになっている。
前回の診察の時に、担当医師から「何かあったら、携帯に電話してください。」と、携帯の番号を教えられた。私としては、常々思っていたのは、まずは、訪問看護ステーションに電話して、訪問看護師が担当医に連絡するということにしていた。
先日、長男がやってきて、「母ちゃんが喉を詰まらせたら、どうするつもりだ?」と問うて来た。今まで思っていたように、「まずは、訪問看護ステーションに電話し、対応してもらおうと思う。」と答えた。長男は、「喉を詰まらせ、呼吸ができないのだから、看護師が来る頃には母ちゃんは死んでいるよ!それに、母ちゃんは延命措置を望まないと言っているだろう!看護師だって手の施しようがないじゃないか?」という。私は、「それじゃ、救急車を頼んで、取り敢えず、詰まらせたものを取ってもらうよ!」と答えると、長男は、「救急隊員は、病院に連れていくよ。そうなると、まず、気管切開し、管を挿入することになる。それは分かっているよね!病気で飲み込めなくなっているのだから、飲み込めるようにはならない。点滴等も始めちゃうだろう!母ちゃんは延命措置を望まないと言っているんだよ!・・・・・わかるか?・・・だから、喉を詰まらせて取れなかったら、訪問看護ステーションでも救急車でもなく、担当医に電話することなんだよ!」と言う。まあ、理屈の上では分かるのだが、それはなかなか受け入れられるものではなく、自然と涙が出てきた。長男を見ると、目に涙がにじんでいた。
これは遠い将来の話ではない。今日、喉を詰まらせるかも知れないし、明日かも知れない。かなり切羽詰まった状態になってきているという切実な問題なのだ。まあ、できるだけのことはしなければならないと思い、ネットで、「喉を詰まらせたときの応急措置」を検索して読んでみた。まあ、内容的には理解できたが、実際、その場になってできるかというと、その自信はない。今度、訪問看護師が来た時に、もっと具体的な対応の仕方を教えてもらおう。