今回は、「伊万里 染付 網目文小壺」の紹介です。
我が家では、妻が、時々、花生けとして使用しており、現役の花生けとして活躍しています。

立面

底面
大きな窯傷があります。
でも、この傷は、内側までには殆ど影響しておらず、内側に1本のニューをもたらしている程度なので、水は漏りません。

壺の内側の底面
底面の大きな窯傷の影響で、ニューがありますが(右上方から左下方への細い線)、水は漏りません。
製作年代: 江戸時代前期
サ イ ズ : 口径;8.6cm 高さ;13.7cm 胴径;12.6cm 高台径;7.8cm
なお、この小壺につきましては、今では既に止めてしまっている拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中でも紹介していますので、次に、それを、参考までに紹介いたします。
<古伊万里への誘い>
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*古伊万里バカ日誌36 古伊万里との対話(網目文の小壺) (平成18年4月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
網 代 (古伊万里様式染付網目文小壷)
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立面 |
底面 |
・・・・・プロローグ・・・・・
主人は、毎回、今度はどれと対話をしようかと迷うようである。時節に合ったものをと思っても、貧庫ゆえに、それに応えてくれるようなものはなしという状況だからである。
今回は、ふと、妻が花生けに使用しているものの中に何かあるのではないかなと思い当ったようである。そこで、妻が、押入れの一角に雑然と収納している各種花生けの中から、これまでに登場していなかった古伊万里を引っ張り出してきて四方山話を始めたようである。
網代: ご主人様、やっと登場させてくれましたね。
主人: いや~、悪い悪い。もうとっくに登場させていたと思ってたんだけどね~。調べてみたらまだだったんだね。
私は、網目文が好きだし、お前を入手した経緯も特殊だったので、お前のことはよく覚えているんだよ。それに、お前は花生けに適してるんではないかと思って妻に預けているんで、妻が押入れの一角に収納している花生け達を物色している所を時々見かけるから、その際にチラチラと垣間見ているしね。
そんなことで、時々見かけているもんだから、もうとっくに登場させたものと錯覚してしまったんだ。
網代: 今、ご主人様は、網目文がお好きだと言われましたが、網目文をお好きにまられるに至った何か理由でもあるんですか?
主人: 特に理由はないね。なんとなく好きなんだよね。スッキリしているからかな~。
そうそう、網目文といえば、ニガイというか、懐かしいというか、ひとつ、こんな想い出があるな。
お前を手に入れた店ではないんだが、或るなじみの骨董屋さんで、初期伊万里に近い網目文の盃を見せられたことがあるんだ。店主は、「これは私の晩酌用の物ですから、お売りは出来ませんからね。」との前提で見せられたんだ。店主は、気に入った物を入手したばかりで、それを人にも見せたくて、嬉しくて見せたんだろうね。店主に、是非売ってくれといくらたのんでも、結局は売ってくれなかった。最後に、「私が飽きたら、真っ先に○○さんに譲りますから。」ということになったが、今ではその店も店じまいしてしまい、それを手に入れる方法は絶えてしまったわけだ。今思い出しても、あの盃は欲しいな~。
網代: それと、さっき、私を入手した経緯が特殊だったとのお話しですが、どのような経緯だったんですか。
主人: それほど特殊というわけではないんだがね。ちゃんと骨董屋さんから買ってはいるんだから、、、、、。
ただね、骨董屋さんで商品として売られていたわけではないんだよ。
網代: どういう事情だったんですか。
主人: うん。なじみの骨董屋さんに行って、例のごとく、常連さんも来ていたので、その方も交えて一緒に雑談していたんだ。お店に並べてある商品は代わり映えもせず、いつもの物達が並んでいた。ところが、ふと店の奥の方に目をやると、店主が使用している机の上にお前が筆立て代りになっているのを発見したんだ。それで、私は、「それ、売るの?」と聞いてみた。
そしたら、案の定、「これは、見てのとおり、実用に使っているんで、売り物じゃないよ。」との返答だった。ところが、一緒に雑談していた常連さんが、「筆立てにしておいたんじゃ可哀想なんじゃない。好きな人に売ってやったら!」と助け舟を出してくれた。それで、結局、売ってくれたわけなんだ。
網代: それはよかったですね。「常連さんに感謝!」ですね。
主人: そうだね。その常連さんが応援してくれたお陰だね。
でもね、コレクター心理なんてものは、そんな甘いもんじゃないよ。たまたまその常連さんの収集ジャンルが古伊万里じゃなかったから助かったんだ。もし、その常連さんが古伊万里を収集していたとしたら、恐らく、店主の意見に賛同して、その場ではお前を売らせなかったと思うよ。そして、後でコッソリと買ったんじゃないかな。
網代: そんなものですか。コレクターの世界にも厳しいものがありますね。
ところで、その常連さんの収集ジャンルはどんなものだったんですか?
主人: 李朝ものが好きだったかな。店主は、韓国に仕入れに行って、税関で国外持出しでつかまって1か月程彼の地に勾留されたという経歴の持ち主だった。それだけに李朝ものに強かったんで、それを求めてやってくるお客も多かったわけなんだ。
お前を手に入れたのは、昭和57年だから、もう24年も前の話だ。もう、その店主も亡くなってしまって、その店も今はない。
網代: 随分と古いお話しですね。
主人: 骨董品の話しだけに、話の内容も骨董品になってきてしまったな~。