今回は、いろんな古伊万里の「白磁」を、まとめて紹介いたします。
これらの「白磁」は、平成15年に(今から18年前に)買ったものです。
これを売っていた古美術店の店主の言によりますと、これらは一括して蔵出しされたものだとのことでした。
同じところから一括して出てきたとなれば、資料的にも貴重になりますから、数が多くなってその分値段も高くはなりますが、思い切って、全部まとめて購入することにしたわけです。
一括購入した白磁(全14点)
上段の左側2点:白磁蓋付碗 上段の右側2点:白磁筒形蓋物(右端は蓋欠損)
中段の左側2点:白磁碗 中段の右から2番目の重ねられた2点:白磁輪花深皿
中段の右端の1点:白磁向付
下段の左側2点:白磁蓋茶碗(左端から2番目は蓋欠損)
下段の右から2番目の1点:白磁小蓋茶碗(蓋欠損)
下段の右端の重ねられた2点:白磁輪花豆皿
ところで、この中で、上段の左側の白磁蓋付碗(2点)は、先日(2021年8月17日)紹介しました「鍋島白磁 蓋付碗」とよく似ていることに気付きます。
そうであれば、この白磁蓋付碗(2点)も「鍋島白磁」となり、その他の全部の白磁も「鍋島白磁」となる可能性が高くなりますね、、、。
しかし、どうなんでしょうか、、、?
それでは、さっそく、この白磁蓋付碗(2点)のみを取り出して良く見てみたいと思います。
白磁蓋付碗(2点)
立面
左側の白磁蓋付碗の陽刻紐状線の下側に更に鈍い紐状の線のようなものが
見えますが、それは補修痕です。
立面(代表の1個)
蓋を外し、本体を伏せたところ(代表の1個)
蓋を外し、蓋を裏返したところ(代表の1個)
また、ここで、もう一度、先日(2021年8月17日)の紹介記事の中の「小さな蕾 2000年7月号」の中の小木先生が書かれた文章を再度転載いたします。
鍋島白磁蓋付碗
小 木 一 良
(戸栗美術館常任評議員)
(1)出土陶片と一致する伝世品
写真1イ・ロ・ハの白磁蓋付碗(以下本品と記す)を鍋島作品だと言ったら肯定する人が何人いるだろうか。
しかし、本品は明確に鍋島作品と特定しうるものと言える。理由は全く一致する陶片が鍋島藩窯跡から出土しているからである。
写真2イ・ロ・ハの白磁陶片は伊万里市教育委員会蔵の鍋島藩窯跡出土品である。これを本品と対比すると大きさ、器形、釉調などいずれの面からみても同一とみられる。
私は再三この陶片を観察し、本品と並べてみたりしたが、両者は全く一致するとみざるを得ず、本品は鍋島作品と特定しうるものと結論するに至った。
(2)製作年代
本品の製作年代は大体元禄後期頃と考えられよう。それは「元禄十二年柿銘小鉢」(写真3)との対比からみてである。両者を比べてみると器形が極めて類似ている。この元禄十二年柿銘小鉢も最初はおそらく本品と同様に蓋がついていたものと思われる。このような器形品は当時上手の作品によく用いられていたものであろう。
両者で少し異なる点は元禄柿銘作品は体部に廻らされている陽刻紐状線が二重であるが、鍋島出土陶片と本品は一重であることと、器体下部の曲線が僅かながら異なっている。しかし、おおよその器形、全体的作ぶりからみて、両者の制作時代にそれほどの年代差があるとは考えにくく、本品は大体元禄十二年頃の作品とみて良いのではないかと思われる。
次に本品を柿右衛門白磁と対比してみると、柿右衛門作品より、やや釉調に青味があり両者間の釉調は僅かながら異なっている。
これは柿右衛門白磁との鑑別上の一つにポイントになることかもしれない。しかし、中白川窯出土の上手白磁陶片をみると、こちらはやや青味を帯びており、なかなか区別はしにくい。白磁について肉眼的に釉調のみで制作窯の判断をすることはよほど熟達した人でも無理のように思われる。
製作窯の特定には釉調のほか、器形が出土陶片と全く一致していることが絶対的必要条件とされよう。
興味深いことに、本品と同一器形で小形の伝世品が存在しているので、いろいろの大きさのものが作られたのだろうと思われる。鍋島といえば木杯形皿が典型的な形として頭にうかび、それ以外の器形のものは考えにくいのが一般的であろう。
しかし、鍋島藩窯跡出土陶片類をみると、さまざまの形態、器形品がみられる。特に白磁、青磁で染付文様の無い陶片類の中にはその完器伝世品をみたとき、鍋島とは認定されにくいだろうと思われるものも少なくない。
本稿にあげた白磁蓋付碗もその一つだが、次回は青磁作品のこうした例品をあげてみたい。
出土陶片が明示されなければ鍋島作品とは判断のつけ難いものがいろいろ存在している点を考えると、公的機関の保有陶片と共に個人的所有陶片も含めて木杯形以外の器形陶片類ができるだけ多数公表されてほしいものである。
注 鍋島藩窯出土白磁陶片(写真2イ・ロ・ハ)は伊万里市教育委員会蔵品を撮影、掲載させていただきました。
こうしてみますと、やはり、この白磁蓋付碗(2点)も、上掲の鍋島白磁蓋付碗と非常に良く似ていることが分かります。
上掲の説明文にもありますように、「鍋島」は、
「 興味深いことに、本品と同一器形で小形の伝世品が存在しているので、いろいろの大きさのものが作られたのだろうと思われる。鍋島といえば木杯形皿が典型的な形として頭にうかび、それ以外の器形のものは考えにくいのが一般的であろう。
しかし、鍋島藩窯跡出土陶片類をみると、さまざまの形態、器形品がみられる。特に白磁、青磁で染付文様の無い陶片類の中にはその完器伝世品をみたとき、鍋島とは認定されにくいだろうと思われるものも少なくない。」
ということですね。そうしますと、この白磁蓋付碗(2点)も鍋島白磁の可能性が高いと思われるわけです。
そうであれが、今回紹介します14点の白磁も、全て、鍋島白磁と言えるのではないかと思うわけです。
と言うわけで、今回紹介します14点の白磁の生産地につきましては、問題提起の意味も含め、全て、「生産地:肥前 鍋島藩窯」とさせていただきます。
白磁蓋付碗
生 産 地 : 肥前 鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代中期(元禄後期)
サ イ ズ : 本体部口径;12.7cm 高台径;6.0cm 高さ;5.8cm 高さ(蓋共);8.7cm 蓋口径;13.3cm
以下、順に、その他の白磁についても、個別に紹介いたします。
白磁筒形蓋物(2点)
立面(右側は蓋欠損)
立面(代表の1個)
蓋を外し、本体を伏せたところ(代表の1個)
蓋を外し、蓋を裏返したところ(代表の1個)
白磁筒形蓋物
生 産 地 : 肥前 鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代中期(元禄後期)
サ イ ズ : 本体部口径;9.3cm 高台径;4.8cm 高さ;7.0cm 高さ(蓋共);8.8cm 蓋口径;10.1cm
白磁碗(2点)
立面
立面(代表の1個)
見込面(代表の1個)
底面(代表の1個)
白磁碗
生 産 地 : 肥前 鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代中期(元禄後期)
サ イ ズ : 口径;11.6cm 高さ;7.4cm 高台径;5.4cm
白磁蓋茶碗(2点)
立面(右側は蓋欠損)
立面(代表の1個)
蓋を外し、本体を伏せたところ(代表の1個)
蓋を外し、蓋を裏返したところ(代表の1個)
白磁蓋茶碗
生 産 地 : 肥前 鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代中期(元禄後期)
サ イ ズ : 本体部口径;10.1cm 高台径;4.1cm 高さ;4.8cm 高さ(蓋共);6.4cm 蓋口径;9.5cm
白磁小蓋茶碗(蓋欠損)(1点)
立面
上掲の「白磁蓋茶碗」より一回り小さな蓋茶碗です。蓋は欠損しています。
底面
白磁小蓋茶碗
生 産 地 : 肥前 鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代中期(元禄後期)
サ イ ズ : 本体部口径;9.3cm 高さ;3.4cm 高台径;3.5cm
白磁向付(1点)
立面
見込面
底面
白磁向付
生 産 地 : 肥前 鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代中期(元禄後期)
サ イ ズ : 辺径;9.1cm 高さ;6.7cm 高台径;4.8cm
白磁輪花深皿(2点)
立面
立面(代表の1枚)
表面(代表の1枚)
底面(代表の1枚)
白磁輪花深皿
生 産 地 : 肥前 鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代中期(元禄後期)
サ イ ズ : 口径;14.2cm 高さ;5.1cm 高台径;7.4cm
白磁輪花豆皿(2点)
立面
見込面
底面
白磁輪花豆皿
生 産 地 : 肥前 鍋島藩窯
製作年代: 江戸時代中期(元禄後期)
サ イ ズ : 口径;9.9cm 高さ;2.3cm 高台径;5.6cm