「戦国の鬼 森 武蔵」(鈴木 輝一郎著 平成19年10月30日第1刷発行)を読みました。
「森 武蔵」といっても、知らない人のほうが多いですよね。でも、織田信長とともに本能寺で戦死した「森 蘭丸」のことなら知っているという人は多いのではないかと思います。
実は、この「森 武蔵」という武将は、「森 蘭丸」の実の兄にあたります。
でも、この本によりますと、「江戸期での一般認識としては実弟・森蘭丸よりも、「鬼武蔵」森長可の武名のほうがはるかに高かった」(P.444)とのことです。
それはさておき、この本は、その「鬼武蔵」こと「森 長可(もり ながよし)」の生涯の物語です。
なお、この本の概要は、この本の裏表紙に、次のように書いてありました。
「信長が息子を託した男──森蘭丸の実兄にして織田信忠の重臣・森武蔵長可(ながよし)。
伊勢長嶋を初陣に、信忠を補佐して甲斐・信濃の名門武田家を制圧し、信忠を信長の後継者にのしあげた、絶世の美男子ながら苛烈ないくさぶりの武将。
本能寺の変で無政府状態となった東美濃。混乱に乗じて襲いかかる、かつての部下や同僚たち。つかの間の安息に身をまかせるも、小牧・長久手で散った。
信長──秀吉の転換期に生き、血の涙を流してたたかい、「鬼」と恐れられた悲運の武将の生涯の物語。」
なお、この本は、単に、一人の武将の生涯の物語ではなく、現代に生きる「あなたのための物語」でもあると、「あとがき」に書かれていたことが印象的でした。
そこで、次に、そのことが書かれていた「あとがき」の一部を紹介し、この本の紹介とさせていただきます。
あとがき
本書は「鬼武蔵」こと森武蔵守長可(ながよし)の物語である。織田信長の後継者の地位が約束された、岐阜中将織田信忠の重臣中の重臣であった。
戦国武将には「鬼柴田(柴田勝家)」「鬼半蔵(服部半蔵)」のように、二つ名に「鬼」を持つ猛将は多い。
だが、森長可が「鬼」と呼ばれたのは、苛烈な戦いぶりもさることながら、普通の武将が嫌う、老人や女子供などの非戦闘員殺しや人質狩りを、率先して行ったことによる。
周知の通り、織田信忠は信長の後継者の地位が確定してほどなく、本能寺の変で信長とともに斃れた。これにより、織田の版図の辺境は大混乱に陥った。
鬼武蔵・森長可は信州川中島を与えられていたが、本能寺の変を知るや、ただちに放棄して生誕地の東美濃に帰還した。
けれども東美濃は、羽柴秀吉と柴田勝家による中央の権力争いからは遠い地であった。昨日まで味方としてともに戦った東美濃近在の諸将との、熾烈な私闘が待っていた。
大企業の創業社長の二代目社長の補佐役を約束されていたのに会社が倒産し、いわゆる整理屋や債権者が押しかけ、コンプライアンスもへったくれもなく食いちらかすなか、「人でなし」と呼ばれてでも生き抜く、といえばわかっていただけるだろうか。
本書の主人公、鬼武蔵・森武蔵守長可は、その残酷さゆえに他人事だと思われるかもしれない。
だが、あらためてご自身をかえりみていただきたい。この物語は歴史上の人物を扱っているが、「鬼武蔵」のメンタリティは時代を超えている。
本書は過去の話ではない。
家族と、家臣団(社員、と読みかえてもいい)を誰よりも愛し、まもるために、自分の倫理を捨てた男の物語である。
あなたは、誰かをまもるために鬼になれるか。「なれる」と断言できる人はすくないだろう。けれども、迷う人はすくなくあるまい。そんな、あなたのための物語なのだ。
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