この大皿は、先日(2024年11月20日)の古美術品交換会で落札してきたものです。
先日(2024年11月20日)も記しましたように、この大皿にはそれぞれに大きなニューが1本ずつ走り、そのニューには酷い汚れが入り込み、いかにも疵物という感じで痛々しい姿でしたので、漂白剤の中に何日か漬け、ニューの中に入り込んだ汚れを消してから紹介する予定でいたところです。
幸い、ニューに入り込んだ汚れはほとんど消え去りましたので、予定どおり、紹介する次第です(^_^)
この大皿は、その疵のために、誰も入札に参加しようとしなかったわけですが、私は、「多分、このニューに入り込んだ汚れは、漂白剤に漬けておけば、かなり綺麗に消えるのではないかな~。そうなれば、鑑賞する分にはさほど支障はないのではないかな~」と判断して競り落としたわけです。お陰で、随分と安く手に入れることができました(^-^*)
その大皿というのは、次のようなものです。
染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)(漂白前のもの)
大皿Bの表面 大皿Aの表面
大皿Aには12時の方角に大きなニューがあり、大皿Bには7時の方角に
大きなニューがあります。
大皿Bの裏面 大皿Aの裏面
ニューは、それぞれの大皿の裏面にも達しています(~_~;)
大皿Bの側面 大皿Aの側面
ニューは、それぞれの大皿の側面にも達しています(~_~;)
大皿Aの表面
12時の方角に大きなニューがあり、ニューには汚れが入り込んでいます。
大皿Aの裏面
ニューは、大皿の裏面にも達しています(~_~;)
高台内銘:二重角渦福
大皿Aの側面
ニューは、大皿の側面にも達しています(~_~;)
大皿Bの表面
7時の方角に大きなニューがあり、ニューには汚れが入り込んでいます。
大皿Bの裏面
ニューは、大皿の裏面にも達しています(~_~;)
高台内銘:二重角渦福
大皿Bの側面
ニューは、大皿の側面にも達しています(~_~;)
ところで、この大皿Aと大皿Bの表面には陽刻が施されているのですが、何が陽刻されているのか見てみたいと思います。大皿Aと大皿Bの表面に施された陽刻は同じものと思われますので、大皿Aの表面に施された陽刻を見ていきます。
大皿Aの上半分の拡大写真
大皿Aの下半分の拡大写真
上の2枚の写真から、中国の宮殿のような所の中央に、花のような物を持った高貴な女性の立ち姿が陽刻され、その右脇には、ひざまづいた男の官人のような人物がその女性を見上げているところが陽刻されているようです。何かの物語の一部を陽刻したのでしょうか、、、。
また、表面に書かれた詩句文は、かの有名な中国の唐の詩人孟浩然の五言絶句「春暁」の、
『春眠不覚暁 處々聞啼鳥 夜来風雨声 花落知多少』
ですね。
なお、この皿の類似品が、佐賀県立九州陶磁文化館発行の柴田コレクション総目録の図3469と柴田コレクションⅧの図227に登載されています。
柴田コレクション総目録の図3469での皿の名称は「染付 唐人詩句文 輪花皿」となっており、柴田コレクションⅧの図227での皿の名称は「染付 陽刻詩句文 輪花皿」となってはいますが、柴田コレクション総目録の図3469と柴田コレクションⅧの図227の物とは同じ物ですので、次に、柴田コレクションⅧの図227の「染付 陽刻詩句文 輪花皿」だけを転載して紹介したいと思います。
柴田コレクションⅧの図227の「染付 陽刻詩句文 輪花皿」
製作年代:1760~80年代 口径21.2cm 高さ3.2cm 底径12.7cm
表面
裏面
ところで、この柴田コレクションⅧの図227の「染付 陽刻詩句文 輪花皿」には、何が陽刻されているのでしょうか? 図録の写真からだけでは何が陽刻されているのか明確には分からないのですが、この皿の名称が、柴田コレクション総目録の図3469では「染付 唐人 詩句文 輪花皿」とされ、柴田コレクションⅧの図227では「染付 陽刻 詩句文 輪花皿」とされているところから推測しますと、唐人が陽刻されているように思えます。また、図録の写真をルーペを使って見てみますと、薄らとではありますが、宮殿のような所に人物が陽刻されているようにも見えます。
そのようなところから、この皿には、今回私が手に入れた「染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)」と同じ文様が陽刻されているのではないかと思われます。
つまり、この皿と今回私が手に入れた「染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)」とは、同じ文様が陽刻され、同じ「春暁」の詩句文が書かれているものと思われます。
ただ、この皿の口径が21.2cmの中皿であるのに対し、今回私が手に入れた「染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)」の口径が、大皿A、大皿B共に32.0cmもあり、大皿と言われる大きさに属するという違いがあります。
ちなみに、柴田コレクション総目録から「染付 陽刻 詩句文 皿」を探してみましたら、中皿、小皿、手塩皿は掲載されていましたが、大皿は掲載されていませんでした。柴田コレクションには、たまたま「染付 陽刻 詩句文 皿」の手の大皿は収蔵されたいなかったのでしょうか? それとも、この「染付 陽刻 詩句文 皿」の手の大皿はもともと少ない存在のものなのでしょうか? も ともと少ない存在のものであったとすれば、今回私が手に入れた「染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)」は珍品ということになりそうですね(^-^*)
私は、この「染付 陽刻 詩句文 皿」や「染付 陽刻 皿・鉢」などを数点所蔵し、それらを既に紹介しているところです。
「染付 陽刻 詩句文 皿」としては、2021年7月3日に「染付 虎人物 詩句文 輪花皿」として、「染付 陽刻 皿・鉢」としては、2021年5月25日に「染付 蝶文 輪花大深皿」として、2021年7月12日には「染付 山水文 角鉢」として、はたまた2021年7月31日には「染付 山水文 八寸鉢」として紹介しているところなわけですね。
それで、これらを通して、私は、これまで、この「染付 陽刻 詩句文 皿」や「染付 陽刻 皿・鉢」というものは、概して大きなサイズものであるという印象を抱いておりました。そんなものですから、この今回私が手に入れた「染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)」も、大きさとしては一般的な大きさのものと思い込んでいたのです。つまり、大きさでも、特に珍しく大きなものだとの認識がなかったわけです。
今回、柴田コレクション総目録から「染付 陽刻 詩句文 皿」を探していて、大皿が掲載されていないことに気付き、今回私が手に入れた「染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)」は、大きさから言うと、或いは珍品なのかな~との淡い期待を抱いたところでもあります(^_^)
それはともかく、今回私が手に入れた「染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)」の製作年代等は次のようになります。
生 産 地 : 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期の終り頃~後期の初め頃(1760~1780年代)
サ イ ズ : 大皿A・B共・・・口径32.0cm 高さ4.9~5.6cm 底径19.3cm
そうそう、冒頭に、この「染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)」にはそれぞれに大きなニューが1本ずつ走り、そのニューには汚れが入り込み、いかにも疵物という感じで痛々しい姿だったので、漂白剤の中に何日か漬け、ニューの中に入り込んだ汚れを消してから紹介すると書いたのですが、その後の綺麗になった状態の写真をまだ掲載していなかったですね(~_~;)
次に、漂白後の綺麗になった状態の写真を掲載したいと思います(^_^)
染付 陽刻 詩句文 輪花大皿(一対)(漂白後のもの)
大皿Bの表面 大皿Aの表面
大皿Aには12時の方角に、大皿Bには7時の方角に大きなニューがあり
そのニューには酷い汚れが入り込んでいましたが、ニューに入り込んだ酷い
汚れは殆ど消え、鑑賞に際しては支障がなくなりました(^_^)
大皿Bの裏面 大皿Aの裏面
ニューは、それぞれの大皿の裏面にも達し、そのニューには酷い汚れが
入り込んでいましたが、ニューに入り込んだ酷い汚れは殆ど消え、
鑑賞に際しては支障がなくなりました(^_^)
大皿Bの側面 大皿Aの側面
ニューは、それぞれの大皿の側面にも達し、そのニューには酷い汚れが
入り込んでいましたが、ニューに入り込んだ酷い汚れは殆ど消え、
鑑賞に際しては支障がなくなりました(^_^)
大皿Aの表面
12時の方角に大きなニューがあり、そのニューには酷い汚れが入り込んで
いましたが、ニューに入り込んだ酷い汚れは殆ど消え、鑑賞に際しては
支障がなくなりました(^_^)
大皿Aの裏面
ニューは、大皿の裏面にも達し、そのニューには酷い汚れが入り込んで
いましたが、ニューに入り込んだ酷い汚れは殆ど消え、
鑑賞に際しては支障がなくなりました(^_^)
高台内銘:二重角渦福
大皿Aの側面
ニューは、大皿の側面にも達し、そのニューには酷い汚れが入り込んで
いましたが、ニューに入り込んだ酷い汚れは殆ど消え、
鑑賞に際しては支障がなくなりました(^_^)
大皿Bの表面
7時の方角に大きなニューがあり、そのニューには酷い汚れが入り込んで
いましたが、ニューに入り込んだ酷い汚れは殆ど消え、鑑賞に際しては
支障がなくなりました(^_^)
大皿Bの裏面
ニューは、大皿の裏面にも達し、そのニューには酷い汚れが入り込んで
いましたが、ニューに入り込んだ酷い汚れは殆ど消え、
鑑賞に際しては支障がなくなりました(^_^)
高台内銘:二重角渦福
大皿Bの側面
ニューは、大皿の側面にも達し、そのニューには酷い汚れが入り込んで
いましたが、ニューに入り込んだ酷い汚れは殆ど消え、
鑑賞に際しては支障がなくなりました(^_^)
追 記 (平成6年11月30日)
この大皿を紹介してから、さっそく、故玩館館主の遅生さんから、次のようなコメントが寄せられました。
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この大皿の陽刻文は、白居易(白楽天)の長恨歌の最終部にあたるのではないでしょうか。安禄山の乱により亡くなった楊貴妃を忘れられない玄宗皇帝が、配下の方士に、楊貴妃の魂魄を探し出すよう命じ、方士は仙術を駆使し、太真殿で楊貴妃を見つけました。方士が、楊貴妃と会ったことを証明する証拠がほしいと申し出ると、彼女は、髪に挿していたカンザシを与えようとします。この場面が、件の陽刻文ではないかと思うのです。
ところで、話しには続きがあって、方士はこれでは十分でないと言います。そこで、楊貴妃は方士に、かつて玄宗皇帝と交わした言葉、「比翼連理の誓い」を伝えます。
なお、能『楊貴妃』ではこの場面を扱っています。
ですから、普通に考えれば、この皿に書くべき詩句文は、次の長恨歌の最終フレーズでしょう。
在天願作比翼鳥
在地願為連理枝
天長地久有時尽
此恨綿綿無絶期
それが、なぜ 「春眠不覚暁・・・・・」となったかは、不明です。
単純ミスで間違えた?それとも、適当に書いた?
他の図柄の陽刻皿を調べたくなりますね(^.^)
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このコメントに接し、私は、なるほどと思いました。
この大皿の陽刻文の「中国の宮殿のような所」というのは「太真殿」で、「高貴な女性」は「楊貴妃」だったのですね。また、「花のような物」は「楊貴妃が髪に挿していたカンザシ」で、楊貴妃の右脇の「ひざまづいた男の官人のような人物」は唐の玄宗皇帝から「楊貴妃の魂魄を探し出すように命じられた方士」だったのですね。
ぴったり一致しますものね(^-^*)
ただ、そうしますと、確かに、この大皿に書かれるべき詩句文は、孟浩然の五言絶句「春暁」の、「春眠不覚暁・・・・・」ではなく、白居易(白楽天)の「長恨歌」の最終フレーズの「在天願作比翼鳥・・・・・」であるべきですね。
何故そうしなかったのか、私にも分かりませんが、これからの課題でしょうか。
遅生さん、何時もながら、博学のコメントをありがとうございました(^-^*)