25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

ザ 空気

2017年02月16日 | 文学 思想

 田中哲司、若村麻由実、他三人による演劇「ザ 空気」を観劇した。現代演劇には華やかさがない。

 五人の、役者の笑い場面はひとつもなく、最後の終了御礼でも笑顔がなかった。たぶん、そういう意図であった。

 内容はごく普通に僕ら夫婦が話していることが、「ニュース ライン」というテレビニュース番組を担当する編集者、キャスター、アンカー、ディレクター、映像編集者の会話に置き換わっただけだと思いながら観たのだった。新しい発見何もなかった 

 総務省が(高市大臣を思わせる)、公平ではなく、偏った報道をするテレビ局には免許取り消しもありえるという発表が2、3年前にあった。テレビ局への脅しである。舞台はその発表をうけて、報道の自由、言論の自由を巡って、現場がガタガタと軋む一日のドラマである。

 テレビ局にも、大新聞社にもコマメに文句をつける作戦をとる右派の集団がいる。その集団が日本会議を実質運営ぢている。この集団は元号法制化に勝利し、市町村議員を取り込んで、請願書をおくらせたりと、巧妙な作戦で、左派、リベラルに対抗している。その国規模の団体が日本会議である。安倍首相が最高顧問である。

 多分、この演劇の脚本家はそういうことも知っている。実名はだしていないが、日本会議のことを言っているのがわかる。

 五人はあるニュースをどう伝えるかゴチャゴチャと悩むのである。秘密保護法ができ、集団的自衛権がいつでも発動でき、今は共謀罪を成立させようとしている安倍政権。舞台の最後はテレビ局を辞めた男が一人でジャーナリストとしてやっていく、と局の役員に出世した女から、そんなことができる時代じゃないわよ、と言って立ち去り、何があってか男のところに戻ってきたとき、空を戦闘機が飛んでいく、という場面で終わる。

 日本会議そのものは、憲法改正、天皇男子継続、家族重視 という考え方をとるが、外交にかんしてどのように考えているのかわからない。櫻井良子なども入っているから中国嫌いかもしれない。

 ぼくは思うのだが、トランプ大統領との親交は注意しなければならないと思う。尖閣諸島については中国も領有権を主張しているのだから、ここの地下資源や漁業権は共同開発をし、分けあえばよいと思う。どちらにも言い分がある場合は、政治的に和解の道を模索するべきだと思う。尖閣諸島には手を出すな、アメリカがバックにいるんだぞ、というのは、俺には手をだすな、バックにヤクザがいるんだぞ、と言っているのと同じような気がする。中東で戦争でも起きれば、アメリカがイスラエルのみを支持するようになれば、どうするのだろう。

 おそらくこのような演劇は真夜中でも、BSやCSでも放映されないだろう。しかし、田中哲司と若村麻由美の名前のせいか三重県文化会館の中ホールは満員であった。おそらくすぐにテレビ局に電話したり、市町村議員にコマメに圧力をかけない人たちなのだろうと思った。

 同調圧力の大きい日本。物言わぬ人々。言うべきことを言うとディベートなど学んでこなかった日本列島人。石油がない日本。この東の果ての小さな国は幕末以降、西洋からの近代化によって揺さぶられ続けている。今もトランプ大統領一人に揺さぶられている。