恐らく、このバンドのアルバムとしては最後になるのかもね。
SAVAGE MESSIAHの『DOWN AND OUT IN TOKYO』。
2019年の来日公演の、神田明神ホールでのライヴを収録したもの。
2019年には、5th『DEMONS』をリリースした年で、それに伴うツアーとして来日。
バンドは3rd『THE FATEFUL DARK』で日本デビューし、以降はファンの支持も強固になり、3度来日をしている。
オレは当時、BURRN!のディスクレビューで2nd『PLAGUE OF CONSCIENCE』でバカ高い点数がついていたのと、その時の評価内容が気になったので、是非入手して聴いてみようと思ったのがきっかけ。
ツインギターや音楽フレーズの構築性が、NEVERMORE やARCH ENEMYを彷彿とさせるという点で、あの時は聴いてみたいとは思っていた。
『PLAGUE OF CONSCIENCE』リリース前、NEVERMOREは『THE OBSIDIAN CONSPIRASY』をリリースしていたが、前作の強烈さに比べると何処か加減をしたかの様な印象が強く、悪くはなかったが手緩さを思わせたのが何とも消化不良を覚えた(その後、NEVERMOREはジェフ・ルーミスとヴァン・ウィリアムズが脱退した事で、事実上の解散となった)。
そんな中で、これからという新進気鋭のバンドとしてSAVAGE MESSIAHが、件のアルバムをリリース。
プログレッシヴ/テクニカルなフレーズ構築をみせながらも、基盤となっているのは1980年代のHR/HM、METALLICA、MEGADETHなどの草創期のスラッシュメタルで、その中で中心人物であるデイヴィッド・シルヴァーがちゃんと歌っている点が大きかった。
やや高域で線が細めには感じるが、グロウルなども交える事が特に珍しくもなくなってきてた当代シーンの歌唱、特にギターも兼任しているフロントマンとしては個人的に好感が持てた。
メタルはバンドメンバー全員がフロントマンたる存在感を示せる音楽であるのは納得してもらえるところかと思うが、それでも、ヴォーカルという存在が放つその声質・歌いまわしに特徴があればあるほど、楽曲に於ける魅力というのは深く伝わるものである事も納得してもらえる筈。
ことロック音楽というものに於いては、歌い手と演奏陣の拮抗/ぶつかり合いによって生じるエナジーが、体現する音楽としての最大の美点となっていると、オレは信じている。
当然、『PLAGUE OF CONSCIENCE』は個人的に良い手応えを感じ、次を期待した。
そして、『THE FATEFUL DARK』はその期待感を確信に変えてくれるほどの内容として、日本デビューを飾る事になった。
オレにとっての確信は、スラッシュメタルの影響下を強めた様なリフ/リズムのスピード感と強靭さを伴った、よりキャッチーさを増した楽曲もそうなんだが、最も大事なのは、彼らがブリティッシュメタルバンドであるという事。
前作と変わらず、バンドはその部分を消すどころか、それが存在するのが当たり前と言わんばかりに『THE FATEFUL DARK』で押し出してきた。
ヘヴィメタルは、イギリスから生まれ出てきたもの。
HR/HMファンの中では、この史実に惹きつけられている人達も少なくないと思うし、その史実を定義づけた伝説級のバンドの「ブリティッシュ」という感覚は、特別に感じるのもひとしおだと思う。
現在でも、イギリスに於いてはメタルバンドはちゃんと存在しているが、かつての伝説級のバンドたちと比べると、メタルファンが思うブリティッシュ感はかなり薄いと思えるし、実際オレもそんな一人であった。
今のイギリスのメタルでデカイバンドはBULLET FOR MY VALENTYNEだと思うが、個人的には彼らからはブリティッシュな雰囲気は感じられない。
SAVAGE MESSIAHは、その中で堂々とブリティッシュメタルと言えてしまうバンドとして登場。
結成した年代としても、シーンに通用するに足るヘヴィネス/アグレッションを持ち合わせながら、ただただコア的な要素を放出するにとどまらない、楽曲として耳を傾けるに足る構成を武器にしていたところは、正に「今の正統的ブリティッシュメタルバンド」である。
その後、『HANDS OF FATE』『DEMONS』と、よりリスナー層を拡大させるべく更にキャッチーな方向性も取り入れたアルバムをリリースして、日本でもその名を定着させてきたワケだが、正直この辺りになってから、個人的には首を傾げる様な状態のバンドなってきていた。
感性が鋭いというか、周囲の反応に対して敏感といった方が良さそうなデイヴィッドの思考によるところが、良くも悪くも大きく作用していたんだろうな。
自分たちの存在が更に大きくなる為には、という事も考えていた結果がアルバムに反映されたんだと思うし、まァその考え方がオレの感じていたバンド像とズレが生じ始めていたという事でもあったワケだ。
で、
2020年以降にバンドの主だった活動が特に耳に入ってこなかったのは、あのコロナ禍が大きな原因となったようで、その辺りに関しては、今月号のBURRN!でデイヴィッドのインタビューが掲載されている。
そして、そのインタビューを見るにあたり、現状では、このライヴアルバムが、SAVAGE MESSIAHとしては最後になるだろう・・・と。
残念だよなァ。
5~10年くらいであれば、メタルバンドでのアルバムリリースとしては辛抱できる範囲(笑)であったりするものだが、そもそも中心人物がバンドとしての活動を考えなくなってしまったら、そこで途絶えてしまうからねェ。
この辺りも、周囲の反応に敏感なデイヴィッドである故の行動かと思えるし、ある意味ではまっとうな現実主義者と言えるかもな。
ただ、ここから心変わりする可能性というのも、なくは無い。
その時に、また始めれば良いと思う。
再始動した暁には、また応援できるバンドであってほしいところだね。