まァ、買わないワケ無いじゃないですか。
前作から6年が軽く経過しているが、このバンドは最早このくらいの間隔が当たり前になってきているし、実際のところ、四天王と括られていたバンド達は2000年代に突入してからペースが遅々としていた。
あとは、『HARDWIRED...TO SELF-DESTRUCT』以降、このバンドはライヴ活動方面で賑わいを見せていた為、その情報を追っていたらそれ程待たされたという感じもなかった。
その一方で、METALLICA以外のバンドを注視していたというのもあったがね。
ソレはソレとして、このバンドがアルバムをリリースするという事が健全な出来事で喜ばしい。
90年代後半のMETALLICAは、メンバー自身でもどうしようもないくらいに内部軋轢があったし、アイデンティティ放棄したと思われた音楽性(『LOAD』、『RELOAD』の事)により、その活動ぶりからも「もうMETALLICAは終わった」と思われていたからな。
そんな90年代が終わったところから、バンド自身が縛り付けていた鎖を断ち切って、今日までの活動ぶりを見せているワケだが、初期より入れ込んでいるファンが諸手を挙げて喜べる様なアルバムが創り上げられているワケでもないのも事実。
今回の『72 SEASONS』も、どうかと言われれば、「う~ん・・・・・・」という感じではある。
『St.ANGER』以降、速い曲を作る事を拒絶しなくなったバンドは、所謂METALLICA印と言える様なリフ/フレーズを迷うことなくそーいった曲調で刻み込んでくるようになった。
そこに今のMETALLICAの活力というのを見出せるのだが、そうであるからと言って初期の様な❝先ず攻撃性ありき❞としたリフをメインとして打ち立てる構成では最早なく、速い曲でも感触がかつての様には感じない。
何というか、初期の頃は「全身に武器を纏って突き進む」感じであったのが、今は「信じる得物一つで突き進む」という感じへと変わった。
METALLICAの速い曲に対する昔と今の違いを、オレはそう捉えている。
ま、速い曲やってるから解決してるワケでもないからね。
ソレはこのバンドの一里塚であって、遅い曲にもこのバンドの魅力は沢山存在している。
ただ、それらの出来栄えに落差がある、って事なんだよね、問題は要するに。
意地悪な言い方すれば、昨今のアルバムの曲は中途半端な出来栄えの曲が多いという聴こえ方なんだわなァ。
METALLICAらしいものを聴かせてくれるのは良い事だが、そこから更に突き抜けたものをファンは求めている・・・というか、待ちわびているんじゃないかね。
さて、
今回の『72 SEASONS』だが、音楽的には前作の延長線上にありながら、それぞれの曲がジワリと個性的な印象を放っている。
前作の2枚分の余計なところを削ぎ落し、さらにストーリー性を持たせた内容となっている。12曲という収録曲数は同じだが、恐らく2枚に分けなければ集中が出来ないと思われた前作との比較がそこで明確にできると、個人的に思っている。
勿論、速い曲ばかりじゃないし、前述したように、個性的な印象を持っている曲が居並ぶと言っても、METALLICAとしての曲の出来栄えとして考えたら、何とも半端さを拭えないと感じる点も否めない。
それでも、METALLICAらしいリフ/フレーズが聴こえてきた時の嬉しさは、やはりこのバンドの持つ魔力なんだろうな、とも思ってしまう(笑)。
アルバムタイトルでもある一曲目「72 SEASONS」は、ジェイムズ・ヘットフィールド曰く、「人は18歳になるまでに、2つの人格が形成されていく」事を題材とした歌詞内容となっている。
以降の曲も、少なからず「人格の形成」という観点を当て嵌めた歌詞内容を覗かせる事もあり、ある意味コンセプトアルバム的匂いも漂う。
兎にも角にも、10代という時期が、人間に於いては重要な時期を示すという感じ方は、我々共通感覚なのだろう。
ターニングポイントがもっと遅い時期に来る事だって勿論ある。
ただ、それも結果として10代という時期を、どう過ごしてきたかという土台あったればこそ、と思える。
それこそ、今回の曲で言いたい事は、「人格形成によって、どう選択するのか」というものである。
この❝檻❞なるものをどう捉えるのかは、その人それぞれによる。
だが、10代で形成される人格は、その取り巻く環境によって影響される事は間違いなく、ソレは結果として鎖、或いは呪縛とも言えるんじゃなかろうか。
METALLICAは、「檻を壊して前に出る」というのを、アルバムジャケットに示している。
しかし、形成された人格は、良くも悪くも消去できるものじゃない。
ソレが消去出来てしまうという事は、❝その人❞そのものではなくなる。
渦巻く感情を抱えながらも、一つの選択でもって動かなければいけない。
では自分にとって最良の選択は何だ?
これもまた、日々我々に突き付けられるものである。
それがたとえ些細な事態であっても、だ。
そんな時間が蓄積し、振り返った時に自分自身というのがどういったものであるかを気付き始める。
・・・・・・そうなるのって、やっぱり相当に時間かかるものじゃねェのかなァって思ってしまうんだよね。
72の季節を通り越してから、って気がしないでもない(笑)。
早くからそこに気付ければ良い、というものでもないからね、こーいうのって。
ともあれ、
今回のアルバムに関しては未だにスラッシュメタル期を神と見做すファンの溜飲を下げるには至らないが、少なくとも2000年代からのMETALLICAとしては、妙な意識をせず無理もなく、これまでで一番焦点を絞れた内容となっているのは明らか。
あとは、ここに加えて鬼気迫る攻撃性を今一度剥き出しにした曲を生み出せるか・・・
このバンドが最後となる時が来るなら、オレが聴きたいのはそこだね。