町中を歩いているとどこからかそよ風に乗って甘い香りが漂ってきました。
香りの強くなる方へ歩いて行くと、そこにはやはり金木犀の木がありました。可愛らしいオレンジ色の花が枝の節々に小さな顔をのぞかせて咲いていました。金木犀の花はあまり長持ちしないようですが次々に咲いていくので5日くらいは香りをまき散らしてくれます。
ここで思い出したことがあります。昭和40年頃研究室の先生方と南陸奥を旅行したことがあります。当時は新幹線がなかったので普通列車に乗っての旅行でした。上野駅から夜行列車に乗って早朝福島駅につきました。朝食をとってバスにのり吾妻小富士で下車、吾妻小富士の火口底までおりて膝ほどまである草の上を歩くと何故か弾むような感じがしました。再びバスに乗り五色沼まで行って太陽の光の影響で沼の色が様々に変化するのを見ながら一周し、三度バスに乗って左の車窓から檜原湖を眺めながら白根高湯中屋に到着しました。そこでの夕食は土地のキノコ尽くしでした。キノコが苦手の私でしたが、各種のキノコを違った調理法で作ったものはとても美味しかったのを思い出しました。温泉風呂は太い湯の滝が滔々と流れ落ちてたいました。翌朝雄鳥の一刀彫りを買って米沢駅へ行き列車で上の山まで行き下車しました。そこからバスで蔵王山へ行きました。蔵王山の周辺にはコマクサなど高山植物がたくさん咲いていました。その日は青根温泉不忘閣に宿泊しました。ここの温泉は25メートルプールほどもある浴槽と西屋の温泉滝の数倍の湯滝がありました。その下へ入るとドンと押しつぶされました。ケガをしないでよかったです。ちなみに出入り口は男女別ですが中は仕切りがありませんでした。そして翌朝バスで大河原駅へ行きましたが列車の時刻まで少し余裕があったので大河原の町中を散歩しました。すると町中が甘い香りに満ちていました。それは私が初めて嗅いだ金木犀の花の香りだったのです。町中の諸処に10メートル以上もあるような大きな金木犀の木があり、満開の花盛りだったのです。
旅行はその後仙台から松島へ行き、瑞巌寺を見学したり松島湾内を遊覧船で島巡りをしました。そして仙台へ戻り市内を自由行動で名所を見て回り、夜行列車で帰京しました。高齢の先生方二人を含めて8人の旅は往復両夜行列車、旅館2泊の強行軍でしたが皆さんよい想い出が出来たと喜んでくれました。今はその先生方3人は別世界へ行ってしまいましたが、私も当時の先生方の年齢を遙かに超えてしまいました。