寓居人の独言

身の回りのことや日々の出来事の感想そして楽しかった思い出話

異次元世界からの招待(2)

2016年05月15日 23時15分20秒 | 寓話

 佐々木は2日間休んで溜まっていた仕事を片付ける

ために研究室へ戻った。事務机に向かうと同時に助教

の高橋都がノックをして返事も待たずに入ってきた。

「佐々木先生お帰りなさい。先生のいらっしゃらない間

に数本の電話がありました。お相手の連絡先をメモに

書いておきましたんでよろしくお願いします。それか

ら北館主任教授がお戻りになりましたらなるべく早く

連絡してくれるようにとのお話でした」

「あ、そうですが。ありがとう。」

といって渡されたメモ用紙をサッと見てから北館主任

教授に電話を掛けた。

「北館先生、今戻ってきたところです。留守にしてい

て申し訳ありませんでした。それで何かご用でしょう

か」

「そう、これから直ぐにお会いできませんか。都合が

よろしければ私の部屋までご足労お願いしたいのです

が」

「分かりました直ぐ先生のお部屋へ伺います」

 佐々木は何か急用が出来たのだろうかと考えながら北

館主任教授の部屋へ急いだ。主任教授室のドアをノック

するとすぐどうぞと変事があった。

「失礼します。佐々木です」

「佐々木先生、お待ちしていました。どうぞこちらへ来

てソファーに掛けて下さい」

と言いながらソファーを指さした。

「佐々木先生、早速ですが実は政府のある高官があなた

の業績を目に留めて何とか政府に協力して欲しいと言っ

てきているんですがね。

何でも近頃世界中で頻繁に人が突然行方不明になってい

るというのです。それで我が国の政府も調査に乗り出し

たのですが、失踪届が出ている方だけでも数十人が行方

不明になっているそうです。それらの方々は丁度あなた

と同じ年代の方が多くしかも多分野にわたる専門家が多

いというのです。それで政府は本格的な調査を始めると

いうのです。1950年代以降の某国による拉致事件との関

連も含めて調査するというのです。それでこの大学から

もあなたに出向して欲しいと依頼があったのです。今お

話しできるのはここまでです。佐々木先生如何でしょう

か」

「今伺った話では何ともお返事のしようがありませんが、

一両日考えさせていただけませんでしょうか」

「もちろんですとも。しかし出来るだけ早くお返事を下

さい。政府もいそいでいるようですからね」 

「わかりました」

「ところで佐々木先生、何か身体の調子が悪いと言うこと

は無いでしょうね。チョット噂を聞いたのですが」

「はい。肉体的に何も異常はありませんが」

「と言いますと何か他にありますかな」

「いえ、たいしたことではないのですが。少し異常感覚

に襲われることがありますので同級生の馬場准教授の紹

介で神経科を訪ねたのですが、何も異常が無いというこ

とで来週火曜日に精密検査を受けることになりました」

「佐々木先生に限って大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。私自身も気のせいかななどと思

っているのです」

 佐々木は北館主任教授室を退出した。自室に戻ってメモ

に書いてあったものを見ると4件の内3件は取材申し込み

で再び連絡するというので待っていればよいものだった。

残りの一件は故郷にいる母からのものであった。母へは家

に帰ってから電話することにして事務処理に専念した。

  夜9時過ぎまでかかって事務処理を終わった佐々木は自

家用車に乗って大学を後にした。マンションに着き部屋に

入るなり母に電話を掛けた。