陰日向に咲く

幸せを表すなら黄色なのか？
高倉健主演の映画で、北の大地にこれでもかと翻る黄色いハンカチを見た時にも思わず大泣きしたものだけど。

この映画も、印象に残ったのが、黄桃・・・黄色の桃缶と、風にあおられて舞い上がる黄色の傘。

基本的に、タレント本は好きじゃない。ゴーストライターがいるに違いないと思ってしまうから。　なので劇団ひとりさんのこの本がいくら100万部を超すベストセラーになろうとも、手に取ろうとは思っていなかった。

映画も、岡田准一くんが出ていなければ観なかったかもしれない。
けど・・・これはとてもいい映画だと思った。
いや、いい映画というより、よく出来た映画、よく出来た（脚）本なのだ。

パチンコ狂で借金まみれのバスの運転手、母の初恋の相手を探している弁護士。モーゼと呼ばれるほら吹きのホームレス。売れないアキバ系アイドル。その親衛隊。
かつての売れない漫才コンビ、ジュピターという名のストリッパー、何もかも捨ててホームレスへと身をやつしたいのに出来ない男・・・。

各々、てんでばらばらの人生を背負っているかのように見えるのに、それが全部ひとつに繋がるのだ。
複雑なアラベスク模様のタぺストリー、もしくは、色糸を組み合わせて複雑な模様を編みこんだ、手の込んだセーター。　なのに、いったんほどくとするすると一本の毛糸になるような。
その繋がり方が見事、というしかない。
劇団ひとりさんがこの本を（本当にひとりで）書いたというなら、彼の才能を感じる。よく分からない泣き芝居なんてしてないで、文筆に専念すればいいのに、なんて思った。

岡田君が主演のようだけど、実は、そうでもないような。
強烈な西田敏行だったり、すっかり中年のおぢさん役が似合ってしまう三浦友和だったり。　個人的に、これまた男前だと感じる塚本くんだったり。
めっちゃ可愛い平山あやちゃんだったり・・・。
よく、これだけばらばらなものをひとつにまとめたな～と思う。

私は後半30分はぽろぽろぽろぽろ涙がこぼれた。
けっして悲しくはないのだけれど。
たくさんの鼻水？をすする音が聞こえた。
私の周りも、みんなハンカチを出していた。

観終わって、原作本を読んでもいいかな、と思った。
いい映画だよ。　ハンカチを忘れずにどうぞ！