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オッピー!

2024-04-15 14:57:07 | 映画

クリストファー・ノーラン監督の作品にはホント、毎回驚かされますね。

今までのノーラン監督は、どちらかと言えば極力特撮に頼らない、実写で誰も見たことのない世界観を大迫力の映像で再現してきた、現代最高の映画作家のお一人だと思っています。どの映画を観ても(僕は『ダークナイト』が最高峰)ハズれなし!

しかし今回ノーラン監督が題材に選んだのが、アメリカの近代史では最重要と言っても過言ではない実在の人物。

その人物をノーラン監督がどのように料理するのかと期待していたら、180分の上映時間の殆どが登場人物のバストショットかカオのアップ。しかもセリフ(情報量)は多め。(半分は)美しいモノクロームの映像のせいもあって、シドニー・ルメット監督の名作『十二人の怒れる男』を思い出してしまいました。こじつけ過ぎ?

派手なアクションや息をのむような映画的な高揚感のあるシーン(ニューメキシコの風景は絶品)も特になく)、僕的にはあまり”ノーラン感”は感じませんでした。

 

でも。でも。でも!

『オッペンハイマー』。何ですかこの映画!土曜日のレイトショウで観て以来、全てのシーンが未だに脳裏にこびり付いて離れません。

【本予告】『オッペンハイマー』3月29日(金)、全国ロードショー

 

映画を観る際は極力前情報は入れずに観たい派なんですが、オスカーを席捲した上に、日本とは切っても切れない「原子力爆弾」を作った人間の物語とあって、メディアで目(耳)にしない日はないという程の超話題作。否が応でも色んな情報は入ってきてしまいました。

その中でも気になったウワサが...

①「原爆投下の描写が少ない」とか②「話が行ったり来たりで混乱する」とか③「上映時間が長い」(個人的にはコレが一番不安でした)etc...

イヤですねぇ。イヤでも情報が溢れかえる今の時代って。

それではあくまでも個人的にそのウワサたちに反論します。

①に関しては、僕は十分過ぎる程描いていたと思います。まず何よりこの物語はアメリカ側からの視点で作られているし、直接的な描写がなくても(原爆投下が成功した一報を受けた研究所の人々の歓喜の様子はちょっとツラかったですが。)投下後の状況を聞いたロバートが苦悩(しかもハンパなく)する様子で十分伝わってきました。

批判を承知で言えば、劇中でも原爆の早期開発の必要性を説く場面で「こうでもしないと日本はいつまでも降伏しない。自軍も含めての犠牲者がこれ以上出ないよう、早く戦争を終結させなければ」という、(現代では絶対に許されないけど)当時の戦争当事国の強い思惑があったのは仕方なかったと思います。共産主義=ソビエトの仲間 という発想からくる赤狩りなど、あの頃のアメリカ(だけでなく全世界かも)の寛容性のなさが招いた沢山の悲劇の中の1ページなんでしょうね。

 

②については、映画を良く観る人ならそれほど問題ないんじゃないかと思います。っていうより、オッペンハイマーという稀代の天才科学者(その割には女好きだったりダラしなかったりと結構人間臭い人。理系は苦手だけど案外好きかも)と、そんなオッピーを尊敬しつつも上昇志向の塊で野心家のストローズの対比を、抑えたトーンのカラー(これがまためっちゃキレイ)で過去の栄光と挫折を見せつつ、国家の英雄から一転、良からぬ嫌疑をかけられ一方的に悪者に仕立てられていく様(ストローズの怨念?)を丁寧に重ねていっているので、僕は逆にとても分かりやすかったかな。

但し!未見の方はアタマがスッキリしているときに観ることをおススメします。一瞬たりとも見逃せない、緊張感を存分に味わってくださいね。

そんなストローズを演じたのが、変化自在のロバート・ダウニー・Jr。マーベルが苦手なのであまり縁のない役者さんですが、あの史上最高にくだらない大傑作『トロピック・サンダー』で黒人カーク役で圧倒的な存在感を放っていたあの人ではないですか!相変わらずのなり切りっぷり。さすがです。

他にもレミ・マレックがチョイ役で出てきたり、『クワイエット・プレイス』のエミリー・ブラントさんがオッピーの奥さま役だったり、ウザい役をやらせるとハマる(個人の感想です)マット・デイモンに、ノーラン監督作品の常連ケネス・ブラナーがしっかり脇を固める贅沢さ。※他にも渋い役者さん勢ぞろい。トム・コンティがアノ人役だったり!

これだけ(単独主演張れるクラスの)豪華俳優陣を揃えながらも、派手な演出を抑えた細かい人物描写にとことん拘ったノーラン監督ってやっぱりスゴいなぁ。

できれば字幕を追いかけながらの3時間は疲れるから、吹き替え版(あるのか?)でもう一度じっくり観たいです。

そして③。上映時間について。全く長さは感じさせません。むしろもっと観て(この世界観に浸って)いたかったくらいです。

体感的には2時間弱の映画を観たくらいの時間の感覚です。事前にNHKのドキュメンタリーとかを見ていたので、オッピーがどのような道を辿ったのか(あくまでも触りだけですが)は漠然と知っていました。それでこの長尺。肉体的な心配(年齢と共に最近トイレが近いのでw)もあって、正直ちょっと心配でした。昔のように途中休憩入れてくれればなぁ~なんて考えたりもしましたけど、これまた全くの杞憂に終わりました。誰一人途中で席を立つ方はいませんでしたね。それだけこの物語に引き込まれていたんです。

だから長尺映画に不安を感じている方!大丈夫です。多分。

 

さて、次はいつ観に行こうかな。

 

 



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