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バーボングラス片手のロックな毎日

大阪粉もん文化 その2うどん

2015-07-07 05:18:17 | FOOD&DRINK
大阪の人間はうどんの事を「おうどん」と呼ぶ。
なんでもかんでも「お」をつけるのは大阪人の悪いくせだが、おうどんは別格だ。
大阪粉もん文化の中で、おうどんはかなりのウェイトを占める。多分お好み焼きやたこ焼きよりも、うどんを圧倒的に食べてるんじゃないかな。

うどん屋はハンバーガーチェーンや、コーヒーのチェーン店並に乱立する。駅のホームにだってある。朝飯代わりにうどん。昼飯でもうどん、夕飯でもうどん、おまけに飲んだ〆にうどん。うどんどんだけ好きやねん!って突っ込みたくなるくらい大阪人はうどんが好き。

うどんは消化にいい。うどんは食欲が無くても食べれる。うどんは手軽に手早く食べれる。うどんは家で作るのも簡単。うどんはちょっと手を加えればご馳走になる。
「体調が悪くて食欲が無い」と言えば『じゃぁ、おうどんにしよか』。ごく一般家庭でこの会話はおこなわれる。どんなに体調が悪くても、食欲が無かろうが「おうどん」なら食べられるという現実。恐るべし「おうどん」。

かけうどん、きつねうどん、鍋焼きうどん、これらはすべて大阪発祥だ。
江戸時代は釜揚げうどんを濃いめの出汁につけて食べるスタイルがポピュラーだったらしい。忙しい大阪商人は、いちいち救い上げて出汁につけてって行為が面倒くさいと思ったのか、もっと手早く食べたいと思ったのか、出汁を釜揚げのうどんにかけて食い始めた。これが「かけ」うどんの発祥だ。

うどんと一緒に手軽に食べれるご飯。それがいなり寿司。大阪では「お稲荷さん」と呼ぶ。関西は三角で、関東は俵型。味付けも違う。これも忙しい(せわしない)大阪商人たちは別々に食べてるのが面倒くさくなったのか、どうせ中身は炭水化物だから一緒だと思ったのか、かけうどんの中にお稲荷さんをぶち込んで食べ始めた。その油揚げの入ったかけうどんを「きつねうどん」と呼ぶようになった。伏見稲荷をはじめとした稲荷神社の守り神「狐(きつね)」の好物が油揚げだったから、油揚げ=きつね。単純明快、そして洒落が効いてる。本当に狐は油揚げが好物なのかどうかは知らないが。動物園で今度聞いてみよう。

大阪では「きつね」と言えば油揚げの入ったうどん。「たぬき」と言えば油揚げの入った蕎麦の事だ。マルちゃんの「赤いきつね」(うどん)と「緑のたぬき」(そば)でもそうなってる。東京で「たぬき」を頼んだら天かすのうどんが出てきた。ちなみに大阪では天かすとネギと七味は入れ放題だ。

鍋焼きうどんは、諸説あるが美々卯さんが発祥だ。登録商標にまでなっている。
エビ、椎茸、魚介類、肉類、野菜・・・いろんな具材を豪勢に乗せた鍋焼きうどんは、手軽には食べられないくらい豪勢な食事だ。これはこれで美味い。アルミホイルを加工した簡易鍋に具材とうどんを入れたものがスーパーに売ってるから、手軽に食べたかったらこちらを買ってくれ。
ちなみに「美味しんぼ」で岡星の主人が作る究極の鍋焼きうどん。これはこれで是非死ぬまでに一度食べてみたい一品だ。

この鍋焼きうどんを更に進化させたのが、「うどんすき」。かに鍋、てっちり、水炊きなんかの鍋の締めには雑炊を作るのだが、うどんで締める場合がある。だが、「うどんすき」はこの〆のうどんを鍋の最初からメインとして投入。うどんと具材を一緒に食べる。あったまる。腹もふくれる。
「鍋焼きうどん」と「うどんすき」の違いは一人鍋と複数人数鍋だけの違いなのかもしれない。
ただし鍋焼きうどんの締めに雑炊は作らないが、うどん好きの場合はそれも可能。炭水化物のパラダイス。

大阪のうどんはコシが無くフニャフニャだ。それが昆布と魚系と薄口醤油で味付けされた出汁に入ってる。
そのうどんに慣れた大阪人は関東でうどん食べると必ず文句を言う。「汁が真っ黒で気持ち悪い」と。「鰹節の味しかしないから色の割には薄っぺらい味」東京人が大阪でうどんを食うとこの逆の文句を言う。出汁の色や取り方が違うなんて事はわかってるんだから、文句言うくらいなら食べなきゃいいのにね。ってちょと不思議。確認したいのかな?カップうどんの日清のどん兵衛も関西と関東では出汁の味、色が全く違う。

蕎麦は日本全国共通だ。出雲ソバやへぎ蕎麦、椀子そば等地方でいろいろあるが、ざるそばは基本的に全国共通だ。そして蕎麦は東京が一番美味しい。大阪でそばのおいしい店は探すのが大変。うどんの出汁に蕎麦をぶち込んでるからかな。蕎麦は素麺と同じく出汁はうどんと変えてほしい。うどんより濃いい方が蕎麦は美味い。
ラーメンは、サッポロ味噌ラーメン、中華そば、喜多方、九州豚骨、担々麺、つけ麺醤油、塩、醤油・・・どこの地方で食べたって「これは違う」なんて文句を言わず、その地方独特の味を楽しみ、素直な感想を言うのにね。

でも、うどんだけは妥協しない。うどんには不思議な日本人の郷土愛とアイデンティティがあるのかもしれない。

うどんは勢力図がある。その地方独特の食べ方、うどんにこだわっている。
稲庭、東京、山梨ほうとう、名古屋きしめん・味噌煮込みうどん、長崎五島うどん、富山氷見うどん、長野県おざんぎ・・・。
その勢力図の頂点にいるのが讃岐うどん。
コシのきいたさぬきうどんは独特だ。大阪よりもっとふにゃふにゃの伊勢うどんを1の固さとすると、讃岐うどんは20くらいの固さだ。でも、この“こし”は大阪でも受け入れられている。ブームになった以降、今も大阪にはどんどん讃岐うどんスタイルのチェーン店が増えている。稲庭うどん、名古屋のきしめん、はチェーン店どころか受け入れられないのに、讃岐うどんは平気で受け入れられる大阪人。
香川県内には約900軒くらいのうどん店があるらしい。製麺所でそのまま食べるところもあれば、店舗としてどくりつしてるところもある。香川県自ら“うどん県”と称するくらいだ。
これは大阪人がいかにうどんを食べてるといえ、とうてい敵わない。大阪を「うどん府」なんて呼ぼうと言うのには無理がある。「お好み府」とか「たこ焼き府」とかでも無理だ。(ちなみに「大阪都」も無理だ)。そこまで大阪人はうどんを愛していない。「うどん愛」これは香川県に王座を譲ろう。

この讃岐うどん。乾麺、生麺いろいろ大阪でも売ってる。その中でも重宝するのは加ト吉(現テーブルーマーク)の冷凍讃岐うどん。
こいつは美味い。コシのきいた讃岐うどんをいつだって手軽に楽しめる。うどんすきでも鍋の締めでも手軽に使える。勿論通常のうどんにだって使える。冷凍だから鍋の温度が一気に下がってしまうのが欠点だが、ひと玉づつ入れるか、それに負けないくらいぐつぐつにしておけば大丈夫だ。生麺と違って冷凍庫にいれておけば保存もきくので、我が家の冷凍庫にはいつも常備されてる。


大阪の天ぷらうどんは、よほどのうどん専門店ではない限りエビ天ではなく天かすを寄せ集めたものが乗ってる。申し訳程度の小さなエビが入った天ぷらがつゆでぐしゃぐしゃにばらけていくのを楽しんで食べてくれ。


同じ関西圏でも大阪のきつねうどんと、京都と奈良では違う。これも是非違いを楽しんでくれ。
阪急電車の十三駅(どの路線からでも行ける)の駅ホームにある「阪急うどん」を是非食べてくれ。正式名称は「阪急そば」なんだが大阪人は何故か「阪急うどん」と呼ぶ。以前は立ち食いだったがリニューアルされて最近は椅子があるようになったらしい。椅子に座って食べるほど高尚ではないんで、椅子は要らないような気がするんだが、これも時代かね。梅田駅のホームや構内にもあるからそちらでもいいよ。
「都うどん」もそこらへんにいっぱいあるから是非食べてくれ。食券を買って出てくるまでの早さは、マクドナルドなんて目じゃないぞ。とにかく早い。店に入ってから、食い終わって出るまで3分ってくらいだ。

なんばの「千とせ」。今や有名になってしまったが花紀京さんが考案した「肉吸い」は卵ご飯と一緒に是非食べてほしい。知らない人の為に記載するが「肉吸い」は肉うどん(ちなみに大阪で肉と言えば牛肉の事だからね)のうどん抜き。大阪はこんな注文にも応えてくれる。初めてここに連れて行ってもらったのは、誰もが知ってる有名な落語家の方。そのときメニューの由来と一緒に「あんまりこの裏メニューは広めたら駄目だよ」って念を押されたんだが、その後TVや雑誌で紹介されてしまって、今や誰でも知ってる定番メニューになってしまった。

ちなみに俺は阪急うどんで「かけうどんのうどん抜き」とか「うどん少なめ」っていう独自メニューを作ってもらってる。都うどんはどこの店でも頭が固いのか、まじめなバイトが多いのか「うどん少なくしても料金一緒なんですが・・・」って、うどんを通常量入れようとするので最近は頼むのやめた。その点、阪急うどんのパートのおばちゃんは臨機応変。わがままな注文にも応えてくれるので食欲の無い時でもありがたい。

ちなみに千とせでも「肉吸い」580円、「肉うどん」580円と同じ値段だよ。(昔の値段だから今はいくらなのかは知らない)うどんを入れようが入れまいが同じ値段。大阪はうどんの値段は0円で、出汁と具材の値段でできてるのかもしれない。
もしあなたがリッチなら美々卯で「鍋焼きうどんのうどん抜き」って言うのを是非頼んでみてくれ。俺はもったいなくて未だに頼めない。

大阪で有名なうどん屋は他にも「道頓堀今井」とかある。ここのうどんも確かにうまい。江戸時代から続くこの店の出汁の美味さは、ミシュランで3つ星をくれてもいいと思ってる。近大マグロをグランフロントで並んで食べるくらいなら、是非ここのうどんを食べてくれ。

大阪で「不味いうどん屋」って探す方が大変なくらいどこの店も美味しい。そこらへんの大衆食堂のうどんでさえ美味い。
その中で俺が大阪で一番うまいうどん屋って思うのは、枚方の「いっちょう」だ。(旧ぺこぺこ)
ここのカレーうどんは絶品。釜揚げも卵とじもきつねも鍋焼きもうまい。深夜までやってるからありがたい。国道1号線と170号線が立体交差する街道沿いにありながら、専用駐車場は無い。最寄りの駅からはだいぶ離れてるから車で行くしか無い。したがって路駐をしなきゃ駄目だ。まぁ大阪人は路上駐車に罪悪感を殆どもってないから、成り立ってるんだろうけどね。是非、機会があれば行ってくれ。

こんな事をダラダラと書いてたらもう朝5時。腹が減った。
うどんでも食べて寝るか。