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バーボングラス片手のロックな毎日

あれはおねえちゃんの曲よ!ラブソングの最終回の賛否両論

2016-06-16 05:09:26 | MUSIC/TV/MOVIE
そろそろ春のドラマが最終回を迎える。
福山雅治主演のラブソングも今週で最終回だった。
最終回を見た人のほとんどが「なんじゃそりゃ?」とか「これで終わり?」って思うだろう。
俺も最初そう思った。でもこれって、後半の脚本のまずさでわかりにくくなってしまったが、「ラブソング」ってタイトルにふさわしいエンディングだったと思う。

視聴率が低迷って言われてたからか、たぶん途中で脚本家を変えたか、脚本にかなり手が入れられたかだろうが、ストーリーや設定が途中から無茶苦茶になってしまった。
このドラマは「恋人の死によって音楽を諦めた男が、吃音で苦しむ女の子が音楽によって道が開け、それに伴い自身も音楽と愛を取り戻す」というテーマだった。(ような気がする)
途中までは良かった。
吃音(どもり)を気にして自分の殻に閉じこもった女の子(藤原さくら)が、昔からの親友(夏帆)に結婚式でのスピーチを頼まれ、自立しなきゃって思ってるところにカウンセラー(福山雅治)と出会う。福山は恋人が亡くなったことで音楽から一歩離れてたが、恋人の妹(水野美紀)と一緒に吃音克服でさくらに音楽を教え、又さくらも音楽によって生き甲斐を見つける。
夢を諦め現実に生きる中年達と、夢が見えなくて、つかめなくてもがいてる若者達との対比。それぞれの中にあるラブソング。
このドラマが描きたかったのはそこだと思って観てた。

音楽を作るシーンや練習風景なんかはリアルで良かった。音楽業界の表と裏も描かれてる。音楽に興味ない人はちょとつまんないかもしれないがね。
吃音で周りとのコミニュケーションがうまく取れないところもうまく描いてた。特にさくらが家に帰ったら妊娠してる夏帆が破水で苦しんでるシーン。119に電話しするが喋れない。通りに出て助けを求めるが喋れない。あのシーンは見てて悲しくなるくらい良かった。
夏帆もキャバ嬢で生活をしてたのを辞め、結婚を機に次のステージに上がる。でも、先方の両親との確執という大人社会の現実にもがく。
さくらと夏帆共通の幼馴染(菅田将暉)の演技も毎回良く「真の主役は彼かも?」なんて思えるほど。これは最後まで変わらなかった。
彼がさくらへの恋心を、通ってる調理師学校の年上の女(山口紗弥加)にすげ替え埋めよう・諦めようとしてるところや、その山口もまた子供という夢を元旦那にとり上げられてしまってたって設定も良かった。

音楽の楽しさを知ったさくらのために作った曲が、福山の死んだ恋人のために書いた曲と一緒と気付いた水野美紀が叫ぶ。「あれはお姉ちゃんの曲よ!」
このセリフは、たった一言で水野美紀のやりきれない思いを表してる。
福山がさくらにお姉ちゃんの幻影を求めてるのに気付いた。お姉ちゃんを忘れてさくらに心が向いてる事へのジレンマと嫉妬心、自分が福山に抱いてる恋心をお姉ちゃんのためにごまかして封印してるということも葛藤。
それらがこの「あれはお姉ちゃんの曲よ!」に全て含まれてる。

この後、水野美紀はさくらに「ごめんね言い過ぎた」って謝り、さくらも「あの歌歌っていいですか?」ってお伺いをたてる。一見これも「なんじゃそりゃ」って思うシーンだが、これが後のさくらが福山に抱いてる恋心と、もう存在しない元恋人への嫉妬を表す序章だ。
さくらはこの曲のルーツを知り、福山が自分を通じて死んだ恋人の幻影を見てる事を知ってしまい、自分を見て欲しいのに、せっかく自分をやっと好きになれたのに、なのにって。ライブの後で福山に伝える切ない恋心と女の意地。このあたりは残念ながら藤原さくらの演技力がちょっと足りなくてわかりづらかったが、脚本はとてもいい。

って結構丁寧に描いていたのよ。テーマもここまではぶれてなかった。
でもね、これが6〜7話あたりからなんかおかしくなってしまうのよね。
昔の野沢ドラマみたいに、途中まではハッピーに向かうんだけど後半ドロドロの退廃していくってのとは違うのよ。明らかに視聴率やSNSなんかの反響を見て、脚本自体をいじくってしまったとしか思えない酷さ。確証はないが確信してる。

福山と元同じバンドだった田中哲司(仲間由紀恵の旦那ね)がライブでさくらの声に違和感を気づく。この辺りも「さすが元バンドマン』って設定だが、検査したらこれが悪性の咽頭癌って?おいおい、余命何ヶ月の花嫁とかと同じ路線を狙いにいくのか?
これでもう、夏帆の結婚式でのスピーチがメインディシュではなく、下手すれば声を無くしてしまうっていうのがメインの話になってしまった。

ここからがもうひどい。

田中はさくらに言う前にみんなに言ってしまう。守秘義務とかお構いなしかよ!
ボケてヒステリックな患者の由紀さおりは意味深なことをさくらに言い、福山にも言う。なんじゃこりゃ?

落ち込むさくらを元気付けようと菅田将暉が海に連れ出すが、この波打ち際のシーンが80年代の描き方。キツイぞ。
さらに浜辺で一人でポツンと座ってる少女に会う。この子も吃音で小学校絵いじめられて孤独。励ますさくら。「私も吃音だ、でも歌に出会って世界が変わった」って。このセリフ自体はいいんだが、都合よく吃音の少女に会うって設定ってどうなのよ。

手術までにやりたいことを全部させてやるって、菅田将暉が藤原さくらに尋ね、やりたいことを手帳に書かせるシーンは良かった。菅田将暉の健気さが、無理に明るく務めるいじらしさがとても良い。かなり好感度アップ。これを見てウルルンとこない女子は少ないと思う。
だけどね、手術まで一ヶ月。遊園地とか行くのはいいよ。でもさ、お前お金持ってないじゃん。それに路上ライブって練習そこそこでそんなに簡単にできないよ。

さくらがやりたい事メモに「歌いたい」って書いて消したのを知ってる菅田将暉は、牛丼屋で流れたさくらの曲がシェリル(Leola)がSNSでレコメンドしてくれたおかげで、それは福山雅治の影の動きだと気づく。(わかりにくいぞ)福山のところに行き「あの子に歌わせられるのはアンンタだけなんだ!」って。須田くんの演技に助けられてるいいシーンだ。

そこから福山とさくらは一緒に曲を作る。結婚する夏帆へ作るラブソング。またこれが簡単に出来上がるのよね。シェリルの曲はできなかったのに。
手術のために予定を早めてくれた夏帆の結婚式。サァ最初のメインテーマだったスピーチだ。
あれれ・・・やっぱりちゃちいぞ。
これならライブ前に同僚や上司(木下ほうか)に語ったMCの方が泣けたぞ。しかも雨降って、せっかく作った歌のお披露目シーンも無しかよ。
案の定、結婚式のスピーチよりも手術で声がなくなるかもしれないにメインが移っちゃったんだな。

で、手術の前に表情なくして同意書にサインしないさくら、でも福山のギターに合わせて歌を取り戻してくちづさむさくら、手術が成功して(あんだけ引張他のにあっけないの)喜ぶさくら、退院祝いにいつものライブハウスでライブをしようと久々に揃って練習する元メンバー+菅田将暉。
で、他院したら突然いなくなるさくら。
恩知らず?しかも大家には言ってたって?菅田将暉くんはどこに住んでるんだ?もう無茶苦茶。

もうこのあたりで切ろうかな?って思ったが、せっかくだし最後まで見よう。
いきなり2年後。
シェリルの音楽プロデューサーになってる福山。いつ和解した?
で、シェリルがいう「あの曲カバーしようかな?」
調べる。今も50位あたりにいる。ってことはロングセールスでいい曲なんだっちいたいんだろうが、いつメジャー契約したのか?本人不在で?
で、さくらを事務所が探し、福山が訪ねに行く。そこで見たものは?

多分、本当は打ち切りなんだろうけど、フジテレビのプライドで公表せず、無理やり全11話を10話で終わらしたからこうなったんだろうな。
韓流ドラマのように後半は急展開で、前半あれだけ丁寧に描いてたのに、後半は無茶苦茶。
最後の三週はしっちゃかめっちゃかだが、このドラマ、もっと時間をかけてゆっくり作ればもっといいドラマになったと思う。
あの「あれはお姉ちゃんの曲よ!」っていう部分をもう少し広げてつなげていければ・・・。
テーマがぶれてしまって余計に勿体無い。

エンディングは賛否両論あるだろう。それは視聴者が判断すればいい。
これは「ハッピーエンドだ」「いやこれはなんだ?」ってね。
俺は最後のシーンでは、浜辺であったあの吃音の少女が、さくらの唄う歌に合わせて、一緒に口ずさむシーンを入れて欲しかった。