今日は歩行者です。
イギリス産のお菓子。特にフィンガーは濃厚でおいしいです。過去に何度かイギリスのクッキー食べたことあるんですけど、全部味が濃厚だったので、イギリスのクッキーはどれも味が濃ゆいのかと思ってましたが、ひょっとしたら僕は毎回ウォーカーを食べていたのかもしれません。
違和感を覚えた話をします。「問題はそこじゃないんじゃない?」っていう話。
20年ほど前、新聞を読んでいたら、どこかの団体による、キャッチコピー募集の記事が載っていました。募集していたのは、看護婦さんにタバコを止めさせるためのひとこと。
看護婦さん(当時はまだ看護師という呼称は定着していませんでした)は喫煙率が高い。タバコによって健康を害してしまっている。だから、タバコを止めてもらうよう、看護婦さん向けの禁煙ポスターを作りたい。つきましては、そのポスター用のコピーを考えてほしい。
そんな内容の募集でした。
僕はこの記事を読んで、違和感を覚えました。
タバコの吸いすぎはよくない。健康のためには、タバコを止めたほうがいい。それはその通りです。
しかし、ではなぜ看護婦さんの喫煙率は高いのか。看護婦という仕事はストレスが高いから。そして、仕事の合間のストレス解消の手段は、タバコくらいしかないから、です。
だったら、看護婦さんの労働環境を改善してストレスを低下させてあげるか、タバコ以外のストレス緩和手段を提案してあげるかすべきでしょう。
そのどちらもしないで、ただ「タバコを止めろ」とだけ訴えるのは、あまりに思いやりがなさすぎるのではないでしょうか。
職場のストレスが高いまま、それを緩和するタバコを取り上げられたら、どうなるか。高いストレスにさらされて、心か体を(あるいは両方を)病んでしまうかもしれない。職場の人間関係を悪化させてしまったり、仕事を続けられなくなったりするかもしれない。ストレス環境はそのままに、タバコだけを止めさせるというのは、かなり危険なことなのです。
だから僕は違和感を覚えたのです。看護婦さんの置かれた職場環境をいっさい考えずに禁煙を呼びかけるのは、喫煙の原因を見ようとせず、結果だけに注目しているようにしか思えなかった。現場の苦労を知りもしないくせに、「タバコは健康に悪いから止めましょう」というきれいごとを振りかざしているようにしか思えなかった。ストレス解消の手段であるタバコを看護婦さんから取り上げたら、ストレスが溜まりやすくなり、それがかえって彼女たちを不健康にしてしまうかもしれないのに、キャッチコピーを募集してる人たちは、そのことにまったく思い至っていない様子でした。
「猫を追い払う前に魚をどけよ」ということわざがあります。何度猫を追い払おうと、魚がある限り猫はやってくる。魚をどこかに隠さないと、根本的な解決にはならない。おおもとたる原因を見ないとダメだという意味ですが、まさにそれと同じですね。
あるいは、「幻想」があったのかもしれません。「ナース=白衣の天使」という、一種の固定観念。男性からの一方的な、多分に理想主義的で、いくらか性的な視線をともなった幻想。その幻想によって、「看護婦さんにはピュアであってほしい。タバコなんか吸ってほしくない」という身勝手な願望を押し付けようとした。そんな一面があったのかもしれません。
おそらく、キャッチコピーの応募は行われ、ポスターも作成されたはずです。ポスターは多くの病院に配られ、看護婦さんたちの目に触れたことでしょう。
看護婦さんは、どう思ったでしょう。たぶん、こう思ったはずです。
「タバコが健康に悪いだぁ?こっちゃそんなの百も承知で吸ってんだよ!それでも吸わなきゃやってらんねーから吸ってんだろーが!ウチらが日々どんなストレスにさらされてるか、ひとつもわかってねーヤツらがエラソーにタバコ止めろだと?何様のつもりだよ。知ったふうなツラしてっけど、お前がわかってるのはタバコのニコチン含有量だけだろ。現場の苦労を勉強しに来い!看護婦がどれだけストレス高いか、タバコ吸わなきゃとてもやってられない仕事だってことを一度体験してみろ!タバコがよくないってんなら、吸わなくても済むように現場のストレスを減らすのがスジだろーが!こんなくだらねーポスター作ってる暇とカネがあるなら、看護婦の職場環境改善のために動けよ!せめて人の神経逆なでするポスターだけは作るな!それとも何か?このポスター作ったヤツがストレス解消に殴らせてくれるのか?」
考えなしの善意というのは、往々にしてこういうものなのですね。望ましい結果をもたらすどころか、火に油を注いでしまう。
禁煙を呼びかけるポスターは、それなりの成果を上げたのでしょうか。看護婦さんの怒りを買っただけで終わってしまったのでしょうか。
あれから20年ほど経っています。看護婦(看護師)さんの喫煙率は、今も高いままなのでしょうか。
ほかにストレス解消の手段があればいいんですけどね。
イギリス産のお菓子。特にフィンガーは濃厚でおいしいです。過去に何度かイギリスのクッキー食べたことあるんですけど、全部味が濃厚だったので、イギリスのクッキーはどれも味が濃ゆいのかと思ってましたが、ひょっとしたら僕は毎回ウォーカーを食べていたのかもしれません。
違和感を覚えた話をします。「問題はそこじゃないんじゃない?」っていう話。
20年ほど前、新聞を読んでいたら、どこかの団体による、キャッチコピー募集の記事が載っていました。募集していたのは、看護婦さんにタバコを止めさせるためのひとこと。
看護婦さん(当時はまだ看護師という呼称は定着していませんでした)は喫煙率が高い。タバコによって健康を害してしまっている。だから、タバコを止めてもらうよう、看護婦さん向けの禁煙ポスターを作りたい。つきましては、そのポスター用のコピーを考えてほしい。
そんな内容の募集でした。
僕はこの記事を読んで、違和感を覚えました。
タバコの吸いすぎはよくない。健康のためには、タバコを止めたほうがいい。それはその通りです。
しかし、ではなぜ看護婦さんの喫煙率は高いのか。看護婦という仕事はストレスが高いから。そして、仕事の合間のストレス解消の手段は、タバコくらいしかないから、です。
だったら、看護婦さんの労働環境を改善してストレスを低下させてあげるか、タバコ以外のストレス緩和手段を提案してあげるかすべきでしょう。
そのどちらもしないで、ただ「タバコを止めろ」とだけ訴えるのは、あまりに思いやりがなさすぎるのではないでしょうか。
職場のストレスが高いまま、それを緩和するタバコを取り上げられたら、どうなるか。高いストレスにさらされて、心か体を(あるいは両方を)病んでしまうかもしれない。職場の人間関係を悪化させてしまったり、仕事を続けられなくなったりするかもしれない。ストレス環境はそのままに、タバコだけを止めさせるというのは、かなり危険なことなのです。
だから僕は違和感を覚えたのです。看護婦さんの置かれた職場環境をいっさい考えずに禁煙を呼びかけるのは、喫煙の原因を見ようとせず、結果だけに注目しているようにしか思えなかった。現場の苦労を知りもしないくせに、「タバコは健康に悪いから止めましょう」というきれいごとを振りかざしているようにしか思えなかった。ストレス解消の手段であるタバコを看護婦さんから取り上げたら、ストレスが溜まりやすくなり、それがかえって彼女たちを不健康にしてしまうかもしれないのに、キャッチコピーを募集してる人たちは、そのことにまったく思い至っていない様子でした。
「猫を追い払う前に魚をどけよ」ということわざがあります。何度猫を追い払おうと、魚がある限り猫はやってくる。魚をどこかに隠さないと、根本的な解決にはならない。おおもとたる原因を見ないとダメだという意味ですが、まさにそれと同じですね。
あるいは、「幻想」があったのかもしれません。「ナース=白衣の天使」という、一種の固定観念。男性からの一方的な、多分に理想主義的で、いくらか性的な視線をともなった幻想。その幻想によって、「看護婦さんにはピュアであってほしい。タバコなんか吸ってほしくない」という身勝手な願望を押し付けようとした。そんな一面があったのかもしれません。
おそらく、キャッチコピーの応募は行われ、ポスターも作成されたはずです。ポスターは多くの病院に配られ、看護婦さんたちの目に触れたことでしょう。
看護婦さんは、どう思ったでしょう。たぶん、こう思ったはずです。
「タバコが健康に悪いだぁ?こっちゃそんなの百も承知で吸ってんだよ!それでも吸わなきゃやってらんねーから吸ってんだろーが!ウチらが日々どんなストレスにさらされてるか、ひとつもわかってねーヤツらがエラソーにタバコ止めろだと?何様のつもりだよ。知ったふうなツラしてっけど、お前がわかってるのはタバコのニコチン含有量だけだろ。現場の苦労を勉強しに来い!看護婦がどれだけストレス高いか、タバコ吸わなきゃとてもやってられない仕事だってことを一度体験してみろ!タバコがよくないってんなら、吸わなくても済むように現場のストレスを減らすのがスジだろーが!こんなくだらねーポスター作ってる暇とカネがあるなら、看護婦の職場環境改善のために動けよ!せめて人の神経逆なでするポスターだけは作るな!それとも何か?このポスター作ったヤツがストレス解消に殴らせてくれるのか?」
考えなしの善意というのは、往々にしてこういうものなのですね。望ましい結果をもたらすどころか、火に油を注いでしまう。
禁煙を呼びかけるポスターは、それなりの成果を上げたのでしょうか。看護婦さんの怒りを買っただけで終わってしまったのでしょうか。
あれから20年ほど経っています。看護婦(看護師)さんの喫煙率は、今も高いままなのでしょうか。
ほかにストレス解消の手段があればいいんですけどね。