関東では雪が積もっていたようですが、九州はわりと穏やかな気候が続いており、このまま春になってくれればいいと願わずにはいられないけれど、寒の戻りは避けられないであろうことは想像に難くなく、再び冬眠することも覚悟してはいるものの、「シャレになってないじゃん」的自粛が継続中の今日この頃、皆さんご機嫌いかがですか的なR-1グランプリの感想文です。
芸歴制限が撤廃されて2年目。最年長ファイナリストのチャンス大城を筆頭に、ベテラン多めとなった今大会。ベテランが長年の悲願を達成しそうな予感がしていたのですが・・・。
個別の感想は以下の通り。まずはファーストステージから。
ヒロ・オクムラ・・・大学時代の男友達3人で立ち上げたベンチャー企業の就職面接。面接に来たのが工学部の可愛い女の子だったため、会社の存続を考えて不採用にしようとする。
さながら「オタサーの姫」や「サークルクラッシャー」の会社版。いや、よくできていたと思いますけどね。演技もうまいし、本人以外の登場人物が3人というのも、多すぎずでちょうどいい。脳科学的に、人は同時に3つまでのものなら把握できるけど、4つ以上になると把握が難しくなるらしいんですね。だから、本人以外が4人以上だったら、ずっとわかりにくい話になっていたはずです。強いて短所を挙げるなら、先の展開が読めてしまうところでしょうか。「女の子をめぐって争ってしまいそう」と予告しておいて、実際そうなるのですから。
キワモノぞろいのSMAにあって、実に正統派のオクムラ。今後の活動に期待します。
チャンス大城・・・ハリウッド女優と照明のおじさんのラブロマンス。立場を越えた恋の物語がくり広げられる。
野田クリスタルが「ただ自分の特技を披露したいだけ」と指摘していた通り、オハコのモノマネなどのネタをねじ込むためのストーリー展開は、やや強引に思えました。でもそれが、ひとつひとつのバカバカしさを堪能するにはちょうどいいというか、「お笑いに意味なんかなくていい。メチャクチャでいい」と受け止めることができます。まさかこの舞台で地下芸人・ゆきおとこの話が出るとは。最後はまっくろくろすけを口から吐きながらのギター演奏。やりたい放題でしたね。
田津原理音・・・棚の組み立てを失敗し、取扱説明書を確認する男。読めば読むほど作り方がわからなくなっていく。
トレーディングカードと同じく、変形フリップネタですね。説明書によくある絵柄を模倣してあるのが心憎い。徐々に説明書の中で物語が展開していき、思わずのめり込んでしまいます。とにかく思いつくアイディアをたくさん書き出していって、そこから絞り込みを行った、厳選されたネタであることがうかがえました。
ハギノリザードマン・・・東京に移り住む息子との別れを惜しむ父親。息子と一緒によくやっていた遊びを再現する。
自分が得意とするモノマネやるための設定ですね。チャンスと比べてだいぶ自然です。全部レベルが高くて、安定感がある。大袈裟な箱に入ってるAmazonの商品、悲しい顔で表現するのが秀逸。おでこについたソースに哀愁を感じました。最後のTikTok、自分自身の宣伝にもなってて、ちょっとズル賢いですね。
ルシファー吉岡・・・友達と飲み屋で、「菅田将暉になりたいか」という話をする男。外見だけじゃダメなんじゃないかという持論を熱弁する。
雑談としては面白いし、言ってることの説得力もあるんだけど、「笑い」という点ではやや弱かったと思います。ラジオみたいな感覚で聴いてるぶんには心地よくて、ずーっとニヤニヤしちゃうんだけど、声を出して笑うまでには至らない、というかね。アパホテルの経営と、古民家カフェのたとえは秀逸。
ルシファーの脱・下ネタ路線、成功していると言えるのでしょうか。
吉住・・・婚活中の女性。たぶんマッチングサイトで知り合ったのであろう男性とデートをする。おしゃべりしながらの脳内会議が漏れ出てしまう。
吉住はファイナリスト発表の記者会見で、「仕事もあって順風満帆な人生だと思われているかもしれないが、そんなことはない。私は一度も恋人がいたことがないんだ」という意味の発言をしていましたが、その「こじらせ」をそのまま形にしたら、このようなネタになるのでしょうか。ひねくれ・偏見・毒舌がてんこ盛り。脳内の「積極的な自分」も「消極的な自分」も、性格の悪さはほぼ変わらず。3人で男のうさん臭さを追及する流れに。もっとプロファイリングで追い詰める展開になってたら、なおよかったかもしれません。最後に落語でオトすのは、必然性がまったくないのですが、でもそこがいい。
吉住に恋人ができたら、どうなるのでしょうか。精神的に満たされることで、毒気を失い、ネタがつまらなくなってしまわないでしょうか。だとしたら、このまま交際経験ゼロであり続けてほしい気もしますが、人の不幸を願うのはよくないし・・・。複雑ですね。
さや香 新山・・・挨拶も前置きもなく、いきなり話を切り出す新山。普段から思っていることを次々まくしたてる漫談。
共感を求めるという意味では、これも一種のあるあるネタなのでしょうか。勢いよくまくし立てたり、ピタッと止まって間を取ったり、緩急のつけ方、うまかったです。ですが、イマイチ共感を得ることができず、観客置いてけぼりになっていた感が否めません。「男の乳首いる」と主張し始めたので、下ネタに行くのかと思いましたが、そうはならず。なぜいるのか、その理由を言わないので、不発に終わってしまいました。打ち上げ花火に火がつかなかったみたいなかんじ。
ハリウッドザコシショウが、「センターマイクが置いてあるのに、なんでその前に立たないのか」って評してましたけど、これは、せっかくマイクが用意してあるのに使わないというボケでやってるんですよね。芸人でありながらその程度のこともわからないとか、ちょっと信じられません。
友田オレ・・・演歌歌手「かざまかずひこ」(漢字不明)が、唯一の持ち歌「辛い食べ物節」を歌う。
食べ物という普遍的なテーマだけに、共感を得やすい、という面があったと思います。特に、苦手な食べ物を無理に薦めてくるうっとうしさは、体験したことある人多いはずですしね。
友田本人ではなく、キャラを演じて歌うという点。いきなり歌うのではなく、受賞の挨拶をしてから歌った点。これらは余計な付け足しに思えるかもしれませんが、キャラクターの背景や、40年歌い続けてきたという歴史を含めて聴くことで、笑いに奥行きが出るのですね。いっさいリズムを取らない歌唱法、サビを歌い上げるときに右上を向くクセなど、細部の造形がよくできていました。
マツモトクラブ・・・日本語学校のネタ。教師がうんちくを交えつつ漢字を教えようとする。
いやー、生徒のセリフ、だいぶ詰め込みましたね。けっこう早口、かつカタコトの日本語なんで、聴き取りづらい箇所がありました。背後にBGMが流れていたのでなおさら。それから、生徒が全部で何人いたのか、最後までわかりませんでした。わからなくても楽しめるネタではありますが。セリフの聴き取りづらさに目をつむり、「教室の騒がしさ」「生徒の話を聞いてくれなさ」に振り回される教師の気苦労という視点で見るなら面白いかと。ダジャレは万国共通で、日本語覚えたての外国人にも笑ってもらえるってのは、日本語学校あるあるらしいです。
続きましてファイナルステージ。
田津原理音・・・「ぜんぜんええねんで」というくくりのあるあるネタ。引っかかるんだけど、いちいちとがめるほどではない日常の出来事を挙げていく。
1本目と打って変わって、実にシンプルなフリップネタ。1本目と比較して、少し物足りなさを感じてしまいます。面白いんですけど、1本目がよくできていただけに、どうしても工夫がないって思っちゃうんですよね。なぜこのシンプルフリップにしたのか。「確実に獲りにいく」ことを意識しすぎたのではないでしょうか。その結果、「冒険してない感」が出てしまった。そこが残念です。
いや、面白いのは面白いんですよ。きっと、もっといっぱい「ぜんぜんええねんで」があって、その中から特にウケがいいのを、絞り込んで持ってきてるはずですから。だからハズレがない。セリフの読み上げ方も、強弱のつけ方も、間の取り方もうまい。ただ、どうしても1本目と比べて「ちょっとな」って思っちゃう、ということです。
つまりはネタのチョイスミス。1本目と同じく変形フリップを持ってきていたら、2度目の優勝が現実となっていたかもしれません。
ハギノリザードマン・・・小学校の、生活の授業。日常にどんな人がいるのかを先生が紹介していく。
こちらも1本目と同じく、自分が得意とするモノマネのための設定。なんか見たことあるって(見たことなくても)思えるし、演技もうまい。99%の掃除は、小学生時代を思い出しました。2本とも安定して笑いを取っていた印象です。
かまいたちと同期のハギノ。これまでのキャリアで作り上げたネタを、厳選して持ってきたわけですから、面白いに決まってますよね。
友田オレ・・・法被姿の友田が、「ないないなないなない音頭」を歌う。様々な「ない」ことを挙げていく。
最初の2,3個聞いた時点で、「向こうは俺を~」という、関係性のアンバランスを言っていくネタであることがわかります。なので、ある程度オチが読めてしまう。ですが、読めても面白いんですね。これは音楽の力、音楽の気持ちよさのなせるワザなのでしょうか。「ないとぉ」の「とぉ」のところが特に気持ちいいんですよね。
こちらはキャラではなく、友田本人による歌唱。これは、キャラの背景による面白さを必要としない、というのもありますけど、自分を下げるネタなので、年配のかざまより、若い友田じゃないと受け止めにくいからですね。
ファイナルステージのネタ、3者ともあるあるネタでした。そして、田津原→ハギノ→友田の順に、見せ方の工夫、変形具合が上がっているのです。こうなると、どうしたってあとから出てくるほうが強く見えてしまう。ということは、はからずもですが、田津原はハギノの下地となり、ハギノは友田の下地となったのです。この偶然。組み合わせ順によって、友田の優勝は作り上げられたということです。いや、順番が違っていても優勝はしていたでしょうけど、3者の差がより明確になったのですね。そんな、運命のイタズラのごとき発表順となりました。
僕はM-1とキングオブコントの優勝予想はちょいちょい当たるんですけど、R-1は外すことが多くて、今回も大ハズレでした。いや、まさか友田がくるとは。
友田のネタ、観たことあるのは全部歌ネタなんですけど、歌ネタしかないんでしょうか。歌ネタ以外もあるならぜひ観てみたいです。そして、歌ネタしかないのであれば、その理由を訊いてみたいです。
芸歴3年目で、最年少優勝となった友田。大学のお笑いサークルで活動していて、そのままプロになったのですが、そこに「学生時代の活動も芸歴に含めるべきだ」って物言いつける人もいるんですよね。学生のときからお笑いやっててプロになったら、ゲタはいてスタートするようなもんじゃないかって。まあわからなくはないですけどね。
でもそれを言い出したら、友達とふざけたり、バカ話をしたりとかも、のちにお笑いに生きてくるわけで、保育園や小学校でふざけだしたその瞬間に芸歴が始まってた、ってことになっちゃうんじゃないでしょうか。だからプロになる前のことを言い出したらキリがないんですよ。気にするのはやめましょう。
友田の未来が明るいのは間違いないとして、準優勝のハギノも売れてほしいです。ハギノは現在、元スーパーニュウニュウの大将と、ベルナルドってコンビを組んでまして、そっちもどうなるか気になるところ。ハギノのほうは元々ローズヒップファニーファニーってコンビでした。スーパーニュウニュウとローズヒップファニーファニー、名前も似てれば芸風もそっくりだったんですよね。偶然なのか、なにかの運命なのか。
「準優勝のほうが売れる」というジンクスが今回も当てはまるかどうか。そこも注目です。
驚いたのは、さっくん(佐久間一行)が審査員になったこと。内気で、あまりテレビに出たがらないイメージあったし、審査とかも好きじゃなさそうって思ってたんですよね。いや、勝手なイメージですけども。しかし「千鳥のクセスゴ!」が終わった今、さっくんのネタ、どこで観ればいいのでしょうか。POWER!
あと、ちょいちょいカメラアングルが気になりました。ステージが低いのか、客席が高いのか、観客の頭が大きく映って、ステージが見えにくくなってるアングルがありましたので。そのへん、リハーサルで確認してなかったのでしょうか。
なんだかんだで23回も続いているR-1グランプリ。当面のあいだは終わることはないでしょう。フジテレビがどうにかならない限りは。
芸歴制限が撤廃されて2年目。最年長ファイナリストのチャンス大城を筆頭に、ベテラン多めとなった今大会。ベテランが長年の悲願を達成しそうな予感がしていたのですが・・・。
個別の感想は以下の通り。まずはファーストステージから。
ヒロ・オクムラ・・・大学時代の男友達3人で立ち上げたベンチャー企業の就職面接。面接に来たのが工学部の可愛い女の子だったため、会社の存続を考えて不採用にしようとする。
さながら「オタサーの姫」や「サークルクラッシャー」の会社版。いや、よくできていたと思いますけどね。演技もうまいし、本人以外の登場人物が3人というのも、多すぎずでちょうどいい。脳科学的に、人は同時に3つまでのものなら把握できるけど、4つ以上になると把握が難しくなるらしいんですね。だから、本人以外が4人以上だったら、ずっとわかりにくい話になっていたはずです。強いて短所を挙げるなら、先の展開が読めてしまうところでしょうか。「女の子をめぐって争ってしまいそう」と予告しておいて、実際そうなるのですから。
キワモノぞろいのSMAにあって、実に正統派のオクムラ。今後の活動に期待します。
チャンス大城・・・ハリウッド女優と照明のおじさんのラブロマンス。立場を越えた恋の物語がくり広げられる。
野田クリスタルが「ただ自分の特技を披露したいだけ」と指摘していた通り、オハコのモノマネなどのネタをねじ込むためのストーリー展開は、やや強引に思えました。でもそれが、ひとつひとつのバカバカしさを堪能するにはちょうどいいというか、「お笑いに意味なんかなくていい。メチャクチャでいい」と受け止めることができます。まさかこの舞台で地下芸人・ゆきおとこの話が出るとは。最後はまっくろくろすけを口から吐きながらのギター演奏。やりたい放題でしたね。
田津原理音・・・棚の組み立てを失敗し、取扱説明書を確認する男。読めば読むほど作り方がわからなくなっていく。
トレーディングカードと同じく、変形フリップネタですね。説明書によくある絵柄を模倣してあるのが心憎い。徐々に説明書の中で物語が展開していき、思わずのめり込んでしまいます。とにかく思いつくアイディアをたくさん書き出していって、そこから絞り込みを行った、厳選されたネタであることがうかがえました。
ハギノリザードマン・・・東京に移り住む息子との別れを惜しむ父親。息子と一緒によくやっていた遊びを再現する。
自分が得意とするモノマネやるための設定ですね。チャンスと比べてだいぶ自然です。全部レベルが高くて、安定感がある。大袈裟な箱に入ってるAmazonの商品、悲しい顔で表現するのが秀逸。おでこについたソースに哀愁を感じました。最後のTikTok、自分自身の宣伝にもなってて、ちょっとズル賢いですね。
ルシファー吉岡・・・友達と飲み屋で、「菅田将暉になりたいか」という話をする男。外見だけじゃダメなんじゃないかという持論を熱弁する。
雑談としては面白いし、言ってることの説得力もあるんだけど、「笑い」という点ではやや弱かったと思います。ラジオみたいな感覚で聴いてるぶんには心地よくて、ずーっとニヤニヤしちゃうんだけど、声を出して笑うまでには至らない、というかね。アパホテルの経営と、古民家カフェのたとえは秀逸。
ルシファーの脱・下ネタ路線、成功していると言えるのでしょうか。
吉住・・・婚活中の女性。たぶんマッチングサイトで知り合ったのであろう男性とデートをする。おしゃべりしながらの脳内会議が漏れ出てしまう。
吉住はファイナリスト発表の記者会見で、「仕事もあって順風満帆な人生だと思われているかもしれないが、そんなことはない。私は一度も恋人がいたことがないんだ」という意味の発言をしていましたが、その「こじらせ」をそのまま形にしたら、このようなネタになるのでしょうか。ひねくれ・偏見・毒舌がてんこ盛り。脳内の「積極的な自分」も「消極的な自分」も、性格の悪さはほぼ変わらず。3人で男のうさん臭さを追及する流れに。もっとプロファイリングで追い詰める展開になってたら、なおよかったかもしれません。最後に落語でオトすのは、必然性がまったくないのですが、でもそこがいい。
吉住に恋人ができたら、どうなるのでしょうか。精神的に満たされることで、毒気を失い、ネタがつまらなくなってしまわないでしょうか。だとしたら、このまま交際経験ゼロであり続けてほしい気もしますが、人の不幸を願うのはよくないし・・・。複雑ですね。
さや香 新山・・・挨拶も前置きもなく、いきなり話を切り出す新山。普段から思っていることを次々まくしたてる漫談。
共感を求めるという意味では、これも一種のあるあるネタなのでしょうか。勢いよくまくし立てたり、ピタッと止まって間を取ったり、緩急のつけ方、うまかったです。ですが、イマイチ共感を得ることができず、観客置いてけぼりになっていた感が否めません。「男の乳首いる」と主張し始めたので、下ネタに行くのかと思いましたが、そうはならず。なぜいるのか、その理由を言わないので、不発に終わってしまいました。打ち上げ花火に火がつかなかったみたいなかんじ。
ハリウッドザコシショウが、「センターマイクが置いてあるのに、なんでその前に立たないのか」って評してましたけど、これは、せっかくマイクが用意してあるのに使わないというボケでやってるんですよね。芸人でありながらその程度のこともわからないとか、ちょっと信じられません。
友田オレ・・・演歌歌手「かざまかずひこ」(漢字不明)が、唯一の持ち歌「辛い食べ物節」を歌う。
食べ物という普遍的なテーマだけに、共感を得やすい、という面があったと思います。特に、苦手な食べ物を無理に薦めてくるうっとうしさは、体験したことある人多いはずですしね。
友田本人ではなく、キャラを演じて歌うという点。いきなり歌うのではなく、受賞の挨拶をしてから歌った点。これらは余計な付け足しに思えるかもしれませんが、キャラクターの背景や、40年歌い続けてきたという歴史を含めて聴くことで、笑いに奥行きが出るのですね。いっさいリズムを取らない歌唱法、サビを歌い上げるときに右上を向くクセなど、細部の造形がよくできていました。
マツモトクラブ・・・日本語学校のネタ。教師がうんちくを交えつつ漢字を教えようとする。
いやー、生徒のセリフ、だいぶ詰め込みましたね。けっこう早口、かつカタコトの日本語なんで、聴き取りづらい箇所がありました。背後にBGMが流れていたのでなおさら。それから、生徒が全部で何人いたのか、最後までわかりませんでした。わからなくても楽しめるネタではありますが。セリフの聴き取りづらさに目をつむり、「教室の騒がしさ」「生徒の話を聞いてくれなさ」に振り回される教師の気苦労という視点で見るなら面白いかと。ダジャレは万国共通で、日本語覚えたての外国人にも笑ってもらえるってのは、日本語学校あるあるらしいです。
続きましてファイナルステージ。
田津原理音・・・「ぜんぜんええねんで」というくくりのあるあるネタ。引っかかるんだけど、いちいちとがめるほどではない日常の出来事を挙げていく。
1本目と打って変わって、実にシンプルなフリップネタ。1本目と比較して、少し物足りなさを感じてしまいます。面白いんですけど、1本目がよくできていただけに、どうしても工夫がないって思っちゃうんですよね。なぜこのシンプルフリップにしたのか。「確実に獲りにいく」ことを意識しすぎたのではないでしょうか。その結果、「冒険してない感」が出てしまった。そこが残念です。
いや、面白いのは面白いんですよ。きっと、もっといっぱい「ぜんぜんええねんで」があって、その中から特にウケがいいのを、絞り込んで持ってきてるはずですから。だからハズレがない。セリフの読み上げ方も、強弱のつけ方も、間の取り方もうまい。ただ、どうしても1本目と比べて「ちょっとな」って思っちゃう、ということです。
つまりはネタのチョイスミス。1本目と同じく変形フリップを持ってきていたら、2度目の優勝が現実となっていたかもしれません。
ハギノリザードマン・・・小学校の、生活の授業。日常にどんな人がいるのかを先生が紹介していく。
こちらも1本目と同じく、自分が得意とするモノマネのための設定。なんか見たことあるって(見たことなくても)思えるし、演技もうまい。99%の掃除は、小学生時代を思い出しました。2本とも安定して笑いを取っていた印象です。
かまいたちと同期のハギノ。これまでのキャリアで作り上げたネタを、厳選して持ってきたわけですから、面白いに決まってますよね。
友田オレ・・・法被姿の友田が、「ないないなないなない音頭」を歌う。様々な「ない」ことを挙げていく。
最初の2,3個聞いた時点で、「向こうは俺を~」という、関係性のアンバランスを言っていくネタであることがわかります。なので、ある程度オチが読めてしまう。ですが、読めても面白いんですね。これは音楽の力、音楽の気持ちよさのなせるワザなのでしょうか。「ないとぉ」の「とぉ」のところが特に気持ちいいんですよね。
こちらはキャラではなく、友田本人による歌唱。これは、キャラの背景による面白さを必要としない、というのもありますけど、自分を下げるネタなので、年配のかざまより、若い友田じゃないと受け止めにくいからですね。
ファイナルステージのネタ、3者ともあるあるネタでした。そして、田津原→ハギノ→友田の順に、見せ方の工夫、変形具合が上がっているのです。こうなると、どうしたってあとから出てくるほうが強く見えてしまう。ということは、はからずもですが、田津原はハギノの下地となり、ハギノは友田の下地となったのです。この偶然。組み合わせ順によって、友田の優勝は作り上げられたということです。いや、順番が違っていても優勝はしていたでしょうけど、3者の差がより明確になったのですね。そんな、運命のイタズラのごとき発表順となりました。
僕はM-1とキングオブコントの優勝予想はちょいちょい当たるんですけど、R-1は外すことが多くて、今回も大ハズレでした。いや、まさか友田がくるとは。
友田のネタ、観たことあるのは全部歌ネタなんですけど、歌ネタしかないんでしょうか。歌ネタ以外もあるならぜひ観てみたいです。そして、歌ネタしかないのであれば、その理由を訊いてみたいです。
芸歴3年目で、最年少優勝となった友田。大学のお笑いサークルで活動していて、そのままプロになったのですが、そこに「学生時代の活動も芸歴に含めるべきだ」って物言いつける人もいるんですよね。学生のときからお笑いやっててプロになったら、ゲタはいてスタートするようなもんじゃないかって。まあわからなくはないですけどね。
でもそれを言い出したら、友達とふざけたり、バカ話をしたりとかも、のちにお笑いに生きてくるわけで、保育園や小学校でふざけだしたその瞬間に芸歴が始まってた、ってことになっちゃうんじゃないでしょうか。だからプロになる前のことを言い出したらキリがないんですよ。気にするのはやめましょう。
友田の未来が明るいのは間違いないとして、準優勝のハギノも売れてほしいです。ハギノは現在、元スーパーニュウニュウの大将と、ベルナルドってコンビを組んでまして、そっちもどうなるか気になるところ。ハギノのほうは元々ローズヒップファニーファニーってコンビでした。スーパーニュウニュウとローズヒップファニーファニー、名前も似てれば芸風もそっくりだったんですよね。偶然なのか、なにかの運命なのか。
「準優勝のほうが売れる」というジンクスが今回も当てはまるかどうか。そこも注目です。
驚いたのは、さっくん(佐久間一行)が審査員になったこと。内気で、あまりテレビに出たがらないイメージあったし、審査とかも好きじゃなさそうって思ってたんですよね。いや、勝手なイメージですけども。しかし「千鳥のクセスゴ!」が終わった今、さっくんのネタ、どこで観ればいいのでしょうか。POWER!
あと、ちょいちょいカメラアングルが気になりました。ステージが低いのか、客席が高いのか、観客の頭が大きく映って、ステージが見えにくくなってるアングルがありましたので。そのへん、リハーサルで確認してなかったのでしょうか。
なんだかんだで23回も続いているR-1グランプリ。当面のあいだは終わることはないでしょう。フジテレビがどうにかならない限りは。