真夏日が連続した猛暑も緩み、すっかり短くなった秋の訪れを感じるも、日中はまだ夏を思わせる気温になることもあり、寒暖差が体にこたえてしまう今日この頃、ジャングルポケットは今後2人体制でエントリーするのかどうかが気にかかる、キングオブコントの感想をお届けします。
年々感想文の公開が遅くなってますが、今回は特に遅めになっちゃいましたね。まあオレにもいろいろあんだよ!
前回の優勝予想の記事で、「今回はお笑いの日との同日開催ではないらしい」と書きましたが、KOCの公式サイトでその発表がなかっただけで、実際は同日開催でした。すみません。
去年の「お笑いの日」では、まつもときんに君が、総出演者126人に触れ、「ホンマは127人だったんです。フジモンが来なくなっちゃったんで」と言ってましたが、なんの因果か、今年はそのきんに君が来られず。KOCの審査員は、きんに君の代わりにシソンヌのじろうが選出。きんに君が復帰したら外されるのでしょうか。そんな「じろうの行く末」が気にかかる大会となりました。
個別の評価は以下の通り。まずはファーストステージから。
ロングコートダディ・・・彼女に花束を買うため花屋に来た男。「センスがない」と言っておきながら、店員さんが作る花束に片っ端からケチをつけていく。
シンプルな構成ですよね。日常の延長というか、実際にあってもおかしくない話。東京03の飯塚が絶賛してましたが、やっぱこういうのが好きなんだなーって思いました。僕はなんか、面白さよりも、兎の小憎らしさに腹立つ感じが上回ってしまいましたし、味付け薄めが物足りなかったです。
花言葉でイヤミを伝える展開はよかったですけど、もっとあり得ない花言葉にしてもよかったかもしれません。「肉団子サラリーマン」はコンプラOK?いや、これがダメだと言いたいのではありめせん。昨今の表現の規制、ちょっと行き過ぎてると思ってますしね。「あ、これはいいんだ」と思った、ということです。
「すごくシンプルな話だなー」と思ってたら最後に劇的な展開。命を救われるも、「まだマイナスです」。そうこなくっちゃ!と思いました。
去年のカゲヤマと同様、トップバッターで高得点を叩き出し、平均得点を大きく引き上げました。
ダンビラムーチョ・・・お祭りの舞台で「富安4発太鼓」という伝統芸能(?)が披露される。それは曲中4発しか太鼓を叩かないという奇妙な芸能だった。
まずはその設定の面白さがあります。「4発しか叩かない」とあらかじめ宣言するから、ワクワクしながら見守ることになるわけです。しかしこれだと、面白いパターンって限られてきますよね。早めに4発叩いてしまうパターン、終わる直前にあわてて4発叩くパターン、フチだけ叩くパターン。あまりパターンがないから、見物客に叩かせる展開になったわけです。
かまいたちの山内が、「音響さんに強く言いそうな腕時計してる」という細部に気づいたのは鋭い。4発太鼓の起源の説明と、懐にりんご飴をしまうところ、やり方次第でもっと笑い取れるのではと思いました。
大原優一はお祭りおじさんのキャラがよく似合いますね。登場しただけで笑いが起きていました。
シティホテル3号室・・・通販番組のネタ。ゲストのタレントが唐突に、限界を超えた値下げを社長に要求する。社長はしぶしぶ値下げに応じるも、すべては台本通りだった。
たしかに、ガチと思いきやヤラセだった、というのは意表を突かれましたが、こういう手法で意表を突くというのはわりと簡単にできることです。もっとその先を観たかった、というのが正直なところ。ケンカのアクションは上手いし、タレントの好感度を犠牲に売り上げ伸ばす手口のえげつなさは笑えます。ネタ終わりのタイミングが不自然な気がしました。3品目まで観たかったです。
や団・・・工場の休憩室での従業員のやり取り。本間の財布から一万円札がなくなっていることが発覚し、犯人捜しが始まる。正義感が強すぎる伊藤は、過剰な手口で中嶋を取り調べていく。
バカバカしさの極致というか、これぞコント、これぞお笑いという、安心してみられるネタですね。大好きです。
なぜか肛門に二千円札入れてる、わけのわからなさ。パンツが色違いなのは、のちの「男はユニクロで買いがち」という指摘で説明がつきましたが、二千円札は謎のまま。「説明がつく笑い」も、「説明がつかない笑い」も、両方あっていいんですよね。要はそのバランスをどうするかで、説明がつかない笑いばかりだと、付いていけなくなっちゃったりするし、説明がつく笑いだけだと、計算しすぎで堅苦しさを感じかねない。や団のこのネタはそのバランスがいいと思いました。
ただ、肛門に入れた指でビンタされたところ、「くせえ」のひとことは言わないほうがよかったですね。あそこはセリフではなく、表情だけで伝えたほうが笑えたはずです。説明過剰、ツッコミ過剰はよくない。
テーブルに中嶋を押さえつける瞬間、審査員のじろうを映していて、大事な笑いどころを撮り逃がしてしまいました。以前もカメラのスイッチング問題に触れたことありましたけど、ネタ中は無理に審査員の笑い顔撮ろうとしなくていいんじゃないでしょうか。そのへんもっと考えてほしいです。
コットン・・・自作の人形劇で遊ぶ子供と、それを見守る、偶然その場に居合わせたおじさん。その人形劇は、子供らしからぬ恋愛ドラマだった。
このネタ持ってきたのはけっこうなバクチでしたね。コントの中で人形劇を行う、しかも西村ひとりでやるというのは、コントの意義を疑問にふしてしまいます。そうすることで、西村ひとりにしか注目がいかなくなるからです。いや、劇に入り込めば、人形だけに注意が向けられてしまう。そうなると、「コントであること」の意義がわからなくなってしまうのです。最後にきょんが劇に介入してきましたが、もっと早く、中盤に入ってきて、2人のかけ合いが行われていれば・・・。恋愛劇も、よく観ればベタなストーリーですしね。人形の動きの細かさ、細部のこだわりはよかったです。
ニッポンの社長・・・野球部のネタ。監督が新一年生の素質をチェックする。一年生は、実力はあるが極端に声が小さかった。
なんか、ドリフターズがやってたようなコントですね。容赦のない暴力でバットやベンチが叩き壊されていく。「破壊」の痛快さがビシビシ伝わってきます。終盤の畳みかけがまた気持ちいい。その破壊の気持ちよさに、思わず「何言ってんの?」って訊きたくなる、聞こえるか聞こえないかくらいの小声の面白さが並走します。
メディアから暴力がどんどん排除されつつある昨今だからこそ、ドリフの時代より笑えるようになってきているのかもしれません。一方的にやられまくるのは、ケツのキャラクターによく合っていますね。声が小さい理由が不明なのも面白い。
ヒザを痛めて「無理すな」のところ、ややウケになっちゃって残念でしたね。もっと間が違っていたら大きな笑いになってたはずです。
ファイヤーサンダー・・・「毒舌散歩」という番組(有吉の「正直さんぽ」のオマージュ?)を始めたお笑い芸人。出会った人々を毒舌でイジる、という内容。その芸人のもとに警察官が訪ねてくる。彼の毒舌は、犯罪者を見抜く隠れた力を持っていた。
いやー、やっぱ面白い。この無自覚プロファイリングとでもいうべき能力設定だけでワクワクしてきます。「君は知りすぎた」の意味合いで「君は喩えすぎた」と言うところがツボ。「警察は表の顔で、実は裏の組織の工作員」というのは、サスペンス的どんでん返しとしてはありがちなので評価できませんが、これはあくまでストーリー展開のための設定ということで。まとまりがよく、完成度の高いネタでした。個人的に今大会で一番。
あと、ネタと関係ないんですけど、こてつは銃を持ったままMC席に来るなら、浜ちゃんに「お借りしてた銃、ありがとうございました」って手渡せばひと笑い作れたんじゃないかって、余計なこと考えちゃいました。
cacao・・・部員が2人だけの野球部のネタ。グラウンドが使えないから部室で練習をしようとする。
動きが素早い、というだけで単純に面白い。「部屋練」という独自のジャンルを極めた強さというか、「室内なら最強」と思わせてくれるわけですが、本来目指していた野球とズレてしまっていることに気づいていない、憐れさからくるおかしみもあります。あと、監督も一緒に練習する中で、上下関係がなくなっていってる面白さも。これだけの動きを仕上げてくるのは大変だったでしょうけど、効果音当ててる裏方さんのほうが大変なのかもしれません。暗転が妙に長くなかったですか?
それから高橋と浦田スターク、顔そっくりなんだから、せめて髪型だけでも差別化してくれ!5年目に怒られる浜ちゃんが微笑ましい。
隣人・・・自宅でチンパンジーの太郎くんを飼っているおじいちゃん。太郎くんはパソコンの読み上げ機能も使いこなせる天才。仲良く暮らしていたが、おじいちゃんは動物園に太郎を引き取ってもらおうとする。「自分の歳を考えて、先立つ前に」と説明していたが、実は太郎の成長を恐れていた。
去年のKOCを観ていた人は、冒頭で「またチンパンジーかい!」とツッコミを入れてしまいます。1年越しの天丼?ちょっと卑怯な気がしなくもないです。
太郎が「今すぐ出ていくかんじですか」と言ったとき、細かいニュアンスを言っていくパートに入ったと思いました。しかしそうはならず、なんか肩透かし。もっと「チンパンジーがこんな言い回しすんの」って発言が聞きたかったです。あと、チンパンジーが人間らしいことをするって、それだけでもう面白いじゃないですか。だから「人間らしい」だけにとどまらず、もうひとひねりが必要だったかもしれません。
ラブレターズ・・・引きこもりの息子を見守る夫婦。息子は2年間外に出てないと思っていたが、外出の痕跡が次々見つかりだす。
悲しくて、やるせなくて、やがて面白き哀愁コント。「少年時代」はいい曲だ。どんぐりという道具立てを持ってきたのはなかなか絶妙で、個数の面白さとか、散らばる面白さなんかを演出できるわけですね。息子本人は登場しないことで、断片的な情報からいろいろ想像させる面白さもあります。父親は最初、家庭のことはほったらかしで、息子にも冷淡なように見えますが、向き合うのが怖かっただけで、本当は強い愛情があったことがわかってきます。
袋入りどんぐりをぶちまける演出、うまくいきましたね。これが失敗して変な感じになってたら、優勝はなかったかもしれません。どんぐりを回収しきれず、ファイナルステージの舞台に出てきたら面白かったのに、なんて思っちゃいました。
続きましてファイナルステージ。
ラブレターズ・・・海を見に来た女と、その女をナンパする外国人の男。女は実はジュビロ磐田の熱狂的ファンで、男は実は釣り人だった。
女は占い師に「坊主にすれば優勝できる」と言われたが、それは逆効果になってしまった。なのに、バリカンで刈るのを止めることができない。これ、ギャンブラーがいくら負けてもお金つっこみ続ける心理と似ていて、悲しくて笑えます。いつの間にか丸刈りは、呪いの儀式へと変形していた。
「なんてカオスな設定」(山内)、「わけわからない」(ロバート秋山)、「釣りの要素いるのか」(じろう)、「どこに向かって行ってるのか」(バイきんぐ小峠)、「ストーリーがもうちょっとあったほうがいい」(飯塚)など、審査員を困惑させたネタでしたが、でもお笑いなんて、そんなもんでいいんですよね。「よくわかんないけど、なんか面白かった」って。計算された完成度の高いコントを、「これでもくらえ」と吹き飛ばすようなネタでした。
少数精鋭のASH&Dから、初のKOCチャンピオン。本当におめでとう。ザ・ギースも獲ってくれー!
ロングコートダディ・・・ファンタジー設定。岩壁に封印されたウィザードという人外に死の呪いを解いてもらうため、アグリの涙という宝物を持ってきた男。宝物の置き場を間違えていたのだが、ウィザードの言葉がわからないため、正解にたどり着けない。
面白さは申し分なしです。ですがこれ、兎も少しは動くとはいえ、ピンでもできちゃう構成。これをどう評価するか。コットンもそうでしたけど、採点判断が難しかったと思います。笑いと構成、どちらに比重を置くか。「2人でやってるのにかけ合いがなかった」という点を重視するなら、どうしても点数低めになっちゃいます。単純に「面白さだけ」で評価されてたら、間違いなく優勝していたでしょう。
人間の言葉と全然違うのに、「やめて」が「ウグォケ」で、「動け」と応援しているみたいになっちゃうところが秀逸。一番よかったです。
セクシーピースは流行るのだろうか。
ファイヤーサンダー・・・甲子園出場を真剣に目指す野球部員と、それをバカにする不良。不良は、「もしお前らが甲子園行ったら、全裸でフルマラソンしてやる」と言い放つ。
話が進むにつれ、不良はバカにするフリをして後押ししようとしていたことがわかる胸熱展開。隠れた友情を感じさせ、感動は徐々に高まっていきます。しかし、感動が笑いを上回ってしまったのかもしれません。そうなると、いい話ではあったとしても、コントとしての評価は落ちてしまいます。
不良が練習に打ち込んだり、サングラス替えたりといった、変化の描写が実にうまい。個人的には、甲子園行けたかどうかまで見届けたかった気がします。
心情的に一番応援していたラブレターズが優勝し、優勝予想で推していたファイヤーサンダーが3位。満足度の高い結果となりました。
去年もそうだったと記憶してますが、今大会はトップバッターのロングコートダディが高得点を出したこともあり、審査員得点、全組80点代はなし。こうなってくると、0~89点の存在意義がわからなくなってきますね。10点満点にしても同じことのように思えてきます。
得点差が少ないことにも表れてますが、今回は頭ひとつ出たネタ、爆発したネタというのはなく、平均レベルちょい高めのネタがそろいました。
賞レースではたまにネタかぶりが起きますが、今回は野球部ネタが3本。最近野球ネタが流行っているのか、単なる偶然か。
今年の浜ちゃんは、コメント2周強要などしていましたが、年々KOCにおける立ち居振る舞いが自由奔放になっていってますね。それもまた、ひとつの名物ということでいいと思います。でも今年の結果発表は抑えめで、そこは全力でやってくれよと思いました。
そして、今年もバイきんぐの西村はいらなかった。
年々感想文の公開が遅くなってますが、今回は特に遅めになっちゃいましたね。まあオレにもいろいろあんだよ!
前回の優勝予想の記事で、「今回はお笑いの日との同日開催ではないらしい」と書きましたが、KOCの公式サイトでその発表がなかっただけで、実際は同日開催でした。すみません。
去年の「お笑いの日」では、まつもときんに君が、総出演者126人に触れ、「ホンマは127人だったんです。フジモンが来なくなっちゃったんで」と言ってましたが、なんの因果か、今年はそのきんに君が来られず。KOCの審査員は、きんに君の代わりにシソンヌのじろうが選出。きんに君が復帰したら外されるのでしょうか。そんな「じろうの行く末」が気にかかる大会となりました。
個別の評価は以下の通り。まずはファーストステージから。
ロングコートダディ・・・彼女に花束を買うため花屋に来た男。「センスがない」と言っておきながら、店員さんが作る花束に片っ端からケチをつけていく。
シンプルな構成ですよね。日常の延長というか、実際にあってもおかしくない話。東京03の飯塚が絶賛してましたが、やっぱこういうのが好きなんだなーって思いました。僕はなんか、面白さよりも、兎の小憎らしさに腹立つ感じが上回ってしまいましたし、味付け薄めが物足りなかったです。
花言葉でイヤミを伝える展開はよかったですけど、もっとあり得ない花言葉にしてもよかったかもしれません。「肉団子サラリーマン」はコンプラOK?いや、これがダメだと言いたいのではありめせん。昨今の表現の規制、ちょっと行き過ぎてると思ってますしね。「あ、これはいいんだ」と思った、ということです。
「すごくシンプルな話だなー」と思ってたら最後に劇的な展開。命を救われるも、「まだマイナスです」。そうこなくっちゃ!と思いました。
去年のカゲヤマと同様、トップバッターで高得点を叩き出し、平均得点を大きく引き上げました。
ダンビラムーチョ・・・お祭りの舞台で「富安4発太鼓」という伝統芸能(?)が披露される。それは曲中4発しか太鼓を叩かないという奇妙な芸能だった。
まずはその設定の面白さがあります。「4発しか叩かない」とあらかじめ宣言するから、ワクワクしながら見守ることになるわけです。しかしこれだと、面白いパターンって限られてきますよね。早めに4発叩いてしまうパターン、終わる直前にあわてて4発叩くパターン、フチだけ叩くパターン。あまりパターンがないから、見物客に叩かせる展開になったわけです。
かまいたちの山内が、「音響さんに強く言いそうな腕時計してる」という細部に気づいたのは鋭い。4発太鼓の起源の説明と、懐にりんご飴をしまうところ、やり方次第でもっと笑い取れるのではと思いました。
大原優一はお祭りおじさんのキャラがよく似合いますね。登場しただけで笑いが起きていました。
シティホテル3号室・・・通販番組のネタ。ゲストのタレントが唐突に、限界を超えた値下げを社長に要求する。社長はしぶしぶ値下げに応じるも、すべては台本通りだった。
たしかに、ガチと思いきやヤラセだった、というのは意表を突かれましたが、こういう手法で意表を突くというのはわりと簡単にできることです。もっとその先を観たかった、というのが正直なところ。ケンカのアクションは上手いし、タレントの好感度を犠牲に売り上げ伸ばす手口のえげつなさは笑えます。ネタ終わりのタイミングが不自然な気がしました。3品目まで観たかったです。
や団・・・工場の休憩室での従業員のやり取り。本間の財布から一万円札がなくなっていることが発覚し、犯人捜しが始まる。正義感が強すぎる伊藤は、過剰な手口で中嶋を取り調べていく。
バカバカしさの極致というか、これぞコント、これぞお笑いという、安心してみられるネタですね。大好きです。
なぜか肛門に二千円札入れてる、わけのわからなさ。パンツが色違いなのは、のちの「男はユニクロで買いがち」という指摘で説明がつきましたが、二千円札は謎のまま。「説明がつく笑い」も、「説明がつかない笑い」も、両方あっていいんですよね。要はそのバランスをどうするかで、説明がつかない笑いばかりだと、付いていけなくなっちゃったりするし、説明がつく笑いだけだと、計算しすぎで堅苦しさを感じかねない。や団のこのネタはそのバランスがいいと思いました。
ただ、肛門に入れた指でビンタされたところ、「くせえ」のひとことは言わないほうがよかったですね。あそこはセリフではなく、表情だけで伝えたほうが笑えたはずです。説明過剰、ツッコミ過剰はよくない。
テーブルに中嶋を押さえつける瞬間、審査員のじろうを映していて、大事な笑いどころを撮り逃がしてしまいました。以前もカメラのスイッチング問題に触れたことありましたけど、ネタ中は無理に審査員の笑い顔撮ろうとしなくていいんじゃないでしょうか。そのへんもっと考えてほしいです。
コットン・・・自作の人形劇で遊ぶ子供と、それを見守る、偶然その場に居合わせたおじさん。その人形劇は、子供らしからぬ恋愛ドラマだった。
このネタ持ってきたのはけっこうなバクチでしたね。コントの中で人形劇を行う、しかも西村ひとりでやるというのは、コントの意義を疑問にふしてしまいます。そうすることで、西村ひとりにしか注目がいかなくなるからです。いや、劇に入り込めば、人形だけに注意が向けられてしまう。そうなると、「コントであること」の意義がわからなくなってしまうのです。最後にきょんが劇に介入してきましたが、もっと早く、中盤に入ってきて、2人のかけ合いが行われていれば・・・。恋愛劇も、よく観ればベタなストーリーですしね。人形の動きの細かさ、細部のこだわりはよかったです。
ニッポンの社長・・・野球部のネタ。監督が新一年生の素質をチェックする。一年生は、実力はあるが極端に声が小さかった。
なんか、ドリフターズがやってたようなコントですね。容赦のない暴力でバットやベンチが叩き壊されていく。「破壊」の痛快さがビシビシ伝わってきます。終盤の畳みかけがまた気持ちいい。その破壊の気持ちよさに、思わず「何言ってんの?」って訊きたくなる、聞こえるか聞こえないかくらいの小声の面白さが並走します。
メディアから暴力がどんどん排除されつつある昨今だからこそ、ドリフの時代より笑えるようになってきているのかもしれません。一方的にやられまくるのは、ケツのキャラクターによく合っていますね。声が小さい理由が不明なのも面白い。
ヒザを痛めて「無理すな」のところ、ややウケになっちゃって残念でしたね。もっと間が違っていたら大きな笑いになってたはずです。
ファイヤーサンダー・・・「毒舌散歩」という番組(有吉の「正直さんぽ」のオマージュ?)を始めたお笑い芸人。出会った人々を毒舌でイジる、という内容。その芸人のもとに警察官が訪ねてくる。彼の毒舌は、犯罪者を見抜く隠れた力を持っていた。
いやー、やっぱ面白い。この無自覚プロファイリングとでもいうべき能力設定だけでワクワクしてきます。「君は知りすぎた」の意味合いで「君は喩えすぎた」と言うところがツボ。「警察は表の顔で、実は裏の組織の工作員」というのは、サスペンス的どんでん返しとしてはありがちなので評価できませんが、これはあくまでストーリー展開のための設定ということで。まとまりがよく、完成度の高いネタでした。個人的に今大会で一番。
あと、ネタと関係ないんですけど、こてつは銃を持ったままMC席に来るなら、浜ちゃんに「お借りしてた銃、ありがとうございました」って手渡せばひと笑い作れたんじゃないかって、余計なこと考えちゃいました。
cacao・・・部員が2人だけの野球部のネタ。グラウンドが使えないから部室で練習をしようとする。
動きが素早い、というだけで単純に面白い。「部屋練」という独自のジャンルを極めた強さというか、「室内なら最強」と思わせてくれるわけですが、本来目指していた野球とズレてしまっていることに気づいていない、憐れさからくるおかしみもあります。あと、監督も一緒に練習する中で、上下関係がなくなっていってる面白さも。これだけの動きを仕上げてくるのは大変だったでしょうけど、効果音当ててる裏方さんのほうが大変なのかもしれません。暗転が妙に長くなかったですか?
それから高橋と浦田スターク、顔そっくりなんだから、せめて髪型だけでも差別化してくれ!5年目に怒られる浜ちゃんが微笑ましい。
隣人・・・自宅でチンパンジーの太郎くんを飼っているおじいちゃん。太郎くんはパソコンの読み上げ機能も使いこなせる天才。仲良く暮らしていたが、おじいちゃんは動物園に太郎を引き取ってもらおうとする。「自分の歳を考えて、先立つ前に」と説明していたが、実は太郎の成長を恐れていた。
去年のKOCを観ていた人は、冒頭で「またチンパンジーかい!」とツッコミを入れてしまいます。1年越しの天丼?ちょっと卑怯な気がしなくもないです。
太郎が「今すぐ出ていくかんじですか」と言ったとき、細かいニュアンスを言っていくパートに入ったと思いました。しかしそうはならず、なんか肩透かし。もっと「チンパンジーがこんな言い回しすんの」って発言が聞きたかったです。あと、チンパンジーが人間らしいことをするって、それだけでもう面白いじゃないですか。だから「人間らしい」だけにとどまらず、もうひとひねりが必要だったかもしれません。
ラブレターズ・・・引きこもりの息子を見守る夫婦。息子は2年間外に出てないと思っていたが、外出の痕跡が次々見つかりだす。
悲しくて、やるせなくて、やがて面白き哀愁コント。「少年時代」はいい曲だ。どんぐりという道具立てを持ってきたのはなかなか絶妙で、個数の面白さとか、散らばる面白さなんかを演出できるわけですね。息子本人は登場しないことで、断片的な情報からいろいろ想像させる面白さもあります。父親は最初、家庭のことはほったらかしで、息子にも冷淡なように見えますが、向き合うのが怖かっただけで、本当は強い愛情があったことがわかってきます。
袋入りどんぐりをぶちまける演出、うまくいきましたね。これが失敗して変な感じになってたら、優勝はなかったかもしれません。どんぐりを回収しきれず、ファイナルステージの舞台に出てきたら面白かったのに、なんて思っちゃいました。
続きましてファイナルステージ。
ラブレターズ・・・海を見に来た女と、その女をナンパする外国人の男。女は実はジュビロ磐田の熱狂的ファンで、男は実は釣り人だった。
女は占い師に「坊主にすれば優勝できる」と言われたが、それは逆効果になってしまった。なのに、バリカンで刈るのを止めることができない。これ、ギャンブラーがいくら負けてもお金つっこみ続ける心理と似ていて、悲しくて笑えます。いつの間にか丸刈りは、呪いの儀式へと変形していた。
「なんてカオスな設定」(山内)、「わけわからない」(ロバート秋山)、「釣りの要素いるのか」(じろう)、「どこに向かって行ってるのか」(バイきんぐ小峠)、「ストーリーがもうちょっとあったほうがいい」(飯塚)など、審査員を困惑させたネタでしたが、でもお笑いなんて、そんなもんでいいんですよね。「よくわかんないけど、なんか面白かった」って。計算された完成度の高いコントを、「これでもくらえ」と吹き飛ばすようなネタでした。
少数精鋭のASH&Dから、初のKOCチャンピオン。本当におめでとう。ザ・ギースも獲ってくれー!
ロングコートダディ・・・ファンタジー設定。岩壁に封印されたウィザードという人外に死の呪いを解いてもらうため、アグリの涙という宝物を持ってきた男。宝物の置き場を間違えていたのだが、ウィザードの言葉がわからないため、正解にたどり着けない。
面白さは申し分なしです。ですがこれ、兎も少しは動くとはいえ、ピンでもできちゃう構成。これをどう評価するか。コットンもそうでしたけど、採点判断が難しかったと思います。笑いと構成、どちらに比重を置くか。「2人でやってるのにかけ合いがなかった」という点を重視するなら、どうしても点数低めになっちゃいます。単純に「面白さだけ」で評価されてたら、間違いなく優勝していたでしょう。
人間の言葉と全然違うのに、「やめて」が「ウグォケ」で、「動け」と応援しているみたいになっちゃうところが秀逸。一番よかったです。
セクシーピースは流行るのだろうか。
ファイヤーサンダー・・・甲子園出場を真剣に目指す野球部員と、それをバカにする不良。不良は、「もしお前らが甲子園行ったら、全裸でフルマラソンしてやる」と言い放つ。
話が進むにつれ、不良はバカにするフリをして後押ししようとしていたことがわかる胸熱展開。隠れた友情を感じさせ、感動は徐々に高まっていきます。しかし、感動が笑いを上回ってしまったのかもしれません。そうなると、いい話ではあったとしても、コントとしての評価は落ちてしまいます。
不良が練習に打ち込んだり、サングラス替えたりといった、変化の描写が実にうまい。個人的には、甲子園行けたかどうかまで見届けたかった気がします。
心情的に一番応援していたラブレターズが優勝し、優勝予想で推していたファイヤーサンダーが3位。満足度の高い結果となりました。
去年もそうだったと記憶してますが、今大会はトップバッターのロングコートダディが高得点を出したこともあり、審査員得点、全組80点代はなし。こうなってくると、0~89点の存在意義がわからなくなってきますね。10点満点にしても同じことのように思えてきます。
得点差が少ないことにも表れてますが、今回は頭ひとつ出たネタ、爆発したネタというのはなく、平均レベルちょい高めのネタがそろいました。
賞レースではたまにネタかぶりが起きますが、今回は野球部ネタが3本。最近野球ネタが流行っているのか、単なる偶然か。
今年の浜ちゃんは、コメント2周強要などしていましたが、年々KOCにおける立ち居振る舞いが自由奔放になっていってますね。それもまた、ひとつの名物ということでいいと思います。でも今年の結果発表は抑えめで、そこは全力でやってくれよと思いました。
そして、今年もバイきんぐの西村はいらなかった。
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