https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200504-00037657-bunshun-life
また、人が大勢いるところに行ってみると寂しい気持ちを埋められるかといえば、むしろ大勢のなかで感じる孤独のほうが辛くて、ああ、来なければよかったと後悔します。
家の1階にたとえば家族とか、心許せる誰かがいて、私はその誰かの気配だけ感じながら独りで2階にいる──これこそが最高のシチュエーションに思えますが、そう都合よくいつも1階に誰かがいて、なおかつ私をいつまでも2階に放っておいてくれるはずもありません。
どうしたら私は心の平和を得られるのかと考えあぐねています。
人間を含めた生物にとっての最重要課題は、自身の生命の維持です。そのために捕食し、自分の身を安全に保つ場所を確保する必要があります。このように己を利する行動は必ずとらなければいけません。
一方、食べ物や場所をシェアすれば自分の取り分が減ります。しかし、集団でいるほうが外敵に襲われる危険が逓減でき、生存できる可能性が高くなる。集団でいるメリットは大きい、となると利己の機能を少し犠牲にしなければならないわけです。孤独がストレスだというのは、つまりヒトが無意識に身を守ろうとする防御反応のようなものです。
とはいえ、集団に合わせるには利己の機能を削らなければならない。誰もがこの両方のストレスを抱えています。孤独のストレスをストレスAとし、集団に合わせるストレスをストレスBとすると、孤独を嫌う人はストレスAのほうが大きく、集団でいることを避ける人はストレスBのほうが大きいということになります。
精神科医・心理学者ボウルビィが満1歳児で実験したところ、
(1)母親と引き離しても泣かず、母親に再会しても母親に対して無関心な赤ちゃんがいました。このタイプは「回避型」といわれ、脳科学的にはオキシトシンの受容体の密度が低く、他者への関心が薄い。孤独を好む、ストレスBのほうを強く感じるタイプです。
(2)母親と離されると泣き、再会するとホッとして母親に抱きつくのが「安定型」で、約60%の人がこのタイプです。
(3)母親と離されると激しく泣いて混乱し、再会してもなお激しく泣いて「どうしていなくなったんだ」と訴えるのは「不安型」で、ストレスAのほうを強く感じるタイプです。このタイプは常に誰かを必要とし、相手の愛を確かめようとしたり、裏切りを許さなかったりします。
(4)回避型と不安型を行ったり来たりする「混乱型」もあります。
生後6カ月~1歳半の受容体の数で決まったタイプは生涯、90%は変わらないといわれますが、ということは10%は変えられるということです。実際、私は明らかに回避型で、独りでいる時間を必要とするタイプではありますが、もう少し人を信頼するようにしようと意識し、1人の信頼できる人(ダンナさんです)に出会えて、だんだんほかの人も信頼できるようになりました。
樹木希林さんは組織に属さずに1人でお仕事をこなされて、ご家族とも、夫とさえも自分で納得できる距離をもって暮らし、言いたいことを言って、それで誰かが離れていけばいったで気にしなかったそうですね。カッコいい回避型だったのかもしれません。
Q 人恋しいのに少し遠くにいてほしい《内田也哉子からの相談》
幼いころ、人と一緒にいたいと切望しているのに、家には誰もいないという寂しい思いをしてきました。今でも私は人恋しくて、でも、いざ人と会うと、会った後からドッと疲労感が襲ってきます。そのため、自分から気楽に友だちを誘うことができなくなってしまいました。
また、人が大勢いるところに行ってみると寂しい気持ちを埋められるかといえば、むしろ大勢のなかで感じる孤独のほうが辛くて、ああ、来なければよかったと後悔します。
家の1階にたとえば家族とか、心許せる誰かがいて、私はその誰かの気配だけ感じながら独りで2階にいる──これこそが最高のシチュエーションに思えますが、そう都合よくいつも1階に誰かがいて、なおかつ私をいつまでも2階に放っておいてくれるはずもありません。
どうしたら私は心の平和を得られるのかと考えあぐねています。
A「独りの空間を確保したいのだけれど、孤独は嫌だ」はヒトの特徴 《中野信子からの回答》
「也哉子さんの気持ち、よくわかる」という方はたくさんいらっしゃることでしょう。多くの人の心にある澱を掬い上げられる、繊細さと鋭さを持ち併せた方なんだなと改めて感じます。独りの空間を確保したいのだけれど、でも孤独は嫌だというダブルバインドは不安定な感じがしてやや不快かもしれませんが、実はヒトの特徴というべき側面でもあります。
人間を含めた生物にとっての最重要課題は、自身の生命の維持です。そのために捕食し、自分の身を安全に保つ場所を確保する必要があります。このように己を利する行動は必ずとらなければいけません。
一方、食べ物や場所をシェアすれば自分の取り分が減ります。しかし、集団でいるほうが外敵に襲われる危険が逓減でき、生存できる可能性が高くなる。集団でいるメリットは大きい、となると利己の機能を少し犠牲にしなければならないわけです。孤独がストレスだというのは、つまりヒトが無意識に身を守ろうとする防御反応のようなものです。
とはいえ、集団に合わせるには利己の機能を削らなければならない。誰もがこの両方のストレスを抱えています。孤独のストレスをストレスAとし、集団に合わせるストレスをストレスBとすると、孤独を嫌う人はストレスAのほうが大きく、集団でいることを避ける人はストレスBのほうが大きいということになります。
生後6カ月~1歳半の受容体の数で決まる「回避型」「安定型」「不安型」
ストレスAとBのどちらを強く感じるかは、生後6カ月~1歳半までの間に決まる脳の機構が影響しているかもしれません。幸せホルモンとしてお馴染みのオキシトシンという物質は、脳で作用すると自分の近くにいる個体に愛着を感じるようになります。そのオキシトシンの受容体の脳内の密度が、この時期に決まるのです。
精神科医・心理学者ボウルビィが満1歳児で実験したところ、
(1)母親と引き離しても泣かず、母親に再会しても母親に対して無関心な赤ちゃんがいました。このタイプは「回避型」といわれ、脳科学的にはオキシトシンの受容体の密度が低く、他者への関心が薄い。孤独を好む、ストレスBのほうを強く感じるタイプです。
(2)母親と離されると泣き、再会するとホッとして母親に抱きつくのが「安定型」で、約60%の人がこのタイプです。
(3)母親と離されると激しく泣いて混乱し、再会してもなお激しく泣いて「どうしていなくなったんだ」と訴えるのは「不安型」で、ストレスAのほうを強く感じるタイプです。このタイプは常に誰かを必要とし、相手の愛を確かめようとしたり、裏切りを許さなかったりします。
(4)回避型と不安型を行ったり来たりする「混乱型」もあります。
生後6カ月~1歳半の受容体の数で決まったタイプは生涯、90%は変わらないといわれますが、ということは10%は変えられるということです。実際、私は明らかに回避型で、独りでいる時間を必要とするタイプではありますが、もう少し人を信頼するようにしようと意識し、1人の信頼できる人(ダンナさんです)に出会えて、だんだんほかの人も信頼できるようになりました。
樹木希林さんは組織に属さずに1人でお仕事をこなされて、ご家族とも、夫とさえも自分で納得できる距離をもって暮らし、言いたいことを言って、それで誰かが離れていけばいったで気にしなかったそうですね。カッコいい回避型だったのかもしれません。