ビタミンの中で最も知名度が高く、その代表格として今も昔も注目を浴びている『ビタミンC』−。その多彩な働きは美容・健康の維持をはじめ、古くは壊血病の予防に、最近では免疫力増強、抗ストレス作用、抗酸化作用、抗ガン作用等があるとされ、また不足するとさまざまな弊害をもたらすものとして世界レベルで幅広い研究活動が今日もつづけられているのは周知の事実。そこでビタミンCの多彩な働きについてピックアップしました。
いつ、どのように発見されたか
1919年、イギリスのドラモンド博士はオレンジ果汁から発見した壊血病予防因子を水溶性C因子と命名し、のちにこれをビタミンCと呼ぶことを提唱しました。
ハンガリーのジエルジー博士は牛の副腎皮質に強力な還元作用を持つ物質を発見し、ヘキスロン酸と命名しましたが、1932年にこれが壊血病予防因子のビタミンCであることを証明しました。ジエルジー博士はビタミンCの発見等の功績で、のちにノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
アメリカのキング博士らは1932年にレモン果汁からビタミンCの結晶の分離に成功しました。また翌年にはイギリスのハワース博士らによってビタミンCの化学構造が明らかにされました。
コラーゲンの生成に不可欠
人間の体は細胞からできていますが、その細胞と細胞を結びつけているのが結合組織です。結合組織の中心はコラーゲンという繊維状のタンパク質で、これは網目状に張り巡らされています。このコラーゲンというタンパク質の量は、人間の体のタンパク質の3分の1ほどもあり、血管や各種の器官、筋肉や皮膚、骨、歯を作っています。このコラーゲンの生成にビタミンCが一役買っているのです。
コラーゲンが緻密につくられると結合組織がしっかりとしてきます。ビタミンCの摂取を多くしてコラーゲンが良好にできれば、皮膚や粘膜も強くなり、傷痕や手術の治りもよくなります。肌もコラーゲンによってプリプリのハリのある肌を保つことができます。さらにコラーゲンは骨の維持・発育にも関与しています。
またコラーゲンが緻密につくられることで、粘膜組織もしっかりとしてくるので、かぜなどのウイルス侵入のガードが固くなります。
ビタミンCが欠乏した状態がつづくと、壊血病のように毛細血管の結合組織が弱くなったりします。壊血病になると、ところかまわず、血管から出血するようになり、その上、ひどい疲労感に襲われたり、たやすく病気に感染するようになります。
つまり
ビタミンC不足は
「コラーゲン生成の不完全→細胞の結合が弱まる→出血などを誘発する」
という図式になります。
ビタミンCが不足すると、壊血病にならないまでも、肌のハリが失われ、かぜをひきやすく、さまざまな病気に侵されやすい体になるのです。
壊血病とは
壊血病は古代エジプトのパピルスにも記録が残っているほど、長い間、人類を悩ませてきた病気です。中世ヨーロッパにおいても恐れられていたようで、特にコロンブスやマゼランのように大航海時代の海の男たちには非常に恐れられ、世界一周を果たしたマゼランの500人ほどの部下の中でも、生きて故郷の土を踏んだのはわずかに18人で、大半は壊血病により死亡したともいわれています。
コラーゲンの生成に不可欠
ビタミンCが、かぜによいもう1つの理由は免疫力の強化です。ウイルスを迎え撃つ免疫活動の主力メンバーである白血球の働きを強化したり、自らもウイルスに攻撃を仕掛けるなどして体を守ります。免疫力が高まれば、かぜをひきにくく、回復も早まります。これまでの研究結果から、かぜをひきやすい人を調べてみると、血液中のビタミンC濃度が低かったり、かぜなどの感染症にかかっている時にも血液中のビタミンCの濃度が下がり、回復してくるとビタミンCの量が元に戻ってくることもわかっています。
かぜの予防にはビタミンAとの併用、かぜのひきはじめから治りかけにはビタミンB群の併用もそれぞれ効果的とされています。