猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

人質解放のイスラエルとハマスの合意は停戦をもたらすだろうか

2023-11-24 02:50:13 | ガザ戦争・パレスチナ問題

おととい、11月21日から、イスラエルとハマスが人質50人規模の解放の交渉が合意にいたったとの報道がメディアをにぎわしている。

この人質50人の解放の交渉は、イスラエルの地上軍の侵攻前の1カ月前からウォール・ストリート・ジャーナルによって報道されていた。そのときのハマス側の要求はガザ地区への燃料と食料の供給であって、イスラエル側の拒否で交渉はとん挫した。

今回は、4日間の休戦とイスラエル側が拘束している300人(18歳未満の男性暴動参加者とテロ未遂事件の女性関係者)と引き換えに、ハマスが50人規模の人質解放すると報道されている。

交渉はイスラエル国外のカタールで行われてきた。ガザ地区は、イスラエルによって塀の中に閉じこめられ、燃料や食料や水の兵糧ぜめにあっており、昼夜の区別なく、空爆や地上軍に攻撃されている。いまや、どうやって、カタールでの合意がガザ地区のハマスに伝わるのか、私は気になる。

伝えられる報道では「少なくとも50人の人質」となっているから、カタールのハマス代表は、ガザの人質の拘束状況を もはや つかめなくなっているのでは、と私は推測する。ハマス側の相互の連絡は寸断されていると思うからである。

22日の日テレの『深層ニュース』での松村五郎(元陸上自衛隊 東北方面総監)と田中浩一郎(慶応義塾大学教授)のコメントでは、イスラエル側は、次の攻撃のため、人質はどこから出てくるかを監視しているだろうと言う。また、ハマス側も人質をすべて解放したら、自分たちの安全はなくなると思っているだろう、と言う。

イスラエル側は、人質解放妥結後も、内閣も軍もハマスを壊滅させるまで戦争をやめないと宣言している。ハマスの壊滅はハマスの全員を殺すとのことである。ハマス壊滅のためには、ハマス以外の人々が何人死んでもかまわないという立場を崩していない。ガザ地区北部から住民を南部に非難せよ、とイスラエル側が言っておきながら、北部で地上軍が病院を捜索してもハマスの本拠が見つからず、現在、ガザ地区南部の攻撃を始めている。ガザ地区の住民には逃げ場がないのだ。

ハマスは1993年のオスロ合意(暫定自治政府原則の宣言)にもとづくパレスチナ自治区の自由な選挙で勝った政党である。イスラエル側がそれを認めず、ハマスがガザ地区を「実効支配」していると主張する。本当は、ハマスがパレスチナ人を法的に代表しており、ガザ地区の行政をになってきた。イスラエルは2000年に入ってから、パレスチナ自治区と外部を塀で囲むだけでなく、ハマスの幹部を暗殺するようになった。

今回の交渉妥結には、イスラエル国内やアメリカでの反戦の盛り上がりによるものだが、イスラエル政府がハマス壊滅を主張続けているので、停戦までは なかなか いかないであろう、と私は悲観する。今後も、一方的で非人道的な戦争が、イスラエル側によって行われ続けるだろう。

[追記11月24日]

きょうの朝日新聞に、イスラエル側が人質解放の交換条件で釈放したパレスチナ人についての報道に、つぎの記述があった。

<イスラエル側は、パレスチナ人が道路や家を破壊されることに抗議するだけで拘束するケースがあり、今回釈放されたのはそうした理由で捕まった人が多い欧米メディアは報じた。イスラエル警察は釈放される人の家族に「祝わないように」と繰り返し通告した。>

ここでの釈放されたパレスチナ人は、ハマスでもガザ地区のパレスチナ人でもなく、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区の住民である。イスラエルの基本法(憲法)では、非ユダヤ人には人権が保障されないのである。ユダヤ人以外は警察国家(刑務所)のなかにいる状態がイスラエル政府のもとで続いている。


イスラエル軍のガザ軍事侵攻に関するNHKやBBCの報道姿勢に評価する

2023-11-11 23:13:14 | ガザ戦争・パレスチナ問題

きのうのNHK総合「ニュースウォッチ9」が、日本に住むイスラエル出身者がイスラエルのガザ侵攻に反対していることを紹介した。NHKがこれをみんながテレビを見る時間帯に流したことを高く評価する。

彼は、子どものときからホロコーストの話を聞かされ自分たちユダヤ人が生きのびていくためには敵を殺さなければならない、と教育されていたので、何のこころの抵抗もなく、イスラエル空軍のパイロットとして爆撃に参加していたという。しかし、40年前に結婚して日本に住むようになって、徐々に考えが変わり、2008年にイスラエル軍がガザ地区に大規模な空爆と侵攻作戦を行い、子どもを含む民間人が犠牲になったことをきっかけに、それに耐えられなくなったという。

「多くの子どもを殺すことを、自分たちを守るためには仕方がないと片づけることが耐えられませんでした。私たちの教育がゆがんでいると考えるようになりました。」

「イスラエル国内にいる人たちは戦争やテロへの恐怖で支配されています。今、世界各地で反対の声があがっているが、外の人の発信が大切で、日本からも声をあげてほしい」

彼は、教育の怖さを語っていたと思う。イスラエル政府は自衛の範囲を逸脱し、軍事力の恐怖で非ユダヤ人を支配している。しかし、イスラエル国内にいると、なかなか、それが見えてこない。イスラエル国民は、世界には敵か味方しかいなくて、敵をせん滅しないと自分たちが殺されると思い込んでいる。右翼政権はその妄想を強めるために、教育を利用し、報道を制限している。

幸いにも、NHKに限らず、日本のテレビ局の報道部は、イスラエル政府のガザ軍事侵攻が人道上の限度を超えていることを、ありのままに伝えている。

日本に限らず、イギリスのテレビ、BBCも今回のガザ軍事侵攻で、事実を伝えるという姿勢を守っている。

きょうのBBCでは、ハマスとイスラム過激派とは別物だと解説していた。イスラム過激派は、ハマスがパレスチナ人のための政治を行っていることをナショナリストと批判しており、イスラム法による統治を求めているという。私は、ハマスをせん滅させるというイスラエル政権の姿勢は、イスラム過激派の復活という厄介な歴史のねじれを生むと考える。ハマスを全員を殺すのだ、そのためには、パレスチナ人に何万人の犠牲が出てもかまわないとする、現在のネタニヤフ政権を私は支持できない。ハマスはパレスチナ自治区での最初で最後の自由な選挙で過半数の票を得たのであり、ハマスとの交渉を拒否してきたイスラエル政府に問題がある。


自分が迫害をうけたからといって、他のひとを迫害して良いわけがない

2023-11-07 00:12:38 | ガザ戦争・パレスチナ問題

イスラエル政府はハマス壊滅を名目にガザ地区でパレスチナ人を殺している。即時停戦を呼びかける世界の世論を無視してパレスチナ人を殺している。

きょう、BSTBSの「報道1930」で、ドイツではイスラエル政府批判が難しいとの話をしていた。ドイツは、1931年から敗戦の1945年まで、ユダヤ人を迫害、虐殺した歴史があるため、反ユダヤ行為に厳しい規制があるからだ、と言う。

鶴見太郎の『イスラエルの起源』(講談社選書メチエ)、森まり子の『シオニズムとアラブ』 (講談社選書メチエ)を読むと、イスラエル国とユダヤ人とを区別しないといけないことがわかる。イスラエル国を建設したのは、当時、ロシア帝国の一部であったポーランド、ウクライナ、モラヴィアの地のシオニストのユダヤ人たちである。

ドイツのナチスが殺したユダヤ人は、ヨーロッパ文化に同化しようとしたユダヤ人である。ナチスは、キリスト教に改宗したユダヤ人をも殺した。宗教戦争でもなんでもない。民族浄化である。アルベルト・アインシュタイン、ハンナ・アーレント、ジークムント・フロイトたちは、人類のなかの一個人として生き、シオニストに組みしなかった。

なぜ、90年前のドイツ人がヨーロッパ人として生きるユダヤ人を殺す羽目になったのかを、顧みることは、いまを正しく生きる上で確かに有用である。

ナチスを生んだのは、新興ドイツが、第1次世界大戦で、イギリス・フランス・アメリカ連合軍に負けて、ドイツ人が何百年前から住んでいた東ヨーロッパの土地を追われたからである。ナチスは民族主義を掲げ、スラブ人を追いやって、ドイツ人の生きる空間を広げることを主張した。失われた土地を奪い返すという論理ともに、ナチスは、東方に住むスラブ人、ユダヤ人へのドイツ人の差別感情を利用した。差別感情は、劣等感からくるものである。当時、ドイツ人には遅れて西欧社会に参加したという、劣等感があったからだ。

民族主義は迫害だけでなく劣等感からも起きる。

しかし、ドイツ人がユダヤ人を迫害したことが、いまのイスラエル国を批判しないことになるのは、おかしい。ドイツがかって犯した同じ誤りをイスラエルがいま繰り返している。

イスラエル国は、シオニストが、アラブ人を武力で追い出して、イギリス委託統治領パレスチナに建国したものである。

私が子どものとき、『栄光への大脱出』というハリウッド映画があった。ドイツで迫害されたユダヤ人がパレスチナの地に移住しようとするが、イギリス政府に捕らえられ、キプロス島の難民キャンプに送られる。そこを脱出して、聖書に導かれ、パレスチナ地にイスラエル国を武力で建設するという映画である。ポール・ニューマンが主役をしていた。映画音楽も壮大で素晴らしかった。子どもの私はすっかり騙されて、イスラエル国建設は正義だと思った。

実際には、イスラエル国建設は正義でもなんでもない。

1880年代からロシア帝国のユダヤ人がパレスチナに移住しだし、もともとの住民ともめごとを冒し始めた。そのうちのシオニスト右派のへルートは、テロ活動をし、アラブ人の村の住民を虐殺したこともあった。このテロリストの一人が後にイスラエル首相になるメナヘム・ベギンである。シオニストには、工業化された西欧市民社会に対する劣等感があり、それがアラブ人に対する差別感情につながった。彼らはアラブ人の権利を認めない。

1947年に国連は、イギリス委託統治領パレスチナの地を、ユダヤ人の国とアラブ人の国に分割すると決議した。しかし、これは実行されなかった。シオニストは翌年一方的にイスラエル国建設を宣言し、幾多の戦争を経て、パレスチナの全土を占領した。アラブ人の国という国連決議は、イスラエルの暴力の前にぶっ飛んでいる。

1990年代にアメリカ大統領ビル・クリントンの仲介でイスラエル国とパレスチナ人の和平が進むように見えたが、シオニスト右派リクードが政権を取ることで、和平がすっ飛んでいる。1993年のオスロ合意は、イスラエル国占領地にパレスチナ人の自治区を設けるとうものだが、その自治区は分離壁に囲まれた小さな地域の集まりで、互いにつながっていない。したがって、イスラエル政府の許可がなければ行き来できない。ガザ地区はそのなかの最大の自治区である。

いま、イスラエル政府はハマスを壊滅すると言っているが、ハマスは、自治区での最初の選挙で勝利した党派である。イスラエルはハマスの勝利を認めず、それ以来、自治区では選挙ができていない。ある世論調査によると依然としてハマスが自治区内で最も支持されている党派であるという。

現在、イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフは、ガザ侵攻でハマスを壊滅するというが、それは、大量のパレスチナ人を殺害することになる。暴力でアラブ人抑え込むと言うのは、正義でもなんでもない。ドイツ人はイスラエル政府を非難する権利がある。


イスラエルは地上軍のガザ侵攻で何をもくろんでいるのか

2023-11-02 22:53:52 | ガザ戦争・パレスチナ問題

先週からイスラエルの地上軍がガザ地区になし崩し的に侵攻した。現在は陸海空からの焦土作戦に拡大している。イスラエル軍は、人も建物もトンネルも完全に破壊し、地上軍の過ぎた跡には、何もない平坦な瓦礫の大地が広がっている。

停戦を求める国際世論に逆らってまで、イスラエル政府はガザ地区を今後どうしたいのだろうか。

ウィキペディアによれば、ガザ地区は、高さ6メートルの塀に囲まれた、面積365キロメートル平方の土地で、2,375,259 人の人が住んでいる。これらの人は、1948年のイスラエル建国によってパレスチナの地を追われた難民の子孫か、難民に食料や医療を支援をする人々である。

1947年のことであるが、国連は、国連からの委託でイギリスが統治していたパレスチナの地を、もともとの住民アラブ人の国、入植者ユダヤ人の国に分割すると決議した。当時、アラブ人とユダヤ人は都市では混在して住んでいたから、国連がかってに土地を分割して、アラブ人とユダヤ人を引き離すというのは、ひどい話である。

しかし、当時、パレスチナのアラブ人をイランに移送して捨てれば良い、という案も、イギリス政府内部やユダヤ人の一部によって、検討されていたから、国連の分割案はそれでもましである。

実際の歴史では、イギリスの統治が切れた1948年にシオニスト派のユダヤ人が一方的にイスラエル国を建国し、4度の中東戦争を経て、パレスチナの全土を掌握した。アラブ人の独立国、パレスチナ国の建設という話しは、いつのまにか吹っ飛んでいる。いま、国際社会がイスラエル政府と話しているのは、イスラエル国の中にパレスチナ人の自治区をどう作るのか、ということに過ぎない。

現在、イスラエル政府は、パレスチナ人の自治区を細かく分割して塀の中に囲い込んでいる。ガザ地区はその中でもっとも大きなものである。ヨルダン川西岸にある自治区は、点在するもっと小さい面積の土地の集まりである。その周囲にはユダヤ人の入植が進んでいる。第2次世界大戦まで、ヨーロッパ各国が、ユダヤ人を狭いゲットに閉じこめていたのと、変わることがない。いや、もっとひどい扱いをイスラエル政府は行っている。

今週、イスラエルの情報省がパレスチナ自治区ガザの住民をエジプトのシナイ半島に強制的に移住させる計画案を作成していたことが判明した。イスラエル首相室は、同計画案はコンセプトペーパーで検討の1つであると言う。

2週間前にエジプトは、200万人を超えるガザ地区の難民を引き受け入れられないと声明していたから、イスラエル政府は強制移住案をかなり真剣に検討し、エジプトやアメリカなど各国政府と打診していたのだろう。

それだけでない。私は、イスラエル政府は、一方で、ガザ地区の人間をどれだけ殺せば良いか、検討していると考える。すでに、1万人を殺したと思われる。また、ガザ地区の北半分は、パレスチナ人のいない瓦礫の大地にすることは、イスラエル政府内の決定事項のように思われる。ハマスを根絶するには、それも不十分とイスラエル政府は考えているのだろう。

イスラエル政府の態度を変えることができるのは、イスラエルへの軍事支援を続けてきたアメリカ政府だけである。イスラエル政府を非難するとともに、アメリカ政府への働きかけが必要である。さもないと、イスラエルは、国際世論を無視し続けるだろう。


パレスチナ人とイスラエル人との戦争はナショナリズムが生んだ悲劇

2023-10-31 23:54:03 | ガザ戦争・パレスチナ問題

放送大学名誉教授の高橋和夫は、ハマスとイスラエルの紛争は宗教の争いでなく、土地争いだと言っている。私も宗教戦争と見るのは不適切だと考える。

そもそも、ユダヤ教というものは宗教ではない。ユダヤ教が宗教なら、望む人はユダヤ教に改宗できるはずである。ところが、ほかの宗教と異なり、母がユダヤ人なら子はユダヤ人になれるが、それ以外は国籍を変える以上に困難である。

キリスト教徒がヘブライ語聖書を旧約聖書としたため、多くの人はユダヤ教を宗教と誤解しがちである。じっさいのユダヤ人は、タルムードにしたがって日常の生活を送る。ヘブライ語聖書は自分たちの祖先に関する物語である。古代のヘレニズム世界においては、古い歴史をもっていることが、民族の誇りであった。それゆえ、ヘブライ語聖書は、神が世界を創造した物語から始まるのだ。

ユダヤ教と言われるモノは自分たちをユダヤ人とする信念の具現化である。したがって、タルムードやヘブライ語聖書は、「持ち運びできる国家」と言われる。これによって、ユダヤ人は周りに同化することなく、現代にいたるまで、ユダヤ人であることができた。

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今回、イスラエル首相のベニヤミン・ネタニヤフは、民主主義のイスラエルを支持するのか、それとも、イスラムのハマスを支持するのか、と世界に向かって呼びかけた。ここに、イスラエル国の問題の根がある。イスラエル国は西欧に属し、ハマスなどアラブの国々は野蛮国だ、文化的に劣るのだとネタニヤフが思っている。

イスラエルは1948年にパレスチナの土地に作られた国である。作ったのは、ユダヤ人のなかのシオニストと呼ばれる一派である。シオニストは、自分たちは西欧の文化の担い手で、アラブの人びとは文化とほど遠い野蛮人だと考える。さらに、シオニスト右派のリクード党は、世界は敵と味方しかいない、敵と戦わないものは愚かなものと考える。そして、敵は野蛮人だ、と考える。野蛮人が戦争の犠牲になるのは仕方がないと考える。

ハマスとイスラエルの土地争いは、第2次世界大戦において、イギリスがパレスチナ人にもユダヤ人にもパレスチナの土地を所有を約束したから、と言われている。

これも、ある意味では、誤りである。

私は、その前に、一民族一国家というナショナリズムが、19世紀にロシアを含むヨーロッパに吹き荒れたことが、ユダヤ人の国家を建設しようというシオニストを生んだと考える。国民国家というナショナリズムこそ、人類が犯した間違いである。

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ユダヤ人のパレスチナの地へ移住は1882年に始まる。それまでは、パレスチナの地に少数のユダヤ人しかいなく、多数のアラブ人のなかで、他の少数民族とともに、平和に暮らしていた。パレスチナの地に押し寄せるシオニストが多くなるとともに、もともとの住民とのいさかいが起きだした。

ナチスがユダヤ人を虐殺したから、ユダヤ人のなかで、シオニスト運動が起きたのではない。

第1次世界大戦後、オスマントルコに代わってパレスチナの土地を統治したイギリスは、シオニストとパレスチナ人の争いに巻き込まれ、統治の期限が切れる前に、国連にシオニストとパレスチナ人の争いの解決を持ち込んだ。1947年11月29日に、パレスチナの地をユダヤ人とパレスナ人の国に分割するいう解決策が国連で決議された。アメリカとソ連との共同で作成した解決策である。混在していた民族を、移住させてまで、引き離すというのが、ナショナリズムの非人道的な所である。

しかも、この国連の分割案では、当時の人口で32%のユダヤ人に面積で56%の土地を与えるという、不公平なものだった。1945年3月31日時点で、ユダヤ人の買い取っていた土地は6%である。ユダヤ人を優遇したのは、ユダヤ人は西欧化されており、アラブ人は野蛮人だという偏見が影響したとみる。この国連決議にパレスチナ人やアラブの国々は一斉に反発した。

1948年5月14日にイギリスの統治が終わるとともに、シオニストはイスラエル建国を宣言し、パレスチナ人やアラブの国々との戦争が起きた。第1次中東戦争である。翌年、イスラエルは、この戦争に勝利し、パレスチナの土地の78%を得た。その後、イスラエルは戦争のたびに国土を大きくしており、1973年の第4次中東戦争までに、パレスチナの地のすべてを支配した。

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現在、イスラエルは、ガザ地区とヨルダン川西岸の一部でのパレスチナ人の自治を認めているが、自治といっても塀に囲まれた中の生活で、イスラエル政府の許可がなければ、外の世界と行き来できない。

ガザ地区は地中海に面しているが、イスラエルの監視下にあり、漁をする小船以外、港から出られない。ガザ地区はエジプトとも国境を接しているが、現在、エジプトは軍事独裁国であり、イスラエルと友好関係にあり、イスラエルのガザ地区の封じ込みに積極的に協力している。

ヨルダン川西岸のパレスナ人自治区は、散らばった小領域の集まりで、イスラエル軍の厳しい監視下に置かれている。パレスチナ自治区以外のヨルダン川西岸にあるパレスチナ人の住宅は補修が認められず、何かの理由をつけて取り壊しの対象となっている。

また、自治区以外のイスラエル国内にパレスチナ人が住んでいても、ユダヤ人と同じ人権が認められない。日本の憲法にあたる基本法でイスラエルはユダヤ人の国としているからである。

パレスチナ紛争をパレスチナ人とイスラエル人の土地争いと見ることができなくもないが、両者の間は対等でなく、軍事国家のイスラエルが圧倒的に勝ち続けている。今回の戦争では、イスラエルは、ハマスの抹殺を掲げており、ガザに住むパレスチナ人が死ぬことは仕方のない犠牲だとしている。19世紀のナショナリズムがシオニストという怪物を生んだと言える。

イスラエル政府がガザ地区にしていることは、ナチスと同じ民族浄化である。