猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

核のゴミの中間貯蔵施設と最終処分場

2023-08-19 00:26:35 | 原発を考える

ゴミ焼却施設は必要だが、建設地に住む住民にとっては迷惑施設である。住民の同意を得るには、建設主体の地方自治体からのウソのない説明と住民への適切な代償が必要である。

核のゴミについても同じである。ただ、説明主体は国であり、引き受け主体は地方自体である。いっぽう、迷惑を受けるのは、地元住民の一人ひとりであって、町長や市長や議員ではない。ここに、引く受け賛成派と反対派の分断が起きる要因がある。

今月にはいって、反対を押し切って、山口県の上関町が核のゴミの中間貯蔵施設を受け容れ、長崎県の対馬市が核のゴミを最終処分場を受け容れた。もちろん、引き受け賛成派は、引き受けたのは文献調査であって、建設ではないと言う。

しかし、引き受けた理由は、国からの交付金が出るからである。文献調査が終われば、交付金が出なくなる。交付金をもらい続けるには、文献調査の次の段階に進まざるを得なくなる。したがって、文献調査であって、建設ではないは、詭弁である。

賛成派によれば、交付金を求めるのは人口減少による税収の減少であるという。人口が減少すれば必要な公共事業費や福祉費も減少すると私は思うが、賛成派は交付金の増額で何をしたいのだろうか、私は不思議に思う。賛成派は交付金をもらってトンズラするつもりなのだろうか。

核のゴミを引き受ければ、人口減少はより進むだろう。すると、地方自治体の必要経費はより減少するだろう。

建設反対派からすれば、核のゴミを引き受ければ、いままでの生活基盤である漁業や農業が崩れ、その土地をいずれ離れざるを得なくなるだろう。すると、反対派は国からの交付金の恩恵にあずかれない。交付金の恩恵を受けるのはどんな人たちであろうか。

もうひとつ、私が腑に落ちないのは、国が説明で本当のことを言っているのか、という疑問である。

第1に、どれだけの規模の量の核のゴミを引き受けさせたいのか、また、どれだけの期間保管続けるのかという疑問である。ドイツのように原発をすべて廃炉にするのであれば、膨大であるが、核のごみの総量は決まる。今後も原発を稼働していくとなると、核のゴミがこれからも増え続ける。中間貯蔵の期間というのもアイマイで、30年なのか、300年なのか、3千年のか、分かっていない。

福島第1原発事故の後、中間貯蔵施設をつくるときは、対象は除染作業ででた核のゴミだけ、保管期限は30年後に県外に持ち出すと法律で決めた。今回、賛成派は何を考えているのだろうか。

最終処分施設の場合も保管期限も明言されておらず、経産省のホームページには、数万年以上と示唆されているだけである。

第2の疑問は安全性である。安全性と関連して、経産省は核燃料のリサイクルを放棄していないことである。核燃料棒とはウランの酸化物を焼固めたペレットをジルコニウム合金でつくられた燃料被覆管に詰めたものをいう。使用済核燃料のリサイクルとは、その燃料被覆管を壊して、プルトニウムをとりだすので、その際、せっかく閉じこめられていた放射性物質が外にでてしまう。そのくせ、取り出したプルトニウムを核燃料として使う原子炉は実用化には至っていない。

できもしない核燃料のリサイクル計画を維持したなかでの最終処分場は、本当に設計可能なのだろうか。核のゴミが発生続ける中で、地下の処分場は拡大続けるのだろうか。地盤が強固だといえ、大規模な地下建造物が何百年も何千年も持ちこたえると思わない。地下に空洞を作った場合、埋め戻すのがふつうである。そのことを国は考えているのだろうか。最終処分場の詳細な設計は国にないと私は推測している。

中間貯蔵施設のキャスターの安全性も疑問である。核燃料棒を100本ほど集めたものを燃料集合体という。キャスターは燃料集合体50体ほどをいれる高さ6m直径2.4mの金属性容器である。外に漏れる放射能を少なくするようにしているが、熱は逆に外に放熱するようにキャスターは設計されている。発熱が少なくなった燃料集合体をキャスターにいれると国や電力会社は言っているが、原子炉から取り出された核燃料を何年たったら中間貯蔵施設のキャスターにいれるのか、具体的な数値は語られていない。また、キャスターを空冷でひやすと言っているが、施設内のキャスターの配置や施設の規模の話も出てこない。中間貯蔵施設設計の具体的研究がされていないように見える。

私が安全性に疑問をもつのは、安全性の地味な研究とその公表がなされていないのにもかかわらず、国や電力会社が具体性なく安全だと言い切ることである。

もう少し、核のゴミの処分について、ウソのない説明を国はできないものだろうか。お金で地元の有力者を取り込み、住民に分断を持ち込むのは止めるべきである。


福島第1原発汚染水の海洋放出に反対なのは漁業者だけでない

2023-06-11 22:16:09 | 原発を考える

けさの朝日新聞に『処理水の海洋放出 漁業者の不信なお 経産相に「反対」伝える』の短い記事が載った。

「福島第1原発の処理水の海洋放出計画をめぐり、西村康稔は6月10日、宮城、福島、茨城の各県を訪れ、業関係者と意見交換をして理解を求めた。」「漁業関係者の反対は根強い。」

見出しの「漁業者の不審なお」は、トリチウムなどの放射性物質を含む「処理水」の海洋放出に反対しているのは、宮城県、福島県、茨城県の漁業関係者だけのように読めるが、そうではない。

NHKの今年2月10日の世論調査では、「処理水を国の基準を下回る濃度に薄めたうえで海に放出する方針」について、全国の人は、27%が「賛成」、24%が「反対」、41%が「どちらともいえない」と答えた。賛否はほぼ同数で、判断ができないと答えた人がもっとも多かった。この結果は、「政府が放出方針を決定した直後の2年前に聞いたときとほぼ同じ」であるとNHKの記者は言う。

漁業関係者でなくても、多くの人は海洋放出計画の政府の説明に納得できないものを感じているのだ。政府の同調圧力に屈する必要はない。

中国政府、韓国政府は日本の海洋放出に反対を表明している。ヨーロッパの主要国の政府も、広島G7 で日本政府の海洋放出計画を支持できないとした。

海洋は人類みんなの財産である。そこに、「海水で薄めた」といえ、トリチウムなどの放射性物質を含む「処理水」を放出していいはずはない。海水で薄めたといえど、放出するトリチウムなどの放射性物質の総量は変わらない。

日本政府は「1年間に放出する処理水の量は22兆ベクレルを下回る水準」にする計画だというが、この基準では、現在の福島第1原発の敷地のタンクの処理水を放出するだけで30年以上かかる。しかも、毎日新たに汚染水が発生しつづけているので、いつまで放出が続くのか不透明である。

他の手段があるのに、大量の放射性物質を公共の海洋に放出することは避けるべきである。

さらに、日本政府の排水規制値の40分の1に海水で薄めるというが、国連飲料水規制値の7分の1、EUの飲料水規制値の8分の3である。日本の排水規制が緩いことを利用して、「とっても薄い」かのように印象操作をしている。日本の規制値は、人間がその汚染水の外にたっても健康障害がないという基準である。国際規制値やEU規制値にしても、体内からすぐ排泄されると想定しての基準値である。汚染水に一生どっぷりと浸って暮らす海洋生物のことを考えての話ではない。

日本政府もこの批判を知っていて、ヒラメとアワビを「原発周辺の海水を入れた水槽と、海水で1リットルあたり1500ベクレル未満まで薄めた処理水の水槽にわけ、比較している」という。しかし、なぜ「原発周辺の海水」と「薄めた処理水」とを比較するのか。また、処理水で育てヒラメを「通常の海水に戻すとトリチウムは検出できない値まで下がった」と報告するが、市場に出す前に「毒抜き」が必要だとのことで、海洋生物に影響がないとの証拠ではない。

海洋放出以外に地層注入処分の手段がある。

使用済み燃料や放射性物質で汚染された処分には、日本政府は、地層埋設処分を提案している。経産省は300メートルの深さに、大きな穴をほって放射性廃棄物を積み上げることを計画している。これらの処分対象は固形物であり、重機で運ばなければいけない。

いっぽう、汚染水は液体である。圧力をかけて、汚染水を蓄えられる地層に押し込むことになる。したがって、1000メートルの深さでもかまわない。経産省はどうして、地層注入処分を選ばなかったのか、私には、とても不思議である。

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中間貯蔵地の汚染土、福島第1原発事故の後始末は終わっていない

2023-05-23 22:12:24 | 原発を考える

先日テレビで、福島第1原発の事故による放射能汚染土を2045年までに福島県外に持ち出すことに法律で決まっている、と言っていた。

日本政府は、「除染」という名のもと、放射性物質に汚染した表土を黒いゴミ袋に詰めて集めた。2015年に、この汚染土の中間貯蔵地を福島県内に設定するにあたって、30年後に県外に持ち出すと、法律を作って約束した。現在、この中間貯蔵地の汚染土は約1347万立方メートルに上るという。どこに汚染土を移動するか、何も決まっていないという。

汚染土を移動するというのは、汚染を拡散するということになるので、本当は賛成できない。しかし、そう約束して中間貯蔵施設を作ったのだから、約束は守るべきである。また、県外に搬出するといっても、汚染土を貧しい地方自治体に押しつけるのも心苦しい。

日本に原発を建設した責任は誰にあるのだろうか。国会議員にある。通産省の官僚にある。

そうすると、永田町の国会議事堂や霞が関の通産省の地を汚染土のゴミ捨て場にするしかない。責任をとってもらおう。

広島の原爆ドームのように、汚染土のゴミ捨て場を原発重大事故の記念碑としよう。

約1347万立方メートルということは、高さ10メートルに積み上げても、約1161メートル四方の土地がいる。

すると、東京電力と東芝とIHIにも責任をとってもらうしかない。


日本のメディアはドイツ政府の脱原発実施を まず たたえるべき

2023-04-20 13:13:38 | 原発を考える

ドイツ政府は、この4月15日に最後の原発3基の稼働を終え、予定通り、脱原発を実施した。予定通りという意味は、ドイツの国会で決めた脱原発の法律を執行し、国民への約束を守ったということである。

これに対する日本のメディアは、ドイツ政府の誠実さをたたえるのでなく、脱原発を執行することは、経済的リスクがあるとか、法律の執行を遅らせるべきだとの声がドイツ国民のなかに多いとか、ネガティブな論調で脱原発の実施を報道した。

まず、ドイツ政府の勇気をたたえ、ドイツ国民を祝福すべきでないだろうか。

メディアが掲げる懸念の1つは、電力価格の上昇がドイツ産業の国際競争力を損なうということである。なぜ、日本のメディアがそんなことを心配するのか。ドイツ国民に対する友情なのか。私は、日本が脱原発すると、日本の国際競争力を損なうと言いたいために、日本のメディアがドイツ国民を心配しているフリをしている、と考える。

私は、水力、風力、太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーの利用は、政府がその方向性を明確に打ち出さない限り進まないものだと考える。

今から15年前、私は、工学部で光工学を教える機会があり、太陽光発電の技術水準を調べた。その結果、植物が太陽光を吸収してエネルギーの転換する効率4%をはるかに超える効率十数%を普通に実現していた。日本の研究者は50%近くの効率の半導体素子の開発を競争していた。

いっぽう、当時の中国は、太陽光発電の実用化、すなわち、安くて耐久性のある半導体素子生産の研究を進めていた。中国は効率の競争に参加せず、太陽光発電の普及に向かったのである。数年も経ず、2011年の東日本大震災で、福島第1原発の重大事故が起きると、中国の低価格の太陽光発電素子が世界の市場を席巻した。

私が言いたいのは、日本の政府も企業経営者も、再生可能エネルギーによる発電に力を入れれば、いくらでも、電力が安くなるということである。政府がやるべきことは、ドイツにならって、いついつまでに原発を全廃すると決めることである。それによって、民間の研究開発競争が進み、安くて耐久性のある発電設備が市場に出回るようになる。

再生可能エネルギーの発電コストを下げるとともに、また、日本社会が、エネルギーの使用にあまり頼らない産業に移行していくことが大事だと私は考える。これも、政府が明確に方向を打ち出すことで起きることだ。

岸田文雄は、歴史がどの方向に進むべきかの哲学がなく、総理の座を守ることに終始している。メディアは、もっと本気で岸田を叱るべきで、他国の政府のことを心配する暇がないはずである。岸田を守ることは民主主義を守ることにならない。


自民党議員の滝波宏文は間違っている、核燃料サイクル・高速増殖炉は核のゴミを減らさない

2023-03-07 03:20:33 | 原発を考える

もう、きのうのことになるが、予算委員会参議院中継を聞いていたら、福井県選出の自民党議員の滝波宏文が、放射性物質のリスクを低減するために、核燃料サイクル、高速増殖炉が必要だと言っていて、私はびっくりした。核燃料サイクルで半減期10万年の放射性物質を半減期8千年に変え、さらに、半減期300年の放射性物質にする、そして、最終処分所に埋めると言うのだ。

滝波は半減期を短くすることで安全になると考えている。これは根本的に誤っている。半減期が短いほど、頻繁に放射線をだすので、危険である。半減期が無限大ととは、原子核が自然には崩壊しない、ということで、その物質は放射線を出さない。

半減期Tが大きいとき、一定時間に原子核が崩壊する確率は0.693÷Tとなる。だから、半減期が10万年だと、1年間のあいだに崩壊する確率は、1年に0.000693%である。これは1秒あたりになおすと、0.000000000022%となる。

彼の話はあいまいで、半減期10万年と言っているものは、なんなのか、私には、わからない。

ウラン238は自然にはほとんど崩壊しない。半減期は44.7億年である。核燃料や原子爆弾に使われるウラン235も半減期7億年で充分長い。ウラン235を濃縮して核分裂連鎖反応を起こさせない限り、放射線がほとんどでない。ウランは重金属だから人間にとっては毒物であるが、それは放射性物質だからではなくて、化学反応による。

原子炉や原子爆弾ではウランの原子核に中性子を当てて人為的に核分裂反応を起こさす。重い原子核は中性子を大量に抱えるから、核分裂が起きると、中性子が2、3個放出される。これが、また、他のウランの原子核を崩壊させる。こうして核分裂連鎖が起きる。

ウラン235を濃縮して、はじめて、危険が生じる。放出される中性子は特に危険で、原発は中性子が外界に漏れないように設計されている。中性子が原子炉の水を温めて、その蒸気の力で発電を行う。

核分裂の結果生じた破片の核はさらに自然崩壊をし、放射線を出しつづける。これが核のゴミである。原子炉が壊れなければ、核のゴミは容器に閉じ込められたままで、外部に拡散しない。しかし、原子炉を稼働する限り、この核のゴミは増え続け、取り出して、どこかに保管しないといけない。これが、最終処分所の問題である。だれも引き受けを望まない核のゴミの問題のことを「トイレのないマンション」という。

核燃料サイクルでいう、バックエンド処理とは、この核のゴミからプルトニウム239、プルトニウム240を取り出し、濃縮して、もう一度、核分裂連鎖反応を起こさすことをいう。プルトニウムは燃えないウラン238に中性子があたることで、生じる。プルトニウム239の半減期は2.4万年、プルトニウム240の半減期は6.56千年である。ウランより半減期がかなり短いので、ウランより危険である。原発を稼働しない限り、プルトニウムは生じないし、他の放射性物質も生じない。

再処理でプルトニウムが取り除くと言っても、一般的な使用済み核燃料の1%にも満たない。ウラン235の核分裂連鎖反応で、プルトニウムより半減期の短い不安な原子核(分裂した核)が大量にできてしまう。

さらにプルトニウムを燃やすのはそれほど簡単でない。現在は、MOX燃料の形で、ウラン235が核分裂連鎖反応の勢いで、プルトニウムの核分裂連鎖を引き起こすのである。

開発を中止した高速増殖炉もんじゅはプルトニウムをウラン238から大量につくることを目的としている。燃えないウラン238に高速の中性子をあてて、燃えるプルトニウムを作ろうという試みである。アメリカやロシアでプルトニウム239を大量に作る、あるいは、取りだしているのは、核兵器、プルトニウム爆弾を作るためである。

核兵器を日本でも作りたいと思う議員が日本にいる限り、プルトニウムを生産する、もしくは、プルトニウムを取り出す技術の研究を進めることに私は反対である。プルトニウムを燃やすと核のゴミがまた発生し、核のゴミがふえるだけであって、核のゴミの解決にならない。核分裂連鎖反応を起こす限り、放射線を放出する核の破片が生じる。

ちなみに、自民党議員の滝波は、2013年に毎日新聞のアンケートに、憲法9条を改正して自衛隊を他国同様の「国防軍」にすべき、また、日本の核武装を国際情勢によっては検討すべき、と答えている。

滝波が不幸にして教養のない環境で育ったのかと私が思って調べてみた。じつは、彼は、東京大学法学部卒で、大蔵省にはいり、2013年に参議院に初当選した安倍チルドレンだった。無知を言い訳にできない。きのうの予算委員会の質問では、安倍晋三をよいしょし、原発のリプレース、原発が集中している福井県の優遇を訴えていた。東京大学法学部は、無教養だけでなく、人間としてのモラルの欠如している人間を作ったことを恥じるべきだ。