一番良かったことは、全員合格じゃなくてちゃんと不合格者を出したこと。性格悪いかもしれないけど、全員合格なんて嘘くさすぎて白けるからとにかく誰かは落としてくれ、と思っていた。まあ、5人も合格者が出たのが既に十分ご都合主義だけど。そしてその不合格枠の人選がやや気に入らなかったけど。
藤井は前回の文転エピソードが合格フラグだと思ったんだけど、今回の最初の方でやっぱり理系で受けると言い出して、これは落ちるなと確信した。ロボット作りたいって言うのも唐突だったし、だったら文転の話をあんなに長々とやってた意味はあったのかな。もしかして、前回のシナリオを書いた時点では文転したまま合格させる予定だったのを後から変えたのでは、なんて邪推してしまう。
案の定落ちたけど、まあいいんじゃないかな。一番おいしい役回りだったし。一番かわいそうなのは特にドラマも無くなんとなく落とされた早瀬。
天野の合格は一番嬉しかった。最初から一貫して真面目な良い子だったから。小杉と健太はまあ普通に受かるだろうと思ってた。
瀬戸の合格は全然嬉しくないどころか、あり得なさすぎてメッチャ萎えた。それまでも一番勉強できなくて、共通試験の点も悪かったのに。二次に向けて必死に勉強して、そこからまた力を伸ばしているような描写もなかったし。リラックス出来ていたのと、運良く分かる問題が出たという理由付けは一応されていたけど、納得は出来ない。
瀬戸は経済的に浪人は厳しそうだから他の国公立に志望を変えて合格、が一番現実的で納得できる結末だと思う。私が教師ならそれを勧める。ドラマのコンセプトを否定することになるけど、そこまでして東大に拘る必要ないじゃんと思ってしまう。
岩崎もな。放火と万引きしたじゃんってどうしても思ってしまって。因果応報で藤井が落ちるなら、もっと重大な悪事を犯している岩崎も落ちないと。しかも、岩崎が放火した事実を両親含めほとんどの登場人物が知らないのもなんか嫌だ。
岩崎と瀬戸って最初の頃結構ひどいことをしていたけど、専科に入ったらすぐに人格が変わってしまって、過去のことなんか無かったようになってるのがずっとモヤモヤしていた。放火はインパクトのある描写をしようとして入れたんだろうけど、そこまでさせない方が良かった。万引きだけにして、お店に謝りに行っている描写を入れていたら素直に応援できたのに。
藤井はこれはこれでおいしいからいいとして、早瀬は合格させて瀬戸と岩崎のどちらかまたは両方不合格にして欲しかったな。
そういうわけで、面白かったけど不満はいろいろある。放火の件もそうだし、バドミントンに時間とりすぎだったし、ゲイの描き方や小杉の父親問題の解決の仕方はものすごく雑だった。一番期待していた受験テクニックの話が少なめだったのも残念。そこは原作読めってことかな。
学園売却関連の話も不要だった。坂本と米山が味方なのは読めてたから驚きはなかった。わかっていてもどんでん返しのシーンはワクワクはしたけど、でもやっぱりいらない。
こんなことに使う尺があるなら、受験テクニックや生徒の掘り下げをもっとちゃんとやってほしかった。天野と早瀬は原作の主人公なのに影が薄かったな。天野の家族関係はもっとちゃんと描写して欲しかった。生徒役の中で一番演技が上手いのは天野役の加藤清史郎だったと思うのに、あの扱いはもったいない。
あとは、なんで東大だけにこだわるんだ、滑り止めくらい受けとけよとか、共通試験の結果で志望校を変える選択もあるだろ、って心の中でずっと突っ込んでたけど、そこを早瀬が回収してくれたのは良かったかな。
そんな感じでいろいろ文句がありつつも結構楽しめてしまったのは、藤井が結構いいキャラしてたから。自信満々なフリをしているけど実は人一倍劣等感が強かったりするところもいいけど、それよりも成績の伸び悩み方が妙にリアルで共感できたので。他は偏差値32から東大レベルと荒唐無稽なのに。それか小杉・健太みたいなすごすぎる人たち。
藤井は多分現実によくいる受験生に一番近い感じで、嘘くささを感じずに見ることが出来たのが良かった。センター試験で思ったより全然点が取れなくて泣いたことも自分にもあったし。それで結局落ちてしまうところもリアル。多分、あのアクシデントがなくても普通に落ちていたと思う。残念ながら。
あれだけずっとガリ勉していても一年しか頑張っていない子たちに抜かれるくらいなので、藤井の元々のポテンシャルはあのクラスの中で一番低いんだろう。でも、だからこそ応援したくなる。実際半分以上の人は第一志望校に落ちるしな。受験勉強を頑張った経験のある人たちが藤井(と早瀬と元々頭が良かった小杉)以外の子たちを見たら、あんなに簡単に東大に受かるわけあるか、って腹立たしい気持ちにもなると思う。と言うか自分は少しなった。特に瀬戸に対して。
原作の「ドラゴン桜2」はそこそこ進学校設定なので、そこまで荒唐無稽な話ではないんだけど。原作通りの偏差値で見たかったな。
それと藤井が健太を助けたあのシーンを冷静に考えると、わかりやすい悪役を出してピンチを作るという非常に安易な展開ではある。でもあれは藤井の禊イベントなんだと考えればその安易さも許せないことはない。あのシーンで藤井は他人ではなくて健太に散々ひどいことをしてきた過去の自分と戦っていたんだと思う。前回みたいにフラッシュバックで健太を虫ケラ呼ばわりした過去の藤井のシーンを入れていれば、最終回だけ見た人にもそのことが伝わったのに。
あの二人は藤井に過去の自分と向き合わせるための舞台装置なので、後で藤井のいないところでまた現れて健太に嫌がらせして「スカッとジャパン」のごとく成敗されるシーンは蛇足だったと思う。