場末の雑文置き場

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大河ドラマ「麒麟がくる」を最終回まで見た感想

2021年02月13日 | 映画・ドラマ
登場人物について

信長のキャラクター造形は結構新鮮な感じで面白かった。従来の信長よりやや小物臭はあるけど、寂しがり屋だったりして妙に人間くさくて憎めない信長だった。

十兵衛の生真面目な感じは私が今まで抱いていた明智光秀のイメージに近いかな。武闘派でモテモテってイメージはまったくなかったけど、そこは多分主人公補正によるものなので。
でもこの十兵衛、表面的には善良で正義感の強い人なんだけど、どこか冷たいところもあって、個人的にはやや共感しづらかった。昔単発ドラマで見た唐沢寿明の光秀のほうが好き。その共感しづらさも脚本家の意図通りだったりするのかもしれないけど。まあ実際の光秀は延暦寺焼き討ちのときノリノリで殺戮していたらしいので、それを考えるとものすごく好意的に描写されていることは確かなんだろう。

秀吉はとにかく不気味で怖かった。信長以上に冷酷だと思った。あの秀吉なら官兵衛に「好機が来ました」なんて言わせるまでもないのはわかる。秀吉は忠義者みたいな感じで描かれることもあったけど、だとしたら信長の息子にあんな仕打ちするわけないんで今回みたいな秀吉像のほうがしっくりくる。

あと私は今回の朝倉義景、結構好きだった。ネズミを探すシーン、十兵衛は呆れてすごく冷たい目で見てたけど私はいいお父さんだなと思って好感度が上がった。それに続く子供の毒殺エピソードも辛くて、一気に義景に感情移入してしまった。
だから義景に冷たい十兵衛に全く共感できなかった。十年も世話になったのに争うことに特に抵抗がないところにモヤッとしてしまった。義景は決して無能でも愚かでもないし人柄は信長や道三より確実にいいんだけど、十兵衛とは合わなかったみたいで。


不満点

総じて楽しめたんだけど、残念だったのは後半が駆け足気味だったこと。美濃編が丁寧に描かれていたのに対して、終盤は説明不足が目立った。

家臣たちの扱いもかなり物足りなかった。特に斉藤利三なんて初登場回以外に目立つエピソードは皆無だったし、いつの間に重臣になったんだ。この利三、歴史好きじゃない視聴者には存在すら認識されていなかったんだじゃないだろうか。

扱いと言えば筒井順慶も。光秀に味方しなかったことが意外、みたいなナレーションされても、「そりゃこのドラマを見る限りでは特に親密そうでもなかったしな」としか思えない。史実ではそりゃそうなんだろうけど。どちらかと言うと松永久秀の方が親しそうな感じに描写されていて、筒井順慶は松永久秀と対立していたというイメージしかなかったかな、このドラマでは。


最終回

信長が十兵衛に「一緒に茶でも飲んで暮らそう」みたいに言ってるシーンが愛の告白めいていてちょっと面白かった。

でも一番衝撃だったのは「信長様は変わってしまった、昔は人の心がわかる心優しきお方だった」という十兵衛の台詞。
あの信長のことをそんな風に思ってたなんてびっくりだよ。これを義昭に言うのならわかるんだけど。
信長は昔からほとんど変わっていないと思う。元々人の心なんかわからなかったし優しくもなかった。十代の頃から父親に生首プレゼントなんてやらかしてた人だから。それで喜んでもらえると本気で思ってたから。十兵衛は信長に幻想抱きすぎじゃない? 
主人公に致命的に人を見る目がないことが最後の最後になってわかってしまった。

人を見る目がないという点では信長も同じかもしれない。数話前、信長が家康について「竹千代だった頃から小心で争いを好まない男だった」みたいなことを言っていて、今まで竹千代のなにを見てきたんだ、と思った。そういう意味では十兵衛と信長は似た者同士だったのかもしれない。