場末の雑文置き場

好きなことを、好きなときに、好き勝手に書いている自己満ブログ。

「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」第一巻感想

2017年05月22日 | 小説

原題は「Percy Jackson and the Lightning Thief」。
本屋の帯によるとTOEIC470点以上レベルらしいが、そこまで易しくもないんじゃないかな。結構ボリュームもあるし、本当に470点の人がいきなり読んだら多分挫折する。600点くらいはあったほうが楽しめると思う。

ストーリーについて。
要約すると、冴えない劣等生だった主人公が実は神の子だと判明して、冒険の旅に出て、いきなり戦闘でも大活躍する話。この主人公にシンクロできて、俺は今はくすぶってるけど本当はすごい奴なんだ、みたいな気分を味わいたい人には楽しいんじゃないかな? 私にはちょっと合わなかったが。

主人公が神の血を引いているから特別、っていう前提からしてなんかダメだった。本人の努力や資質よりも結局は血筋が大事、って感じで。
当然ながら神様が一番偉くて、その下に半神がいて、さらにその下に神の血を引いていない一般人がいる、っていうような序列があるのも、身分制社会の肯定っぽくてちょっとな。

私は昔ギリシア神話が大好きだった。だからこの小説を読んだわけだけど、改めて読むとギリシア神話の神様たちって本当に身勝手でイライラする。あんな好き勝手に振る舞ってる神様に人間の行為を裁かれたりしたくないな。

メデューサ退治のエピソードも、爽快感よりも神々への嫌悪感とメデューサへの哀れみが先に来た。怪物に変えられるまでの経緯を見ると、メデューサが被害者でしかなくて。アテナ本当にひどい。主人公とアナベスが、自分の親たちのせいで怪物になってしまった彼女に対してなんの感情も抱かずにサクッと倒してしまったことにもモヤモヤした。
これが伝説の化け物たちじゃなくて神々と戦う話だったら、私はもっとスカッとしただろうな。

予言で言われていた裏切り者が誰か、っていうのは予想通り。裏切るに至った経緯なんかを聞いたけど、彼の気持ち、ちょっと分かるかも。あんな身勝手な神様たちが支配している世界なんて、ぶち壊したくもなるよなあ。

パーシーの母親が義父のゲイブを石に変えてしまうというオチにはゾッとした。これって殺人じゃないか。バレなきゃいいのかよ。DV夫とは言え人殺しといて一切お咎めなしってどうなんだ。しかもその石を人に売るなよ。買った人が可哀相だよ。そんな恐ろしいものをそうと知らずに持たされるなんて、嫌すぎる。


「The Princess Diaries」感想

2017年05月05日 | 小説

私は子供の頃から王子様やお姫様への憧れなんか皆無だった。と言うよりはむしろ反発していた。だから最初ちょっと危惧していたけど、そんな私のような人間にも楽しめる話だった。プリンセスとか言っても全然キラキラした話じゃなくて。

主人公のミアがスクールカースト底辺の冴えない子だったので感情移入しやすかった。自分がプリンセスだということが分かったときも喜ぶどころか「勘弁してくれよ」と思っていて、そのことを必死にみんなに隠そうとするのがいいね。

ミアはデートする相手が誰もいないことに悩んでいて、大半の同級生は毎週末にデートをしたりしている模様。まだ14歳でこれかよ。アメリカのカップル文化すげえな。日本だったら週末もデートなんかせずに友達とつるんでる、ミアのような子のほうが一般的だよな。
プロムなんかもあるし、アメリカってカップル文化の圧力すごそう。そもそも恋人が欲しくないって人は居づらそうだな。

それにスクールカーストもすごい。日本にもないことはないけど、アメリカほど露骨ではないよな。小説だから誇張はしているだろうが。スクールカースト上位って男女とも苦手なタイプだ。女はチアリーダー、男はスポーツマンで背が高くてゴツい。
私が入ったら、人種のことを抜きにして考えても間違いなく最底辺だろう。だからミアに共感できる。スクールカースト上位タイプの男子に憧れる気持ちは全く分からんが。

ただ、シングルマザーでも自由に恋愛できて、それを人からとやかく言われたりはしないところはアメリカのいいところだと思った。ミアの母親(シングルマザー)が自分の数学教師と付き合っていて、周囲もそのことを自然に受け入れている。
他の英米文学や映画を見ても、主人公の恋人がシングルマザーというケースはよく見る。それだけ数が多いのかもしれないけど。

日本だとシングルマザーってだけでもメチャクチャ肩身が狭くて、ちょっとしたことでゴチャゴチャ言う奴が決して少なくないからな。一時期安藤美姫が叩かれていたことがあったが、あれは意味がわからんかった。


「ダレン・シャン」第一巻を読んでみた

2016年07月24日 | 小説

以前からちょっと気になっていた「The Saga of Darren Shan」シリーズの第一巻「Cirque du Freak」、Kindle版は100円と格安だったので買ってみた。

シリアスな内容の割に英文は平易で、以前児童書だからと油断して「Arthur Trilogy」シリーズの第一巻に手を出し、十数ページで挫折した経験を持つ私でも楽に読めた。

英文のレベルは問題なかったんだが、問題は別のところにあった。クモが苦手でグロ耐性もあまりない私にはキツい内容で。
サーカスのシーンで狼男が突然凶暴化して近くにいた観客の腕を……なシーンで私は既に恐怖に震えていた。こんなのはまだ序の口なんだろう、という予感がして、第一巻で止めておいたほうがいいかも、とこの時点で思ってしまった。
そしてクモ。この小説ではクモが大活躍する。クモの補食が詳細に書かれているシーンもあって、そこは読んでいて本当に気持ち悪かった。

ダレンはかなりのクソガキで、こんなのが人気児童文学の主人公なのか、とちょっとビックリ。スティーブも将来的に犯罪者になりそうな素質を十分に感じる危ない子供なんだけど、ダレンもなかなかのものだ。さすがこいつら親友なだけのことはある。
人を見せ物にするようなサーカスなんてとんでもない、って先生にも母親にも言われてるのにお構いなし。しまいには窃盗までやってのける。それをおかしな理屈で正当化するところも、吸血鬼だとわかっている相手から盗む命知らずぶりも恐ろしい。ついでに言うと、でかくて危険な毒グモなんかをペットにしたがるところも私には到底理解不可能だ。

クモを盗んで調子に乗っていたダレンは冷たい目でしか見ることが出来なかったが、吸血鬼になってしまってからの描写は胸に迫るものがあった。人間でないものに変わってしまったのだと自覚していく恐怖とか、愛する家族と別れなければならない哀しみとか。
まあ、言ってしまえば大体自分で招いたことなんだけどね。

第一巻を読み終えた上での結論としては、第二巻以降はもう読まなくていいかな。これからもっと暗く、怖く、グロい話になり、人もバンバン死んでいくようなので。ハマっている人も多いみたいだけど、私には合わないみたい。面白いことは面白かったんが、もっと明るい話が読みたいんだ。


「オリバー・ツイスト」感想

2015年11月28日 | 小説

「Oxford Bookworms」シリーズの「Oliver Twist」を読んだ。

STAGE6にしては英文もかなり易しかったし、話がサクサク進むので割と楽しく読めた。昔、完訳版を読もうとして途中で挫折したことがあったけど、英語で書かれているこちらのほうがむしろ読みやすかった。

この話は要するに、勧善懲悪物だね。良い子のオリバーは幸せになり、悪者どもは滅ぶ。善良なのに報われなかった人がたった一人だけいるけど、その話は後述。

主人公のオリバーは、ロンドンの裏の世界に足を踏み入れることになる。オリバーはとても良い子なので、強要されても、食うのに困っても、犯罪に手を染めることを拒み続ける。ご立派なことで。

でもなあ。オリバーをこういう風に描くことが、犯罪に手を染めさせられてしまった子供たちを責める役割を果たしているような気がするんだよな。
貧しい、親もいなくて生きる手段のない子供が盗みなどの犯罪に手を染めることが、そんなに責められるべきことか? 確かに盗みは悪いことだよ。でも、弱い人間が生きるためにするなら仕方ないんじゃないか?

高校生の頃、芥川龍之介の「羅生門」の解説で国語の先生が言ってたことに強烈な違和感を持ったことを今でも覚えている。
「羅生門」は「下人の行方は、誰も知らない。」という一文で終わっている。先生の言うには、主人公は悪事に手を染めたから人から見向きもされなくなった、人は正しく生きなければならないという教訓がこの物語に込められているんだと。

本当にそうかな。あの主人公は追い詰められていた。盗みを働かなければ生きていけない状況になったことをはっきりと自覚し、それに沿った行動をしただけだ。つまり、主人公は黙って死を受け入れるべきだと言いたかったのかな。
先生は多分、盗むこと以外に生きる手段がない、というところまで追い詰められたことはないだろう。私もそうだけど。そんな恵まれた人間が、生きるためには犯罪に手を染めるしかない、弱い立場の人を責められるのか? それは傲慢なんじゃないか?

念のために書いておくと、あれは先生個人の意見で、芥川自身はそんなつもりで「羅生門」を書いたんじゃないと思う。

少し脱線してしまった。「羅生門」から「オリバー・ツイスト」に話を戻す。

オリバーは愛され体質の主人公だ。それに運も良い。最後は当然、オリバーにとってハッピーエンドになるわけだけど、オリバー自身は特に何もしていない。周りの人たちがオリバーのために勝手に動いてくれて、幸せが転がり込んできた感じ。オリバーはまだ幼い少年だから仕方のないことだけど、「主人公」としての魅力はイマイチかな。

主人公のオリバーよりもずっと印象的だったのが、ナンシーというキャラクター。この子がまた、不憫なんだ。
「善良な」人は基本的に皆最後幸せになっているのに、ナンシーだけはなんにも報われない。報われなさすぎて泣けてくる。あんなに良い子なのに。オリバーのためにあんなに尽くしたのに!

それにしても、ナンシーはどうして大して親しいわけでもないオリバーのためにあそこまでしてくれたんだろう。リトールド版だから省略されているだけで、元の話では二人の絆がもっとしっかり描かれていたりするんだろうか。多分そうなんだろうな。

ナンシーのバックグラウンドについても、リトールド版なのでかなり省略されているみたい。ビル・サイクスの愛人らしいことがなんとなく察せられる程度。
だから彼女の置かれている状況を理解するのは難しかった。ナンシーは「今更この世界から抜けることはできない」とブラウンロー氏の保護を拒んだ。そこに到るまでに、過去にどんなことがあったんだろう。かなり昔から、裏の世界で生きていたことが想像できるけど。


「虚栄の市」感想

2015年04月05日 | 小説

Oxford Bookwormsシリーズの「Vanity Fair (虚栄の市)」を読んだ。

正直言って面白くなかった。だけど妙に印象に残る小説ではあった。
私が読んだのは、かなり長編の小説を120ページにまとめたリトールド版。本来なら作者の長い語りがところどころに入っていたようなんだけど、そのあたりはほとんどカットしてあるみたい。作者の語り……めんどくさそう。リトールド版でもかなり長く感じたくらいだから、完全版なんてとても読めそうにないな。

この小説の登場人物の中で一番印象的なのはやっぱりベッキー・シャープ。とても頭が良くて野心の強い悪女。ほんのたまに人間らしさも見せるけど、基本的には性格悪い。情がない。憎めないという人もいるみたいだけど、私はやっぱり嫌いだこの女。
ベッキーは自分の息子をものすごく嫌っていて、人が見ているとき以外は完全に無視している。それだけならまだいいとしても、人の同情をひくために「息子と引き離されて辛い」と訴えたりするのが嫌らしい。自分から捨てたくせに。
最後には保険金殺人まで犯している。ベッキーがやったとはっきりとか書かれていないけど、多分そう。

このベッキー・シャープをはじめ、登場人物はかなり利己的でどうしようもない人が多い印象。その中で数少ない好感の持てる人物がウィリアム・ドビン。決してハンサムではないし、不器用な冴えない男なんだけどとても心の暖かい人。
そして意外に賢い。ベッキーは口がうまくてみんな(特に男性陣は)すぐに騙されてしまうんだけど、その嘘を即座に見抜けるくらいの洞察力を持っている。
このドビンはアミーリアという女性をずっと(15年も!)一途に思っている。一途すぎてちょっと怖い気もしないでもないけど。でもいい人だから応援したくなるんだ。この人の行く末を見守るためだけに、大して面白くもないこの小説を我慢して最後まで読んだようなもの。

そのドビンの憧れの女性、アミーリア・セドリーはベッキーの(一応)友人でベッキーとは正反対のタイプ。息子を溺愛しているところもベッキーとは対照的。 
アミーリアは優しいけどあまり頭は良くない、弱い女性。一人では何もできなくて、人に守ってもらってばっかり。これはこれで女性に嫌われそうな感じ。

アミーリアのドビンに対する扱いは結構ひどい。ずっと尽くしてきたドビンについに愛想を尽かされたとき、アミーリアの心情が語られるんだけど、これが「優しいアミーリア」像からはかけ離れた感じ。
「ドビンと結婚する気はないけど、そばにいて自分のためになんでもしてほしい。自分は彼のために何ひとつしてあげる気はないけど」って。おいおい。それはあんまりだよ。

そんなこともありつつ、紆余曲折を経て最後に二人は結ばれて幸せになる。よかったねドビン。
だけど、この二人をくっつけたのがベッキーなんだよね。このあたり、ちょっと複雑な気持ちにさせられる。