場末の雑文置き場

好きなことを、好きなときに、好き勝手に書いている自己満ブログ。

「大逆転裁判」感想

2023年01月31日 | ゲーム

注)ネタバレを含む。

長かった。始めてからクリアするまでに半年以上かかってしまった。通常の逆転裁判シリーズに比べてテンポが悪い。一話あたりに時間がかかる。チュートリアル回である第一話ですら長い。文字送りのスピードが自分が読むスピードより遅いのが地味にストレス。

反帝国主義で王政反対派の自分には辛いところがところどころあった。そもそも主人公が大日本帝国の人だし、イギリスの裁判では「女王陛下の名のもとに」って言葉が何度も繰り返されて聞くたびに心がザワザワした。クライマックスでは、何人もの司法関係者の意見を差し置いて国王一人の権限で全てが覆される。たとえその国王の判断が正しいものだったとしても、なんだかな。

亜双義はパッケージに結構デカく描かれているのと、イギリスに行く目的が語られないまま退場してしまったので、実は生きていて再登場するんだろうなと思っていたら、やっぱり。
プロフェッサーの正体は、2の第三話の時点でバンジークス兄じゃないかと思っていたので、亜双義父だったと聞いて意外だな、と思った。思ったら最終話で再どんでん返しがあり、結局最初に予想した通りになった。

ヴォルテックスが黒幕だったのも、やっぱりって感じ。ビジュアルやパッケージイラストでの立ち位置も怪しさ120%だったので。
意外だったのは慈獄判事。いつものサイバンチョ枠だと思ってたので完全にノーマークだった。あとスーツ姿の立ち絵で現れたとき、本気で誰だかわからなかった。
逆に、疑ってたのに最後まで味方だったのは御琴羽教授。第1話での登場時からメチャクチャ怪しいと思ってたし、バンジークスが恨んでいるのはこの人だと思ってたので、ここは騙された。

良かったところはキャラクターがヌルヌル動くこと。それがテンポの悪さの要因にもなっている気はするので諸刃の剣ではあるが。
登場人物それぞれのキャラもしっかり立っていて魅力があると思うし、ストーリー自体は面白い。でももう少しサクサク進められるようにして欲しかった。ボリュームがあるって必ずしもいいことばかりじゃないんだな、っていうのをこのゲームをやっていてものすごく感じた。あと国王頼みの解決方法には大分興ざめしたので、もう少し別の方法を考えてほしかったな。


映画「RRR」と日本の植民地支配

2023年01月08日 | 政治・社会

「RRR」の大きなテーマとして植民地支配はクソ、というものがある。そして日本はイギリスと同じように、他の国を植民地支配した側である、ということは日本人として忘れてはならないと思う。
「イギリス人以外はRRRを見よう!」みたいなこと言ってる人を時々見かけるけど、かれらは日本が植民地支配の問題に無関係だとでも思っているんだろうか。日本人はこの映画で描かれている「イギリス」を「日本」に置き換えて考えてみるべきだし、頭を空っぽにして楽しんでいい話ではないと思う。

でもこの映画を見た人たちの反応を見たところ全然その意識が無い人が多数のように見えた。この映画を見て「もし日本が植民地にされたら~」みたいなこと言ってる人も観測して呆れてしまった。日本は植民地支配「した」側だって認識が本当にないんだなって。

植民地支配という歴史的事実の捉え方がクソだな、と思う日本人のタイプは主に二つ。
植民地支配を悪いものとしつつも日本とそれを完全に切り離している人と、植民地支配をそれほど悪いものと捉えておらず、抵抗側の態度に難癖をつける人。

後者の人たちは、「RRR」でイギリスが悪く描かれすぎだと言う。とんでもない話だ。植民地に来る宗主国の人間っていうのはああいうものだし、現実に比べればあれはまだ甘い描写と言える。
「RRRはテロを擁護しているから、その点が大きなマイナスポイント」みたいに評している人もいたな。それを見て、苛烈な植民地支配への抵抗をそう呼ぶんだねっていうのと、やっぱり「テロリズム」っていうのは主に弱者側の暴力のみを批判するために使われることが多いよな、ということを思った。そして宗主国による虐殺は決して「テロ」とは呼ばれない。
他にもプロパガンダだとかナショナリズム色が強くて危ういとか、そういった批判もあった。そういうことは同じように植民地支配された国の人が言うならともかく、支配側だった国の人間が偉そうに言っていいことじゃないだろう。

そして、この映画を見て改めて思ったことは、私は抗日映画をもっといろいろ見たほうがいいな、ということ。「金子文子と朴烈」、「ラスト・プリンセス」は見たことがあるのだが、そのうち「密偵」も見よう。「イップマン」や「ドラゴン怒りの鉄拳」あたりも。


「エルピス」最終回感想

2023年01月02日 | 映画・ドラマ

近年のテレビドラマの中ではかなり攻めた内容だったと思う。「民自党」の描写とか。それだけじゃなく、それぞれのキャラクターが立っていて純粋に面白いドラマでもあった。

最終回については、モヤモヤは残りつつも、当初の目的だった松本さんを救うことはできた。現実ではそれも限りなく不可能に近いことだから、良かったとは言える。大門も倒せてハッピーエンドだったら嘘臭すぎるし。
こんなの大門サイドから見ればトカゲの尻尾切りにすぎないし、大門享の無念も晴らされないままではあるが。最後浅川も岸本も晴れ晴れとしたいい笑顔をみせていたけど、大門享の映像が取引材料に使われたことを多分岸本は知らないんだよな。知ったらどう思うかな、とは少し考えた。

浅川と斎藤の対峙シーンでは、斎藤の言葉がひたすらに薄っぺらかった。政権交代したら日本が大変なことになるみたいに言っていたけど、何言ってるんだろうと思った。すればいいじゃないか政権交代。したほうがいい。
制作側としてはこの斎藤の言葉を空虚なもののつもりで描いていると思う。でもこれを正論として捉えていたり、まだ斎藤のことを信じていたりする視聴者も少なからずいるようだ。
斎藤が将来民自党を良い方向に変えてくれるなんて私は全く信じていない。将来的には大門よりもっと恐ろしい存在になっているとさえ思う。斎藤は希望ではなく災いでしかない。

主人公の浅川がこんな斎藤のような人間にべた惚れして自分を見失ったりしているような描写は見ていて辛いものはあった。私は浅川のことは好きだけど、斎藤と一緒にいるときの浅川は正直嫌いだった。でもそれも敢えての描写だろう。主役サイドであろうと汚い面もきちんと描こうという。最終的には斎藤と決別できたわけだし。

こういう二面性が一番上手く出ていたキャラクターが村井だったのかな、と思う。熱いジャーナリストである一方、最初から最後までセクハラ親父で。脚本家のインタビュー記事も見たが、村井のセクハラ描写は批判が出ることを承知で敢えて入れたものらしい。もちろんセクハラが作中で許されているわけではなく、村井のセクハラ・パワハラ野郎の側面は最終回でも浅川に批判されている。
私はこういう嫌な側面があっても村井のことが結構好きなのだが、それは斎藤のおかげかもしれない。斎藤はわかりやすいセクハラはしないけど、実はものすごく女を下に見ていてモラハラ気質。よく知ってみると斎藤のほうがずっと有害な男だというのが回を追うごとにわかってくる感じなので。それで村井のセクハラが許されてはならないのはもちろんだけど。

ただ、「善玉も悪玉もない」っていうまとめ方には納得はできなかった。村井は善玉でも悪玉でもない人物だと思うが、大門や斎藤は悪玉としか思えなかったので。権力バランスを無視して相対化して「どちらにもそれぞれの正義がある」みたいなのはもう古いんじゃないだろうか。