閉会式も終わってしばらく経って今更だけど、パリオリンピックについて色々と思ったことがあったので書いてみる。
まず、一番気になることはロシアとベラルーシの選手は出られないのにイスラエルの選手は普通に無条件で出られるというダブルスタンダード。ベラルーシですら出られないならアメリカだってイスラエルを思いっきり後押ししてるし……って考えると収拾つかなくなるからみんな出場させたらいいと思う。「平和の祭典」を名乗るなら。
ロシア・ベラルーシの選手も条件付きで個人としてなら出場できるみたいで、その代わり表彰式での国旗掲揚と国歌はなくなるらしい。ロシア・ベラルーシに限らず表彰式での国旗国家なんてみんななくせばいいのに。
イスラエルのことを抜きにしたとしても、オリンピックというイベント自体に色々と問題がある。国威発揚的な側面だとか国ごとの金メダル数カウントみたいなくだらないことやってるとか、商業主義だとか。私も若い頃はオリンピックが好きでそういう側面を無視して楽しんでいたが、それではいけないと今は思う。
オリンピックなんてなくても競技ごとの世界選手権だけでもいいんじゃないだろうか。4年ごとに特別な大会があって、そのときだけ活躍した選手が毎年コンスタントに結果を残し続けた選手よりも評価されるっていうのもモヤモヤするし。
それに加えて、ガザが大変なことになっているのにこんなことで浮かれていていいのか、などと思いつつも、体操だけはしっかり見てしまった。体操ファンなので。オリンピックでもそうでなくても目の前に体操の試合があったら見ずにはいられない性分なので。
体操と言えば宮田のタバコ問題。SNSを見ると、20歳未満は酒タバコ禁止というのは若い人を罰するためではなく守るためにある法律である、という立法趣旨が全くわかっていないまま議論している人が多いような印象を受けた。罰則の対象は本当は本人ではなく周りの大人だし、法律違反だけど犯罪ではない。それなのに、宮田のことを犯罪者呼ばわりして、万引き犯、下手したら性犯罪者と同列みたいに語られるのを見てしまって悲しくなった。
私は宮田の今回の処分は行為に比して重いと思う。宮田が自分で辞退したということにはなっているが、周囲の圧力はあっただろう。
ちなみに、私は今の日本の女子体操選手の中で宮田が断トツで好きだ。しっかりした体格と力強い演技が魅力的な選手だと思う。宮田がこれで潰されてしまったら悲しい。今まで宮田のことを全く知らなかった、演技を見たこともない人たちが好き勝手に叩いているのを見てとても腹立たしく思っている。
競技のことについて。
男子団体決勝の終盤での蘇煒徳(スー・ウェイデ)の大きなミスと種目別鉄棒決勝での落下・着地失敗祭りは胸が痛かった。正直、優勝者おめでとうというよりもそちらの気持ちのほうが勝ってしまった。特に男子団体。
蘇偉徳は粛清されそうとか帰国したら命が危ないとか言ってた人、結構いたけど中国に対する偏見が強すぎるな。そんなことで粛清されたら誰もアスリートになんかならないわ。今回も中国チームのコーチとして来ていた滕海浜(テン・ハイビン)だってアテネオリンピックの団体でミスしまくってチームの足を引っ張って叩かれたけど、その何年か後も代表に選ばれてたし、今は立派にコーチを務めているし。多分蘇煒の気持ちが一番わかるのは滕海浜コーチだろう。
ちなみに日本だったらこういうときに選手を叩かない、って言ってる人もいるけどこれも大嘘。GG佐藤の件とか、同じようなことがあったときに日本人がどれだけ選手をバッシングするかも私は見てきた。そういうのを都合良く忘れる人が多いんだな。
蘇煒徳が今後どうなるかは周囲のサポートと本人のメンタル次第。今回のことで潰れないで今後も活躍してほしい。宮田も。
体操の大会がテレビ放映されると、つい他の視聴者の反応も検索などで毎回見てしまうのだが、それに関して今回驚いたことが一つあった。オリンピックの体操競技に関する日本の視聴者の反応はヘイト(主に中国選手に対する)とか採点に関するイチャモンが常々あるのに、今回は(上に書いたような中国社会に対する偏見は見られたものの選手に対しては)そんなこともあまりなく穏やかに見られた。むしろ中国選手、特にエースの張博恒(ヂァン・ボーホン)にかなり好意的な反応が多くてとても嬉しかった。男子団体と個人総合で日本選手が金メダルをとれたことで視聴者に気持ちの余裕ができたせいもありそうだけど、少しだけ希望の持てる出来事ではあった。
ちなみに中国に礼儀正しくてスポーツマンシップのある選手が多いのは、私が体操を見始めた15年以上前からずっとそう。あと平均的に日本選手に比べて愛想が良くてカメラパフォーマンスなども積極的にやってくれる。それなのに中国選手のことを変な色眼鏡で見ていてそのことに気付かない人が今までは多かったが、今回変わって良かった。
体操競技は基本的には個人戦かつ相手を打ち負かす競技ではないので、国は関係ない、というスタンスで見やすいのがいいところだと思う。自国選手に限らず好きな選手を応援している、というファンが対戦型競技に比べれば多い。私もいつもそんな感じで体操を見ていて、日本の金メダル数にはあまり興味がない。なるべく多くの選手が失敗せずに良い演技をみせてくれるのが一番いい。
誰が金メダルで嬉しかったとかどの演技が素晴らしかったとか、思ったことはいろいろあるけど浮かれている場合でもないと思うので、パリオリンピックの体操に関する話はこのくらいにしておく。
次に柔道の話。
柔道はニュースでのダイジェスト程度しか見ていないんだけど、外国選手が勝つと「あれは柔道じゃなくてJUDOだ」とか審判がどうのとか言ってる日本人が散見されて、大変みっともないと思った。そんなのただの負け惜しみでしかない。昔のルールのままだったら競技人口の多い世界的な競技になんかなっていないだろうが、それでいいんだろうか。鎖国でもしたいのか。
「誤審」と騒がれているものも、本当に誤審なのだろうか? 基本的にテレビの解説者は日本選手寄りの解説をするし、視聴者も日本選手贔屓のフィルターがかかった目で試合を見ているだろう。その結果、日本寄りでない公平な判定がおかしなもののように見えてしまっているだけ、という可能性もあるのでは? 私は体操で「日本選手の点数だけ不当に低くされている」あるいは「中国選手の点が不当に高くされている」と思い込む人が毎回現れるのをずっと見てきたので、柔道でも似たような現象が起こっているのではないかという気がしている。
また、柔道には私が悪い意味で注目していたイスラエル代表のピーター・パルチックも参戦していた。新宿のパレスチナ連帯デモを妨害してきたクソ野郎だ。私もそのデモに参加していて、この人がわざわざ柔道着に着替えて威嚇してくるところを目の前でしっかり見ていた。しかもそれだけじゃなく、パレスチナに打ち込む爆弾にサインして、それを嬉々として自分のSNSに載せたりもしていたらしい。
その選手が柔道で銅メダルをとり、「大切なのは平和」などとほざいたとか。大変胸糞悪い。どの口が言ってんだと思う。そしてそれを美談みたいに取り上げる朝日新聞も最低。
最後にボクシングの話。オリンピック関連だと、SNS上ではこの話題が一番盛り上がっていたのではないだろうか。女子競技に出場した選手の中にトランスジェンダーがいるとのデマが拡散されたが、その選手たちはトランスジェンダーではなくDSDだったことがわかった。だがデマを撒いた人らは全く反省していないようだ。(トランスジェンダーが女子競技に参加することが悪いとも私は思わないが、今回とは関係ない問題なので深く立ち入らないことにする。)
成長した後になってからテストステロン値だの染色体だのを審査して、場合によってはその人を女性の枠から外す、みたいなやり方はど真ん中の女性差別ではないか、というのは前から言われてきたことだ。テストステロン値が高ければ高いほど有利なら男性だって同じはずなのに、男子選手は通常の男性よりはるかにテストステロン値が高くても全く問題にされることはない。しかも性別が疑われるのはほとんどの場合非白人の選手だ。
性別は実は厳密に2つに分けられるものではないらしいし、こういうのは女性を弱くあらねばならないとして決められた枠に押し込むような行為に思えてしまう。
悪名高きJ.K.ローリング(ハリポタ作者でトランスヘイター)もこのデマを拡散していたとか。被害者のImane KHELIF選手はローリングとイーロン・マスクらに法的措置をとるらしい。
ローリングは本当にそろそろなんらかの制裁を受けてほしい。ハリー・ポッターを持ち上げるのももうやめよう。舞台ももう上演しなくていいし、テーマパークもやめたほうがいい。さすがにここまで来ると、作者と作品は別だという言い分ももう苦しくなるのでは。