帰ってきました!
怒濤のスナック・ゆうすけ。
どうぞ最後までおつきあい下さい・・・
古びた街角
薄汚れた裏通りにあるスナック
建物に不釣り合いな自動ドア
ガラスは綺麗に磨かれている
時刻は午後5時
店は開いているのだろうか
分からない
中で何かしている男
ゆうすけ
ここのマスターだ
何か探している
引き出しをあちこち
開けている
あきらめた
彼はカウンターに腰掛け
宙を見上げている
蒸し暑い梅雨の夕暮れ
オレンジ色の夕日が
どこかのビルに反射し
こんな場所にまで届いている
ならぶグラス類
そこにオレンジの光が当たる
なんだか
そこだけみれば
昭和の香りがする
マスターがソワソワしてるせいで
せっかくのムードが台無しだ
彼は蠅を追っている
電気は着いていない
あえて着けていないのか
まだ開店前なのか
マスターはふと植物を見ている
その植物はおそらく
ポトス
彼はその中の一枚の葉を見つめている
うどんこ病だ
植物の病気で
真っ白い粉が葉を覆うのだ
彼はフッと別の植物を見る
ベンジャミン
うどん粉病だ
どうやら店内でうどん粉病は
空気感染しているようだ
その瞬間、
マスターは変な顔をした
危ない店だ
day 105
ウィーン・・・
客:「よっ」
ゆうすけ:「おっ、いい顔してる!」
「パチンコでしょ!」
客:「ちがうよ」
「そんなんじゃない」
ゆうすけ:「違うんすか」
客:「ま、生ちょうだいよ」
ゆうすけ:「めずらしい」
客:「いいから」
プシ~・・・
トン
ゆうすけ:「何があったんですか?」
客:「子供ができたんだ」
ゆうすけ「!」
客:「さっき電話でさ」
「あいつもビックリしててさ」
「あっ赤ちゃんできたわよーってさ」
ゆうすけ:「すごいですね・・・」
「ま、じゃ」
「妊娠に」
客:「かんぱーい」
グビ
グビ
グビ
グビ
客:「プヘーっうんまいねー」
「父親になった一杯」
ゆうすけ:「家帰んなくていいんすか?」
客:「いんだよ 」
「今日生まれるんじゃないし」
ゆうすけ:「待ってるんじゃないですか?」
客:「照れくさいんだよ」
ゆうすけ:「 」
客:「帰ったらなんて言えばいい?」
ゆうすけ:「おめでとう、ですかね」
客:「オレの子供でもあるんだけど」
ゆうすけ:「じゃ、」
「うおーって叫ぶ」
客:「 」
「それいい!」
「叫ぶだけ」
ゆうすけ:「奥さんの名前を叫んだら」
「どうです?」
客:「キヨコーっ!」
ゆうすけ:「胸が熱くなります」
客:「ウオーっ キヨコーっ!」
ゆうすけ:「ここでやってないで」
「早く帰ったらどうです?」
客:「 そうだな 」
day 110
OL:「ねえ、このメニュー・・・」
「焼き宇宙って何?」
ゆうすけ:「 」
バッ!
OL:「何どうしたの!?」
ゆうすけ:「うあーっ」
ガダンッ
ダダダッ
OL:「ちょと何よっ!」
「マスターどうしなのよっ」
ゆうすけ:「う う う う」
OL:「泣いてるの?」
ゆうすけ:「う~・・・」
OL:「泣いてるのね」
day 110
ゆうすけ:「どう?」
客:「いいっすね~」
ゆうすけ:「 」
客:「へへへ」
「へへ・・・」
ゆうすけ:「いいでしょ」
「ククク・・・」
客:「お、おおおお~」
ゆうすけ:「ん?」
「ん~・・・」
「クククククク・・・」
客:「 」
day 112
客:「生中」
ゆうすけ:「 」
客:「生中で」
客:「聞いてる?」
ゆうすけ:「 」
客:「なんなの?何睨んでんの?」
「客を」
ゆうすけ:「 」
ガタン・・・
客:「 ! 」
ゆうすけ:屐
客:「な 何よ!」
「離しなさいよっ」
「くっ・・・」
「く苦しい・・・」
ゆうすけ:「 」
客:「 」
ガクッ・・・
day 113
ウィーン・・・
客:「こんばんはっ」
ゆうすけ:「おっ、」
「いらっしゃい」
客:「なに、寝ぼけた顔して」
ゆうすけ:「いや寝てないよ、」
「ちょっとパンフみてたの」
客:「パンフ?」
ゆうすけ:「パンフレット」
客:「真剣にパンフ見てたんだ」
ゆうすけ:「まあね、」
「座んなよ、とりあえず」
客:「あ、そうね。」
ギシ・・・
客:「生ちょうだい」
ゆうすけ:「はい。」
プシ~・・・
トン
客:「フ~のど乾いちゃった」
ゆうすけ:「暑いもんね」
客:「 」
グビ
グビ
グビ
グビ
ゆうすけ:「呑むねぇ、今日は」
客:「まぁね」
客:「マスター、さっき見てたやつ」
「パンフ、見せてよ」
ゆうすけ:「やだよ」
客:「なんか気になる」
「ね見せて 」
ゆうすけ:「これ」
ピラ・・・
客:「ジムじゃん」
「マスタージム行くの?」
「プッ・・」
ゆうすけ:「 」
「ちょっと運動したくてさ」
「最近ぷよぷよしてきてさ」
客:「うん、確かに」
「ぷっ・・・」
ゆうすけ:「でしょ、だからさ」
「結構本気なんだよね」
客:「 」
「プッ・・」
ゆうすけ:「通ったらまじがんばるよオレ」
「もうさ、レッチリのアンソニーみたいに」
「ムキムキになるまでやり通したいの」
客:「え~」
「どうかな~ それ」
ゆうすけ:「なんでよ」
「なにが変なんだよ」
客:「こんな店でねムキムキのマスターって」
「恐いよ 想像だけでも」
ゆうすけ:「んー。」
「この店で考えると」
「確かに変かも。」
「やっぱダメか」
客:「そ、止めときなって」
day 115
ウィーン・・・
客:「今晩は。」
ゆうすけ:「あ、どもっ」
客:「ここ、いいかな?」
ゆうすけ:「 」
「もちろん。」
キー・・・
客:「あれっ、マスターなんか爽やかだね」
ゆうすけ:「分かります?」
客:「うん、なんか サッパリしてる。」
ゆうすけ:「エステ行ったんですよ、昨日」
客:「 」
ゆうすけ:「メンズエステ」
客:「へえ~」
「どうなの、エスてって」
ゆうすけ:「バカにできないですよ」
「まじで。」
客:「凄いんだ」
「TBC?」
ゆうすけ:「高野ビューティークリニック」
客:「どんな感じ?」
ゆうすけ:「ま、説明は難しいですね。」
「うまく伝えられない。」
客:「揉まれるの?」
ゆうすけ:「ええ。いろんなとこを。」
客:「やらしいね、その表現」
ゆうすけ:「揉んでくんすよ、いろんなとこ」
客:「そこホントにエステなの?」
ゆうすけ:「当たり前ですよ」
「宣伝してる奴ですよ」
客:「でもま、ホントつるつるしてるよ。顔」
ゆうすけ:「イケてますかね?」
客:「男性が美肌でもな~」
ゆうすけ:「眉毛もやってもらったんですよね」
客:「ああ、そうだね」
「まいいや生くれる?」
ゆうすけ:「はいよっ!」
day 116
ウィーン・・・
客:「 あっ、開いてる・・・ 」
ゆうすけ:「 」
「い い いらっしゃい」
客:「どうしたの、マスター」
ゆうすけ:「っちょと 病気してね」
客:「随分長いこと休んでたよね」
ゆうすけ:「すすす すみません」
「すすす すみませんでした」
「すすすす」
客:「そんな謝んないでいいよ」
「で、もういいの? 具合は」
ゆうすけ:「医者はもう、大丈夫だって」
客:「そうなの。」
「まあ、働いた方が気が入っていいかもね」
「じゃ、生ちょうだい」
ゆうすけ「 はいよ 」
プシ~・・・
トン
客:「じゃ、マスターの復帰に」
「乾杯!」
ゆうすけ:「どうも」
グビ
グビ
グビ
グビ
客:「っあ~!」
「うまい!」
ゆうすけ:「 」
客:「で、どこが悪かったの?」
ゆうすけ:「精神です」
day 117
ウィーン・・・
ゆうすけ:「あ、あの」
客:「やってます?」
ゆうすけ:「午後5時からなんですけど」
客:「あ、そう。今何時?」
ゆうすけ:「午前10時前です。」
客:「ちょっと待ち合わせでさ」
「ここにいてもいいかな?」
ゆうすけ:「それは困りますよ」
「 」
客:「金は払うよ」
ゆうすけ:「金は問題じゃないんですよ」
「ルールなんですよ」
客:「堅い奴だな~」
ゆうすけ:「開店前は人は入れないんです」
客:「もういいよ」
ゆうすけ:「座んないで下さいよ」
day 119
客:「ねぇ、マスター」
「初めてのキスは」
「レモンの味なの?」
ゆうすけ:「知らねえ」
day 120
ウィーン・・・
客:「 」
ゆうすけ:「いらっしゃい」
客:「あ、ども」
ゆうすけ:「お好きな席でどうぞ。」
客:「 」
キ~・・・
ゆうすけ:「何します?」
客:「えーと」
「ジントニック」
ゆうすけ:「はい。」
トクトクトク・・・
シュパッ
トクトク・・・
ゆうすけ:「はい どうぞ」
客:「 」
クッ
クッ
クッ
ゆうすけ:「お名前は?」
客:「?」
「たけし、だけど?」
day 121
ゆうすけ:「春枝さんはさ、」
「どういう人がタイプなの?」
客:「えー。」
ゆうすけ:「どんな人が好き?」
客:「なんだろうなー。」
ゆうすけ:「 」
客:「うぶな人」
「かな。」
ゆうすけ:「えっ うぶな人って?」
客:「すれてない人」
ゆうすけ:「あ、俺全然すれてない」
「だったら俺、うぶだよ」
客:「あとね、純粋な人」
ゆうすけ:「へえ~。」
「結構、俺も純粋なんだよね~。」
客:「後は、」
「二重の人。」
ゆうすけ:「面食いか!」
客:「ははは」
「うける」
ゆうすけ:「分かった?タカアンドトシ」
「そうか、二重か・・・」
day 122
ウィーン・・・
客:「どもー。」
ゆうすけ:「お、どうも」
客:「ちかりたにー」
ゆうすけ:「?」
客:「え、あ、つかれたなーって言ったの」
ゆうすけ:「何飲みます?」
客:「ネメチュウ」
ゆうすけ:「?」
客:「生中」
ゆうすけ:「ちゃんと言って下さいよ」
「分かりませんから」
「その口調」
客:「ごめん」
プシ~・・・
トン
ゆうすけ:「はい、おまち」
客:「ども。」
グビグビ
グビグビ
プピッ
ゆうすけ:「?」
客:「ごめん」
「屁こいちゃった」
ゆうすけ:「もう・・・」
「帰ってよ・・・」
day 123
ウィーン・・・
客:「 よっマスター」
ゆうすけ:「お、久しぶりだね~。」
「なに元気してたの?」
客:「元気元気ぴんぴんだよ」
「とりあえず生で」
ゆうすけ:「へ~」
「5年ぶりくらいだよね~」
プシ~・・・
トン
客:「5年は経つよな。」
「じゃ、ま・・・」
ゆうすけ:「再会に・・・」
客:「カンパーイ」
ゆうすけ:「メリークリスマース!」
客:「ちょっと早ーだろお前それ」
ゆうすけ:「ごめんごめん」
グビ
グビ
客:「 お前は変わんねーな」
「ちっとも」
ゆうすけ:「お前もな」
客:「 」
グビ
グビ
ゆうすけ:「今何してんの?」
客:「ん? 俺か?」
ゆうすけ:「 」
客:「バスの運転手」
ゆうすけ:「へ~」
「すごいね」
客:「厳しい世界よ」
「バスも」
ゆうすけ:「厳しんだ」
客:「客はみんなお年寄りじゃんか」
ゆうすけ:「いや俺バスあんま乗んないんだ」
客:「平均年齢は70超えてるよ」
ゆうすけ:「すげ!」
客:「みんな耳遠くてさ」
「注意しても聞かねんだわ」
ゆうすけ:「ストレスたまるね」
客:「手すりにつかまらないでさ」
「スッ転んじゃったりね」
ゆうすけ:「おじいさん?」
客:「おばあさん」
「後は喧嘩したりね」
「席奪い合ったりね」
ゆうすけ:「バスの中って大変だね」
客:「まあね」
day 128
ウィーン・・・
客:「どうも」
ゆうすけ:「おっ珍しい!」
客:「久しぶりだよね」
ゆうすけ:「ですよね」
「まどぞどぞ」
客:「よっこいせと」
ゆうすけ:「生でいいですか?」
客:「うん」
「いや~・・・」
「かわんないね~ここは」
プシ~
トン・・・
ゆうすけ:「かわりませんよ。」
「うちは」
「はい、どうぞ」
客:「じゃま、乾杯」
ゆうすけ:「 」
グビ
グビ
グビ
客:「くーっ・・・」
ゆうすけ:「 」
day 130
ゆうすけ:「あけましておめでとう、フミ」
フミ:「おめでとう。」
「ゆうちゃん、それ何?」
ゆうすけ:「ん、」
「みかん」
day 131
ウィーン・・・
客:「あけましておめでとー!」
ゆうすけ:「おめでとうございます」
客:「なんか今日暖かいよね」
「よっこいせっと」
ゆうすけ:「暖房入れてますよ」
客:「だよね」
「なしじゃまだ寒いよね」
ゆうすけ:「何します?」
客:「生以外って何があるの?」
ゆうすけ:「例えば?」
客:「マスターお勧めとかあるの?」
ゆうすけ:「なんか、ですね」
「最近酒が美味くないんすよ」
客:「なんでもいいからさ」
「マスターおまかせでちょうだいよ」
ゆうすけ:「ソフトドリンクでいいですか?」
客:「ん ん なんでもいい」
ゆうすけ:「じゃ」
「Qooを」
トン・・・
客:「なにこれ、ずいぶんかわいいね」
ゆうすけ:「最近僕こればっかですよ」
トクトクトク
トン
ゆうすけ:「はい、お待ち」
客:「なになんかで割ったりしないの?」
「氷もなし?」
ゆうすけ:「これが一番美味いんです」
客:「 」
グビ
グビ
グビ
客:「 」
「ま、ジュースだよね。普通に」
ゆうすけ:「 」
客:「 」
ゆうすけ:「 」
day 132
外国人客:「スミマセン」
ゆうすけ:「はい、」
外国人客:「コノマチノ」
「ホットプレイス」
「オシエテクダサイ」
ゆうすけ:「 」
「ホットプレイス?」
外国人客:「オシエテクダサイ」
ゆうすけ:「えー、なんだろ」
客:「川崎のラゾーナ、いいよ。」
ゆうすけ:「ラゾーナ。」
「イズ ホット。」
外国人客:「オー、ラゾーナ!」
ゆうすけ:「イエス」
客:「この町じゃないんだけどね・・・」
つづく・・・
怒濤のスナック・ゆうすけ。
どうぞ最後までおつきあい下さい・・・
古びた街角
薄汚れた裏通りにあるスナック
建物に不釣り合いな自動ドア
ガラスは綺麗に磨かれている
時刻は午後5時
店は開いているのだろうか
分からない
中で何かしている男
ゆうすけ
ここのマスターだ
何か探している
引き出しをあちこち
開けている
あきらめた
彼はカウンターに腰掛け
宙を見上げている
蒸し暑い梅雨の夕暮れ
オレンジ色の夕日が
どこかのビルに反射し
こんな場所にまで届いている
ならぶグラス類
そこにオレンジの光が当たる
なんだか
そこだけみれば
昭和の香りがする
マスターがソワソワしてるせいで
せっかくのムードが台無しだ
彼は蠅を追っている
電気は着いていない
あえて着けていないのか
まだ開店前なのか
マスターはふと植物を見ている
その植物はおそらく
ポトス
彼はその中の一枚の葉を見つめている
うどんこ病だ
植物の病気で
真っ白い粉が葉を覆うのだ
彼はフッと別の植物を見る
ベンジャミン
うどん粉病だ
どうやら店内でうどん粉病は
空気感染しているようだ
その瞬間、
マスターは変な顔をした
危ない店だ
day 105
ウィーン・・・
客:「よっ」
ゆうすけ:「おっ、いい顔してる!」
「パチンコでしょ!」
客:「ちがうよ」
「そんなんじゃない」
ゆうすけ:「違うんすか」
客:「ま、生ちょうだいよ」
ゆうすけ:「めずらしい」
客:「いいから」
プシ~・・・
トン
ゆうすけ:「何があったんですか?」
客:「子供ができたんだ」
ゆうすけ「!」
客:「さっき電話でさ」
「あいつもビックリしててさ」
「あっ赤ちゃんできたわよーってさ」
ゆうすけ:「すごいですね・・・」
「ま、じゃ」
「妊娠に」
客:「かんぱーい」
グビ
グビ
グビ
グビ
客:「プヘーっうんまいねー」
「父親になった一杯」
ゆうすけ:「家帰んなくていいんすか?」
客:「いんだよ 」
「今日生まれるんじゃないし」
ゆうすけ:「待ってるんじゃないですか?」
客:「照れくさいんだよ」
ゆうすけ:「 」
客:「帰ったらなんて言えばいい?」
ゆうすけ:「おめでとう、ですかね」
客:「オレの子供でもあるんだけど」
ゆうすけ:「じゃ、」
「うおーって叫ぶ」
客:「 」
「それいい!」
「叫ぶだけ」
ゆうすけ:「奥さんの名前を叫んだら」
「どうです?」
客:「キヨコーっ!」
ゆうすけ:「胸が熱くなります」
客:「ウオーっ キヨコーっ!」
ゆうすけ:「ここでやってないで」
「早く帰ったらどうです?」
客:「 そうだな 」
day 110
OL:「ねえ、このメニュー・・・」
「焼き宇宙って何?」
ゆうすけ:「 」
バッ!
OL:「何どうしたの!?」
ゆうすけ:「うあーっ」
ガダンッ
ダダダッ
OL:「ちょと何よっ!」
「マスターどうしなのよっ」
ゆうすけ:「う う う う」
OL:「泣いてるの?」
ゆうすけ:「う~・・・」
OL:「泣いてるのね」
day 110
ゆうすけ:「どう?」
客:「いいっすね~」
ゆうすけ:「 」
客:「へへへ」
「へへ・・・」
ゆうすけ:「いいでしょ」
「ククク・・・」
客:「お、おおおお~」
ゆうすけ:「ん?」
「ん~・・・」
「クククククク・・・」
客:「 」
day 112
客:「生中」
ゆうすけ:「 」
客:「生中で」
客:「聞いてる?」
ゆうすけ:「 」
客:「なんなの?何睨んでんの?」
「客を」
ゆうすけ:「 」
ガタン・・・
客:「 ! 」
ゆうすけ:屐
客:「な 何よ!」
「離しなさいよっ」
「くっ・・・」
「く苦しい・・・」
ゆうすけ:「 」
客:「 」
ガクッ・・・
day 113
ウィーン・・・
客:「こんばんはっ」
ゆうすけ:「おっ、」
「いらっしゃい」
客:「なに、寝ぼけた顔して」
ゆうすけ:「いや寝てないよ、」
「ちょっとパンフみてたの」
客:「パンフ?」
ゆうすけ:「パンフレット」
客:「真剣にパンフ見てたんだ」
ゆうすけ:「まあね、」
「座んなよ、とりあえず」
客:「あ、そうね。」
ギシ・・・
客:「生ちょうだい」
ゆうすけ:「はい。」
プシ~・・・
トン
客:「フ~のど乾いちゃった」
ゆうすけ:「暑いもんね」
客:「 」
グビ
グビ
グビ
グビ
ゆうすけ:「呑むねぇ、今日は」
客:「まぁね」
客:「マスター、さっき見てたやつ」
「パンフ、見せてよ」
ゆうすけ:「やだよ」
客:「なんか気になる」
「ね見せて 」
ゆうすけ:「これ」
ピラ・・・
客:「ジムじゃん」
「マスタージム行くの?」
「プッ・・」
ゆうすけ:「 」
「ちょっと運動したくてさ」
「最近ぷよぷよしてきてさ」
客:「うん、確かに」
「ぷっ・・・」
ゆうすけ:「でしょ、だからさ」
「結構本気なんだよね」
客:「 」
「プッ・・」
ゆうすけ:「通ったらまじがんばるよオレ」
「もうさ、レッチリのアンソニーみたいに」
「ムキムキになるまでやり通したいの」
客:「え~」
「どうかな~ それ」
ゆうすけ:「なんでよ」
「なにが変なんだよ」
客:「こんな店でねムキムキのマスターって」
「恐いよ 想像だけでも」
ゆうすけ:「んー。」
「この店で考えると」
「確かに変かも。」
「やっぱダメか」
客:「そ、止めときなって」
day 115
ウィーン・・・
客:「今晩は。」
ゆうすけ:「あ、どもっ」
客:「ここ、いいかな?」
ゆうすけ:「 」
「もちろん。」
キー・・・
客:「あれっ、マスターなんか爽やかだね」
ゆうすけ:「分かります?」
客:「うん、なんか サッパリしてる。」
ゆうすけ:「エステ行ったんですよ、昨日」
客:「 」
ゆうすけ:「メンズエステ」
客:「へえ~」
「どうなの、エスてって」
ゆうすけ:「バカにできないですよ」
「まじで。」
客:「凄いんだ」
「TBC?」
ゆうすけ:「高野ビューティークリニック」
客:「どんな感じ?」
ゆうすけ:「ま、説明は難しいですね。」
「うまく伝えられない。」
客:「揉まれるの?」
ゆうすけ:「ええ。いろんなとこを。」
客:「やらしいね、その表現」
ゆうすけ:「揉んでくんすよ、いろんなとこ」
客:「そこホントにエステなの?」
ゆうすけ:「当たり前ですよ」
「宣伝してる奴ですよ」
客:「でもま、ホントつるつるしてるよ。顔」
ゆうすけ:「イケてますかね?」
客:「男性が美肌でもな~」
ゆうすけ:「眉毛もやってもらったんですよね」
客:「ああ、そうだね」
「まいいや生くれる?」
ゆうすけ:「はいよっ!」
day 116
ウィーン・・・
客:「 あっ、開いてる・・・ 」
ゆうすけ:「 」
「い い いらっしゃい」
客:「どうしたの、マスター」
ゆうすけ:「っちょと 病気してね」
客:「随分長いこと休んでたよね」
ゆうすけ:「すすす すみません」
「すすす すみませんでした」
「すすすす」
客:「そんな謝んないでいいよ」
「で、もういいの? 具合は」
ゆうすけ:「医者はもう、大丈夫だって」
客:「そうなの。」
「まあ、働いた方が気が入っていいかもね」
「じゃ、生ちょうだい」
ゆうすけ「 はいよ 」
プシ~・・・
トン
客:「じゃ、マスターの復帰に」
「乾杯!」
ゆうすけ:「どうも」
グビ
グビ
グビ
グビ
客:「っあ~!」
「うまい!」
ゆうすけ:「 」
客:「で、どこが悪かったの?」
ゆうすけ:「精神です」
day 117
ウィーン・・・
ゆうすけ:「あ、あの」
客:「やってます?」
ゆうすけ:「午後5時からなんですけど」
客:「あ、そう。今何時?」
ゆうすけ:「午前10時前です。」
客:「ちょっと待ち合わせでさ」
「ここにいてもいいかな?」
ゆうすけ:「それは困りますよ」
「 」
客:「金は払うよ」
ゆうすけ:「金は問題じゃないんですよ」
「ルールなんですよ」
客:「堅い奴だな~」
ゆうすけ:「開店前は人は入れないんです」
客:「もういいよ」
ゆうすけ:「座んないで下さいよ」
day 119
客:「ねぇ、マスター」
「初めてのキスは」
「レモンの味なの?」
ゆうすけ:「知らねえ」
day 120
ウィーン・・・
客:「 」
ゆうすけ:「いらっしゃい」
客:「あ、ども」
ゆうすけ:「お好きな席でどうぞ。」
客:「 」
キ~・・・
ゆうすけ:「何します?」
客:「えーと」
「ジントニック」
ゆうすけ:「はい。」
トクトクトク・・・
シュパッ
トクトク・・・
ゆうすけ:「はい どうぞ」
客:「 」
クッ
クッ
クッ
ゆうすけ:「お名前は?」
客:「?」
「たけし、だけど?」
day 121
ゆうすけ:「春枝さんはさ、」
「どういう人がタイプなの?」
客:「えー。」
ゆうすけ:「どんな人が好き?」
客:「なんだろうなー。」
ゆうすけ:「 」
客:「うぶな人」
「かな。」
ゆうすけ:「えっ うぶな人って?」
客:「すれてない人」
ゆうすけ:「あ、俺全然すれてない」
「だったら俺、うぶだよ」
客:「あとね、純粋な人」
ゆうすけ:「へえ~。」
「結構、俺も純粋なんだよね~。」
客:「後は、」
「二重の人。」
ゆうすけ:「面食いか!」
客:「ははは」
「うける」
ゆうすけ:「分かった?タカアンドトシ」
「そうか、二重か・・・」
day 122
ウィーン・・・
客:「どもー。」
ゆうすけ:「お、どうも」
客:「ちかりたにー」
ゆうすけ:「?」
客:「え、あ、つかれたなーって言ったの」
ゆうすけ:「何飲みます?」
客:「ネメチュウ」
ゆうすけ:「?」
客:「生中」
ゆうすけ:「ちゃんと言って下さいよ」
「分かりませんから」
「その口調」
客:「ごめん」
プシ~・・・
トン
ゆうすけ:「はい、おまち」
客:「ども。」
グビグビ
グビグビ
プピッ
ゆうすけ:「?」
客:「ごめん」
「屁こいちゃった」
ゆうすけ:「もう・・・」
「帰ってよ・・・」
day 123
ウィーン・・・
客:「 よっマスター」
ゆうすけ:「お、久しぶりだね~。」
「なに元気してたの?」
客:「元気元気ぴんぴんだよ」
「とりあえず生で」
ゆうすけ:「へ~」
「5年ぶりくらいだよね~」
プシ~・・・
トン
客:「5年は経つよな。」
「じゃ、ま・・・」
ゆうすけ:「再会に・・・」
客:「カンパーイ」
ゆうすけ:「メリークリスマース!」
客:「ちょっと早ーだろお前それ」
ゆうすけ:「ごめんごめん」
グビ
グビ
客:「 お前は変わんねーな」
「ちっとも」
ゆうすけ:「お前もな」
客:「 」
グビ
グビ
ゆうすけ:「今何してんの?」
客:「ん? 俺か?」
ゆうすけ:「 」
客:「バスの運転手」
ゆうすけ:「へ~」
「すごいね」
客:「厳しい世界よ」
「バスも」
ゆうすけ:「厳しんだ」
客:「客はみんなお年寄りじゃんか」
ゆうすけ:「いや俺バスあんま乗んないんだ」
客:「平均年齢は70超えてるよ」
ゆうすけ:「すげ!」
客:「みんな耳遠くてさ」
「注意しても聞かねんだわ」
ゆうすけ:「ストレスたまるね」
客:「手すりにつかまらないでさ」
「スッ転んじゃったりね」
ゆうすけ:「おじいさん?」
客:「おばあさん」
「後は喧嘩したりね」
「席奪い合ったりね」
ゆうすけ:「バスの中って大変だね」
客:「まあね」
day 128
ウィーン・・・
客:「どうも」
ゆうすけ:「おっ珍しい!」
客:「久しぶりだよね」
ゆうすけ:「ですよね」
「まどぞどぞ」
客:「よっこいせと」
ゆうすけ:「生でいいですか?」
客:「うん」
「いや~・・・」
「かわんないね~ここは」
プシ~
トン・・・
ゆうすけ:「かわりませんよ。」
「うちは」
「はい、どうぞ」
客:「じゃま、乾杯」
ゆうすけ:「 」
グビ
グビ
グビ
客:「くーっ・・・」
ゆうすけ:「 」
day 130
ゆうすけ:「あけましておめでとう、フミ」
フミ:「おめでとう。」
「ゆうちゃん、それ何?」
ゆうすけ:「ん、」
「みかん」
day 131
ウィーン・・・
客:「あけましておめでとー!」
ゆうすけ:「おめでとうございます」
客:「なんか今日暖かいよね」
「よっこいせっと」
ゆうすけ:「暖房入れてますよ」
客:「だよね」
「なしじゃまだ寒いよね」
ゆうすけ:「何します?」
客:「生以外って何があるの?」
ゆうすけ:「例えば?」
客:「マスターお勧めとかあるの?」
ゆうすけ:「なんか、ですね」
「最近酒が美味くないんすよ」
客:「なんでもいいからさ」
「マスターおまかせでちょうだいよ」
ゆうすけ:「ソフトドリンクでいいですか?」
客:「ん ん なんでもいい」
ゆうすけ:「じゃ」
「Qooを」
トン・・・
客:「なにこれ、ずいぶんかわいいね」
ゆうすけ:「最近僕こればっかですよ」
トクトクトク
トン
ゆうすけ:「はい、お待ち」
客:「なになんかで割ったりしないの?」
「氷もなし?」
ゆうすけ:「これが一番美味いんです」
客:「 」
グビ
グビ
グビ
客:「 」
「ま、ジュースだよね。普通に」
ゆうすけ:「 」
客:「 」
ゆうすけ:「 」
day 132
外国人客:「スミマセン」
ゆうすけ:「はい、」
外国人客:「コノマチノ」
「ホットプレイス」
「オシエテクダサイ」
ゆうすけ:「 」
「ホットプレイス?」
外国人客:「オシエテクダサイ」
ゆうすけ:「えー、なんだろ」
客:「川崎のラゾーナ、いいよ。」
ゆうすけ:「ラゾーナ。」
「イズ ホット。」
外国人客:「オー、ラゾーナ!」
ゆうすけ:「イエス」
客:「この町じゃないんだけどね・・・」
つづく・・・
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